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草堂

Web Shop草堂で扱う作家、作品の紹介、イベントや新着商品のご案内、店長の周辺雑記を日々つづります。

東海林太郎 野崎小唄 お駒恋姿 陣中ひげくらべ

2016-06-05 | 歌と音楽

子供の頃、テレビの歌番組を見ていて「死ぬまで好きにならないだろう」と思ったのが、東海林太郎だった。好き嫌いでなく、理解不能な歌手だった。燕尾服に蝶ネクタイで登場して「ながすナミダ~が~、オシバイならあば~」と、朗々と歌う。硬派なのか軟派なのか?とは小学生が思わないにしろ、外観と歌の中身のチグハグさが気になった。それと、「東海林太郎は歌が上手い」という大人の意見もおかしいと思った。音程が外れるし、半拍遅れる歌い出しも、正直?な小学生の耳には不快だった。

ところが幾星霜、人間は変わるもので、今は東海林太郎が大好きだ。「ながすナミダ~が~」の『むらさき小唄』とか『野崎小唄』みたいな軟派中の軟派が特にいい。『お駒恋姿』は歌詞の中に黄八丈があり、白木屋お駒の話だと分かると、これにも胸を打たれる。「貴様のちょびひげ、なちょらんぞ」と戦友をからかう『陣中ひげくらべ』。ぜんぜん勇ましくないけど、これも軍歌と呼ばれるのだろうか。こういうユーモラスな歌も、東海林太郎は上手い。テノールだけど男らしい声だ。

子供の頃感じていた「音程が外れる、歌い出しが半拍遅れる」はどうか?今聞いてもそのとおりだと思う。そして「大人が上手い、と言っていたのはこのことか!」と、十分に大人になった現在、従順にも大人の意見に与するのであった。

東海林太郎の歌は、日本の伝統芸能の泥臭さ渋太さが匂う。それがタマラナイ。その泥臭さは演歌や歌謡曲のそれと違う気がする。もっと淡々として、しかも苦い。アメリカ人がブルースを聞くと、こんな気持ちになるんじゃないか?と、ときどき思う。

「あなたが思う国民的歌手は?」と聞かれたら、僕は迷わず「それは東海林太郎です」と答える。誰にも聞かれないけど。いいですよ、東海林太郎。子供の頃に抱いた違和感は「いつか好きになる」という予感だったのかもしれない。


島倉千代子 スーパーヒットコレクション

2016-05-05 | 歌と音楽

夜中の方が作業が進むので、ラジオの深夜放送を聞きながら文章を書いたり、写真の整理をしたり……という環境が整いつつ(?)あります。ラジオは中学生の頃から中波専門です。NHKラジオ第一の『ラジオ深夜便』か、TBSラジオの『JUNK』を聞いていることが多いです。

『ラジオ深夜便』の午前3時から始まる音楽特集は、歌手別、作者別、年代別の括りが、ほぼ同じ割合で登場する邦楽の一時間です。自分が好きな歌手の特集だと思わず聞き入ってしまう反面、選曲が不満だったり、「この編曲じゃないほう!」と文句の出ることしばしば。どんな歌でも、だいたいは最初のオリジナルが一番いい。小林旭の『恋の山手線』は僕の知っているだけで3つのバージョンでリリースしていますが、アキラの声の伸びもバンドのノリも、一番古い(初回の録音と思われる)バージョンが圧倒的にいい。『ダンチョネ節』なんて、ぜんぜん別物になってしまったし。

先日、急に聞きたくなって、島倉千代子の『スーパーヒットコレクション』を地元の図書館から借りてきました。『夕月』という歌を、ふと思い出して、でもサビの部分しか思い出せなくて、そういうふうに思い出した歌は聞いてみると案外つまらない、ということが多いのだが、お千代さんの歌唱力と相俟って『夕月』は予想以上にいい歌でした。演歌、というほど線の太くない、力みのない歌謡曲です。いまの歌手も誰かカバーすればいいのに。

島倉千代子の歌は『愛のさざなみ』が一番好きで、それは浜口庫之助作曲だから、ということが大きい。『この世の花』、『りんどう峠』、『からたち日記』の初期純情路線から、『ほんきかしら』、『ほれているのに』の、お座敷歌謡みたいのまで全部いいです。

ただ、このCD二枚組で残念なのは、彼女の代表曲のひとつ『東京だョおっ母さん』が、かなり後年の録音であること。セリフも要るのかなあ?あと、二枚目が、後期の楽曲中心なので止むを得ないのだが、一枚目ほど聞きごたえのないのが惜しまれる。彼女の晩年の不幸を見るようでツラい。お千代さんのせいじゃなくH木先生が悪いんだけど。『すみだ川』はとてもいい。

コロッケのものまね(人生いろいろ)でしか知らない人も多いだろうな。ぜひ一度聞いてみてください。