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草堂

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お葬式 伊丹十三監督初作品 宮本信子 山崎努

2016-10-03 | 日本の映画

1984年公開の『お葬式』を久しぶりに見た。その年の日本アカデミー賞で最優秀作品賞を受賞、キネマ旬報の『日本映画ベストワン』にも選定されている。

いちばん見たかったのは、いうまでもなく(?)吉川満子の出演場面であった。引退後、かなりのブランクがあったためか、松竹の元幹部女優にしては演技が覚つかない。セリフのきっかけが素人目にもダメで、あれでOKとは、ファンとして逆にがっかりだ。

「また、シゲがよ~。ひっひっひ……」のセリフを繰り返す岸部一徳の演技も、あんなもんなかあ?戯画化している、デフォルメだ、と言えばそれまでだが。上手い(と言われている)ベテラン俳優も子役も、みんなバラバラの芝居をしているように見える。舞台と映画とテレビの、それぞれの味付けがごっちゃになった印象だ。

全体がショートドラマの積み重ねで、その一個一個の情報量(大道具、小道具、衣装、俳優の演技、セリフとも)が多く、後半になるほど少々飽きてくる。濃い味付けの料理が食い始めは美味く感じるものの、だんだん苦痛になる、あの感じに似ている。たとえば、なにかの発端で事件が起こり始めると、最後はみんなでテンヤワンヤの大騒ぎ、という結末が予想されて、実際そのとおりになる。「志村~、うしろ、うしろ!」である。

ずっと印象に残っていた鰻とアボカドを食べる冒頭のシーンも、いま見ると全体にやり過ぎ感がある。紙袋を乱暴に破いたり、鰻を箸でちぎったり、スプーンでアボカドをざっくり掬ったり。「そこまで強調しないと、観客に伝わらないから」と制作意図があると言うなら、大きなお世話である。

骨董や高価なやきものを画面に出すのは小津もやっていたが、かなり対照的な印象だ。

ここまで書いて気がついた。小津の映画は退屈、と思う方にお勧めしたい映画です。伊丹十三がそう思っていたかどうかは知らないけれど。

 



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