16日放送のTBSラジオ「アクセス」は永住外国人地方参政権がテーマ。藤井誠二さんは条件付賛成派、ゲストの宮台真司さんは条件付反対派でバトル。再びリスナーと電話の後、賛成派の東京外語大学の北脇保之さんを加えてバトルトーク。
(リスナーYさんの意見)
中国人の留学生は、日本のことを知って、日本人とか日本が嫌になって帰っていく人が多い。留学生側にも問題はあるかもしれないが、日本人がいかに国際的に味方を増やしていかないかということが分かる。知人に、10年以上日本に住んでいたビルマの家族がいたが、アメリカのグリーンカードの抽選に当たったら、荷物をまとめて嬉々としてアメリカに移住しちゃった。彼らには日本よりアメリカの方が魅力的な社会だったということです。
(藤井)
Yさんのお知り合いは、何で日本が好きになれなかったと仰ってましたか?
(Y)
どこに行っても、欧米人と比べて、人間として見てくれなかったり、言われの無いことで馬鹿にされている傾向があるようなんですよね。日本の味方を増やすためにも、地域に根付いている外国人については限定的に参政権を認めるべき。
(北脇)まず一つは、外国人が社会に十分参加していくことが、本人にとっても、社会にとっても大事だと思います。社会に参加するというのは色んな面があるんですけども、教育、雇用の面だけではなく、政治の面でも参加していくことが必要だと思います。それがしっかり出来ないと、外国人が社会の底辺に追いやられるとか、平行社会をつくってしまう。そういうことが、社会の不安定の要因にもなっていくし、本人達にとっても不幸なことになってしまうので、それを防止していくために社会参加を推進する。その一つとして、永住外国人に地方参政権を認めるべきだと思っています。
(渡辺)
日本でもっともブラジル人が多く住む浜松市で、2期市長をお勤めになった北脇さんに伺いたいのは、浜松市での永住外国人はどういう現状ですか?
(北脇)
元々、特に外国人が多い町だったわけじゃないんですけども、入管法改正以来、南米出身の日系人がどんな仕事でも出来るという形になったので、自動車産業を中心に工場で働くために移り住んできて、90年以降急激に外国人が増えたという、そういう町なんですね。
ただ、それがリーマンショック以来、非常に失業が増えて、状況がかなり厳しくなっているという現状なんです。(藤井)
浜松は昔、結構「ブラジル人お断り」と堂々と張り紙が貼ってある店があって、それが社会問題になった。その時に、色んな裁判が起きたりして、「日本は人種差別撤廃条約に批准してるのに、何でちゃんとした法律が無いの」と皆がびっくりした。それがきっかけになって、永住権を持っているのにどんどん離れていってしまう、そこで地域との軋轢が更に生まれてしまうという悪循環を感じた。当時、取材する中で、一つの社会に参加する権利として地方参政権があれば、状況が違ってくるのかなと思ったんですよね。
(北脇)
私も市長として、外国人の皆さんも地域社会、特に地域経済を支えているという点では貢献しているので、やはり外国人を含めた形での地域社会をつくっていこうということで、一生懸命やってきたんです。そういう中で、浜松に住んでいるブラジル人の皆さんも、「住みやすい」と言ってくれるようになってきたので、そういう事を大事にしたいと思うんですけどね。
(宮台)
全くその通りで、先ほどのリスナーの意見もそうなんですけど、日本と日本人を好きになってくれる外国人をどれだけ増やすのかということがとても大事で、戦前のアジア主義者と言われる人たち、例えば内田良平、遠山満という、玄洋社、黒龍会の頭目達は、食客として色んな国籍、色んな立場の人を抱えた。つまり、戦前の右翼というのは、「日本人がアジアの人たちから尊敬されるようにならなければ日本の未来は無い」と考えた人たちで、偏狭な排外主義とは完全に無縁だったんですよ。なのでその歴史を辿ろうというのが、例えば鈴木邦男さんの新右翼、新しいと書くけど、元々は戦前の右翼に返りましょうというルネッサンス運動だったんで、その辺を僕達はちゃんと教養として知らなきゃいけないなと。
(藤井)
邦男さんは賛成らしいですよ?
(宮台)
うん。当然でしょうね。
(北脇)
私も、開かれた心とか、そういうのを大事にしたいです。地方参政権の話になると、どんな人でも自分で参加して決めたルールは尊重しようというのがありますよね。だから自治体の仕事というのは、日本人であれ外国人であれ、自分の生活に密着してますよね。そこでルールであるとか政策であるとかに外国人も一定程度参加してそれを決めたということになれば、それを尊重して、守ろうとなっていくと期待できると思います。
例えば、ゴミ出しのルールを守らないとか問題になるんですけど、自治体は環境政策としてゴミの分別収集をやっているわけで、そういう政策に外国人も関与する事で環境問題が大事だからやっているんだというようなことが分かれば、守らなくちゃいけないなとなっていくこともある。政策決定に全く参加しない、参加しないが為に関心を持たない。だから、大事なことだと思わないという。そういう悪循環になるので、組み込んでいくということが大事なことだと思います。
先ほど、意見を聞くだけだったら参政権を持って無くてもいいということを仰いましたけど、それは拘束力が無いので、そこと次元は違うと思います。
(渡辺)ネット含めてのご意見の傾向は、賛成が12%、反対が83%でしたが、ネットの意見を除外すると、賛成35%、反対57%でした。
途中から宮台さんはおとなしくなった感じがしましたが?
(宮台)
何度も同じことを繰り返して飽きたんですけどね、皆さんね、クリント・イーストウッドの映画を見て頂きたいと思うんです。「グラン・トリノ」を見れば、モン族、つまりイエローマイノリティズでもグラントリノにさえ乗りゃ、アメリカ人なんだという主張だし、新しい「インビクタス」という映画でも、基本的にへたれじゃない人間たちは誰をも包摂するんだというメッセージなんです、簡単に言えば。
関東大震災の時の朝鮮人差別、流言蜚語による虐殺を調査したのは、内田良平の黒龍会なんですよ。右翼が調査したわけ。つまり、戦前の右翼にとっては、排外主義というのはヘタレの技なんですよ。そういう意味で言えば、僕は北脇さんと同じで包摂主義でありたいと思うけど、なんでいま反対するのかと言うと、交じり合っていないところで、偏見で感情的に噴き上がれば、まさにその事がみっともない帰結を招くからです。
(藤井)
議論のレベルをもっと上げて欲しいですよね。ネットとか特に。