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草堂

Web Shop草堂で扱う作家、作品の紹介、イベントや新着商品のご案内、店長の周辺雑記を日々つづります。

九代目林家正蔵 CD

2017-01-17 | 落語

いま、ふと思いついて、タイトルに入れた文字をそのままGoogleで検索してみたが、出てきたのは先代(八代目)の正蔵か、九代目松本幸四郎、または『九代目』という名のついた日本酒……。念のため某大手通販サイトでも検索してみたが、同様の結果だった。

九代目正蔵は、いったいどのように評価されているのか?ときどき寄席で見かけるが、出てくると客がけっこう沸くし人気も上々のようだ。テレビで見ると案外……、というのは落語に限ったことでなく、芝居でも宝塚でも舞台(ライブ)と映像では印象がぜんぜん違う。

先代と比べたら、の言いぐさは何も彼に向けてだけでなく、文楽、小さん、そのほかにも数多いるわけで、それで噺家の技量を云々するのもどうかと思うが。

しかし現行発売されているものがなくては、確かめようがない。僕がおもに聞いている明治生まれの噺家で高座姿を見たことがあるのは、八代目正蔵(彦六)、六代目圓生だけで、そのほかはCDやテープ、レコードを聞いて、上手いの下手だのと失礼なことを言っているのだ。CDで聞いたら、九代目も意外な拾い物(失礼)かもしれない、と思って探してみたがダメでした。現実のマーケットは厳しい、ということか。


今日は義士祭 忠臣蔵 淀五郎 中村仲蔵

2016-12-14 | 落語

今日(の深夜)は赤穂浪士の吉良邸討ち入りの日で、忠臣蔵クライマックスの日です。

三百数十年たっても、忠臣蔵の人気は衰えることがないようです。先日もテレビが特番を組んでいるのをチラッとだけ見ましたが。「大石内蔵助が武士としてどれだけ素晴らしいか、筋の通し方、面子の立て方がいかに際立っていたか」を大学教授が熱弁をふるっていたけど、いちばんよく分かったのは、あぁこの先生、忠臣蔵に惚れてるんだなあ……ということでした。

見た来たようなことを言い、とは講釈師をからかった川柳ですが、最近は史実(?)に忠実な、資料や遺物を証拠にした『実録』物に人気があるようです。でも、出演している教授が忠臣蔵を好き過ぎて、熱弁するあまり講釈師に似てしまう、結局、「物語の持つ叙情性がどれだけ魅力的か」に帰結するようです。

落語にも、多くの忠臣蔵ものがあります。『淀五郎』師匠の急病で急きょ塩谷判官に抜擢された、若手役者沢村淀五郎の苦悩と成長。ザ・プロフェッショナルみたい?淀五郎を鍛え育てる市川団蔵、中村仲蔵の両名人が、対照的な性格なのも話の魅力だ。五代目古今亭志ん生、八代目林家正蔵が得意にしていた噺。

『中村仲蔵』淀五郎に出てくる仲蔵とは違う役者らしい。これは逆の話で、定九郎(当時は端役と言われていた)の役を工夫と熱演で好評を取る、という苦心談。正蔵の動画が、ときどき大手動画サイトに出ます。

あと、シブい(?)ところでは三代目三遊亭小圓朝の『山岡角兵衛』も面白い。これは歌舞伎役者の話でなく、ほんとう(?)の討ち入りの話。サゲの宙返りのわけは、越後獅子を別名『角兵衛獅子』と言ったから。

八代目春風亭柳枝の『四段目』(上方では蔵丁稚)もいい、柳枝の声色が冴えています。

というように、落語で忠臣蔵を覚えたので、本物(?)の歌舞伎や映画を見ても、「あ、落語にこの場面がある!」というのが興味のいちばん先に立って、自分でも変だと思うがしょうがないですね。

 


