京漬物近清の九代目日記

毎日、お店や九代目の周りで起こった事、九代目からのお知らせ等を日記形式でお伝えしていきます。

黒服繁盛記 4

2008年02月20日 | Weblog
物分りのいい、お人好しが損をするって話の続きです。

まあ是は私の4年間のバイト時代だけで感じた事でなく、其の後の実地体験や水仲間の話などを総合して出した結論ですが、物の捉え方でころっと話は変わるんで、こういう考え方も有るって事でご理解下さい。

私のバイト時代はほぼ30年前、昭和50年代前半から半ばに掛けてで、日本全体としては、やっとオイルショックから立ち直り、再び高度成長期と言われた時代、田中角栄氏絶頂の時で「日本列島改造論」により今話題のガソリンに暫定税率として1リットル辺り25円の道路特定財源が設けられ、ぼんぼん高速道路が日本全国に張り巡らされ、是でやっと日本の戦後が清算されるとまで言われた日中友好条約の調印、学生運動の終焉を告げる成田開港、共通一次試験開始、更に冷戦時代の最後の象徴とも言えるモスクワオリンピック西側国辞退など今から思うと劇的に世界と日本が動いた時代でした。

京都はと言うと今と違い、西陣や室町の呉服関係、それにアパレルも加えた繊維関係が下り坂とは言え、まだまだ活気のあるいい時代でした。

金融関係も概ね好調で、銀行、証券会社が就職人気上位にランクされていました。

また商社が一番活気の有った時期もこの頃で、京都の経済の動きの中で大きい事から小さい事まで、何かにつけ商社関係者がかんでいました。

花街は時代を映す鏡、当然祇園のうちのクラブも上記の羽振りのいい業界関係者が多かったです。

さてそんな時代背景を踏まえ、ここからが本題、物分りのいいお人好しが損をするってお話です。

当時うちのクラブではお客様を大きく二つに分類していました。

一つは社用族、一つは自営業。

社用族は大体短時間で、大人数で大騒ぎしてさっと帰って行き、お金のとりっぱぐれが無いってメリットが有るんですが、色々と注文が多く、けち臭くて、時に度を越した品性の無い遊び方をすると言うデメリットも抱えています。

自営業は一人で長時間ってケースが多く、景気の悪い時には払いが悪くなったり、いきなり音信不通になって踏み倒すやからもいます。

ただ遊び慣れていて、お店の空気を読むに長け、お店側の要望もよく聞いてくれます。

更に同伴やアフター、其の他プライベートな頼み事等は融通が効く分、自営業者の方が優勢です。

まあ社用族にしても自営業者にしても、お人よしでいい人も居れば、口うるさい鬱陶しい人も居るのですが、水商売の悪い所は、この口うるさい鬱陶しいやからを結果的に大事にしてしまうと言う悪い構図が有ります。

先ず店側で最も困るのは、客とホステスの揉め事よりも、客同士の揉め事、これでもし警察沙汰にでもなれば致命傷になります。

実際、客同士が揉め、客筋が悪いと評判がたち、お店は悪くないのに潰れたケースも有りました。

従って煩い性質の悪い客にはいい席をあてがい、ホステスの席に付く人数も増やし、出来るだけ機嫌を損ねないように配慮します。

反面、店を愛してくれる、物分りのいい客は「僕はどこでもいいよ」「相手は誰でもいいよ」ってな事で「ごめんね」の一言で一人カウンターでマネージャー相手に時間を潰すってケースも多々見受けました。

口うるさい客がいい席で女の子を一杯はべらし、お人好しがカウンターでマネージャ相手でも頂く金額は一緒です。

こう書くとだから後でお人好しには見返りが有るんじゃないの?って思われる人もおられるでしょうが、水商売そんな甘いもんじゃ有りません。

基本的に水商売の人間は強い者に弱く、弱い者に強い、甘えられる人にはとことん甘えるって人間の集団。

ですからお人よしの人には、口では「やっぱたーさんはほんとの遊び人、お店に居るだけでほっとするわ~」とか何とか言っちゃって甘えたおし、ちょっとその人がへまをしでかすと影では「あの人ええ人やけど、なんか物足りひんわ~、やっぱええとこのぼんぼんやさかい、どっか甘いな」って言われる始末。

ではどう遊べばよいのか!?

この話はまだまだ続きます。

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