京漬物近清の九代目日記

毎日、お店や九代目の周りで起こった事、九代目からのお知らせ等を日記形式でお伝えしていきます。

黒服繁盛記 5

2008年02月22日 | Weblog
さて水商売の店や女性にはどう接するのが正しいのか?の前に国語の時間です。

ホステスアフター五段活用って僕は呼んでいました。

A貴方はただのお客様じゃないのよ、
B身内同然じゃない~、
Cこんな話、他の人には出来ないわ!
Dごめんね!いつも愚痴ちゃって、
Eでも貴方だからわがまま言うのよ・・。

上記言葉はホステスに取り込まれる魔法の呪文・・てのは冗談ですが、基本A~E5つの順番で甘えて行くのが常套手段です。

私のアルバイト経験と其の後の水商売との付き合いから判断すると、大体この手の言葉が出だすときは、お客さんが、好きな子を見つけぼちぼち口説き落としに掛かった際で、その防衛策の一回目の手段としてホステスはこの五段活用の使用を発動します。

上客であればあるほど、その方がお人よしであればあるほど、この手法は効きます

僕らも黒服時代、この手の言葉がホステスさんから出だすと、そのお客s様に対してフォローを入れます。

具体的には、入り口で上着を預かりながら、「橋下さんが今日来られるって聞いて、みゆきさん、めちゃくちゃ喜ばれてましたよ、他のお客さんほったらかしてメーク直されてましたもん」ってな感じです。

今ここでこの文章を読んでいる方は、こんなんに引っ掛かる?ってお思いになるでしょうが、花街のシャングリラの扉を開けた瞬間から、この呪文が見事に効くんです。

そしてホステスさんのお客さんへの席の迎え方も微妙に変わってきます。

僕のお姉さん、つまり担当ホステスのみゆきさんは24歳にして当時お店の売り上げ、NO2、トップホステスさんでしたが、この席の迎え方の変化にはほんま感心させられました。

最初は丁寧に上品に節度有るプロホステス然としてお迎えし、指名が重なって来ると、今度は「キャー嬉しい」っていきなり抱きつき腕を組み、徐々に馴れ馴れしく接し、更に回を重ねると、「好きになっちゃた」を表現する為、プロホステスから恥じらいを持った可愛い少女に変身して接する、もうこの辺りでお客さんはメロメロです。

まあここで考え方なんですが、色街に安らぎと言うか居場所を求めて行く人は是でいいんです。

でも大半の男は夜の街にガオーっじゃないですが、女を求めて彷徨い歩くハンターなんですから、この手に引っかかっちゃや~いけません。

若手ホステスさんはお客様を取り込む手法として先ず教えてもらうテクは、先輩ホステスやママの不満をお客様にぶつけ「こんな事相談できるの××さんだけ」なんて甘える事を伝授されます。

「どうしても今日だけは私の我侭××さんに聞いて欲しいの~」とか「辛くて泣きそうになったら××さんの顔が浮かんじゃって~」等の会話は毎晩山のようにどの席でも聞いていました。

最も祇園の客に聞く甘え方です。

本当にホステスを落とせる客ははホステスがこういう話をしだすと「あほ、俺はここへ遊びに来てるんや、お前の愚痴なんか聞きたないわ!」ってこの流れを必ず断ち切ります。

上手なホステスさんはその辺りの話はどうしてもお店では出来ないとかなんとか言っちゃってアフターに誘い、ちゃっかり親密に話し込んで、お客様の口説きをするりするり交わしながら取り込んで行きます。

アフターを制する者は水商売を制す、は少し言い過ぎかも知れないですがかなり重要なファクターでは有ります。

同伴出勤と言うお店に入る前にデートをする行為は店にもホステスさんにもお金が入って来るし、成績にもアカウントされるので、店全体の枠組みとしてノルマも作りますし、ママからは誰々さんとご飯食べしなさい、って指示はばんばん出ますが、アフターに関しては1円も店にもホステスさんにも入らないので、店はあまり後押しはしません。

逆に客側から考えるとアフターは同伴ほど金が掛からないし、店が跳ねた後でホステスさんも自分も酔っ払いテンションが上がっているので、可能な限り同伴は避けアフターを狙います。

何回もアフターを重ね、そろそろお客様の口説きを交わすのが辛くなってきた、でも寝るのはいや!でもいい客だし、成績上げるには手離せない、って時に僕等黒服が駆り出されます。

日頃から目を掛けてもらっているホステスさんにお小遣いをもらい、溜まり場の喫茶店で、2時でも3時でもお呼びが掛かるまで時間潰しをしてじーっと待ってます。

その喫茶店に電話が掛かると予め聞いていたお店に駆けつけ、

「すいません!ミユキ姉さん、チーママと××ちゃんが酔っ払って喧嘩してるんで、止めて下さい、この二人のけんかを止められるのはミユキ姉さんだけです、ほんまお願いします」

「え~なんでなの、どこよ!ごめんね!橋下さん、このお返しは必ずするから、明日電話するね」とか何とか言ってほっぺにチュっとかしながら、走って店を出ていきます。

この時、お客様の気を悪くさせないコツは、ホステスさんが慌てて出て行き、コートやバッグを忘れて出て行く事です。

この忘れて出て行くほど緊急事態って様子が、後に残るお客さんのフォローになります。

「マスター悪いね、騒がせて」
「いえいえ、うちは大丈夫ですが、お洋服もおかばんも預からさせて頂いたままですが」
「え~そうなの、よっぽど慌ててたんだ」
「いやいやそれだけ、橋下さんを信頼されているんですよ」

この辺り、マスターも心得たもので水商売は持ちつ持たれつ。

そしてこういう場合は黒服が間髪入れず店に帰り、コート、バッグ、その他小物を回収しに向かいます。

時には残ったお客さんの相手をさせられる事も有りますが、私は未成年なんで、とか明日学校なんで、とか言って長居は避けるように指示されていました。

其の後、荷物を持ってみゆき姉さんの家までお届けにあがります。

ひどい時は朝までぐだぐだつき合わされ、朝もやの時間帯どころか通勤時間に帰って行くんですが、それも今になれば楽しい経験でした。

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