藤娘、で思い出した寄席の話

2016-08-03 | 落語

三日前に『藤娘』からコメントを付けてもらいました。それで思い出した話を書きます。

寄席の紙切りの話です。舞台の上で器用にハサミを使い(動いているのは、実は紙を持つ手のほう)、最初に切るのはあいさつ代わりに『佐渡おけさ』だったかな。それをご所望のお客さんに差し上げて「さあ、お題を頂戴します。なんでも好きなものをおっしゃってください」と、リクエストを伺います。

その日は最初のお客さんが「藤娘!」と言ったので、紙切り芸人はそれにこたえて『藤娘』を切り抜いた。で、それをめでたくリクエストしたお客さんに渡して、「さあ、つぎのお題!」と声をかけたら、初老の男性客が

「おれも、藤娘」

……、そのおじさんも『藤娘』がほしくなったんでしょうね。その気持ちも含めて、ほのぼのした話だと思います。


五代目志ん生 黄金餅 火焔太鼓

2016-07-06 | 落語

キングレコードから出ている『昭和の名人 古典落語名演集』は全100巻中、五代目古今亭志ん生が23巻を占める。『業平文治』みたいに珍しい演目も入っているので、志ん生ファンには有難い企画だ。しかし、そのしわ寄せか、三代目桂三木助がわずか2巻、『三井の大黒』も『御神酒徳利』も無いのは「これでいいのか?」とも思う。版権所有の問題かもしれないが、人気実力を反映した構成とは言い難いバランスの悪さも感じる。

志ん生は、『火焔太鼓』が二編入っている。これ、二つ要るかなあ?というのが正直な感想だ。収録時期も比較的近く、したがって内容もあまり差がない。志ん生といえば『火焔太鼓』という理由で二つ入れた、というなら安直すぎる。

もう一つ、志ん生の看板ともいえる『黄金餅』は、、かつてポリドールから出ていた『NHK 落語名人選』と同じ音源で、公的な録音はこれしかないようだ。『火焔太鼓』の録音盤が三つも四つもあるのに比べると、不思議な感じがするが、志ん生の口演の機会も少なかったのかもしれない。

面白いのは、志ん生の息子、三代目古今亭志ん朝も『火焔太鼓』の録音をいくつも残しているが、『黄金餅』の録音は一つだけのようだ。二年前にソニー・ミュージックダイレクトから出た『志ん朝初出し(全12巻)』には、『火焔太鼓』が三つ入っているが、『黄金餅』はなし。やはり口演の回数が少なかったのだろう。意識的に録音を避けていたのかもしれない。

志ん生も志ん朝も、その唯一の『黄金餅』が良い出来だったのが救いであるが。

志ん生の『淀五郎』も、かつてポリドールから出た『NHK……』と同音源だが、キングレコード版は10分以上長い。その切られたまくらの中で、志ん生が歌舞伎の魅力をたっぷり語っている。これは聞きもの。NHK版は、番組の時間に合わせてカットしたのだろうが、キングレコードよくやってくれました!感謝しています。志ん生の、ノッている時の凄さが溢れた『淀五郎』になっている。だから志ん生はやめられない。


浅草演芸ホールの冷房

2016-06-29 | 落語

10日前に、浅草演芸ホールに行った。かなりの晴天で、午前中から気温が上がっていたが、場内の冷房がかなり強烈で、これなら満員になってもだいじょうぶ、最近の浅草はこういう感じです。

劇場や映画館に入ると、なるべく後ろの人の迷惑にならないように端の席に座る。そういう体形ですから。それに正面のアングルはテレビで見慣れている。寄席に行ったら、演者の出入り口が見えるくらいの端の席がいい。新宿末広亭だったら左右の畳桟敷が、それもなるべく前がおすすめだ。

それでこの日も、前から7列目の一番右に座りました。いま思うと、エアコンの送風口の真ん前だったみたいだ。入った時から(歩いて来たので、まだ多少暑かったのに)アレ?ずいぶん涼しいな!?と思った。

風邪をひいた一番の原因は、最近の不規則な生活だと思うが、あれ以来、のどが痛かったのはたしか。演芸ホールの強烈な冷房も、今日の浅草のにぎわいを象徴するものとして歓迎したい。こんどは長袖を1枚持っていきます。