http://www.nhk.or.jp/bsdebate/
出演:岡本行夫、孫崎享、マイケル・グリーン、トバイアス・ハリス
(孫崎)
この問題で一番重要なことは、普天間がアメリカ全体の基地の中でどれくらい重要かということを良く考えることだと思うんですね。
アメリカの方は、普天間問題が解決しないと日米関係が軋むと言ってるんですけど、これは名護市に持っていこうとする勢力の意図的なキャンペーンだと思っております。アメリカの在日米軍全体の中で、普天間の占める役割の割合は20%以下なんですね。20%以下の為に、在日米軍の20分の19を悪化していいという選択は、アメリカは絶対に取れない。その認識を日本の世論が持つことが非常に重要です。
そして、沖縄の世論からみると、辺野古に行くという選択は無いわけですから、我々はこの状況を踏まえて、いかに日米関係でこの問題を落ち着かせるかというのが、これからの課題です。(岡本)
名護市に持っていこうとする勢力と仰ったけど、政治的にそこに持っていこうとしているわけじゃなくて、あそこしかないとして出した結論なんです。
孫崎さんが仰る事で一番首をかしげるのは、「全てはアメリカが大事に思ってるから手放すはずないぞ」と。そうではなくて、彼らはフィリピンからだってあっさり撤退しちゃいましたよね。アメリカは日本が考えているほど、日本のことを彼らは必要にしてないと思います。日本がアメリカにいてもらう事が抑止力ということで、日本の為にいてもらう分というのが大きいと思います。(孫崎)
これは後で議論になるかもしれませんが、アメリカが何故日本に基地を持っているのかということを考える時に、目的は極東と世界全体というのがあるんですね。世界全体の考え方から何故日本に基地を置くかというと、日本の思いやり予算。ある意味では、日本が面倒を見ているところがあるので、何もアメリカが基地を置いているのは、極東を守るため、日本を守るためだけじゃないんですね。
(ハリス)普天間の問題については、民主党が何をしたいのか、どう政治運営をしていくのかという視点で見るべきだと思います。より説明責任を持つ、透明性を持つというということで、日米同盟関係という観点よりもそういう観点で見るべきです。
官房長官は、「名護市市長選挙の結果は、必ずしも政府の決定を決めるものではない」としています。政府も非常に柔軟な対応をしようとしていて、色々なオプションをオープンにしておこうとしているのでしょう。日米同盟関係の管理のされ方が、自民党とは違っているということでしょう。
鳩山政権は、沖縄県民の利害という観点、社民党との連立問題という観点、民主党の党員からの観点等など、様々な利害を調節しなければいけないという意味では、民主党はよくやっていると言わざるを得ないと思います。(岡本)
県外移設というのは沖縄の為に必要な事だと思います。しかし、現に大変な騒音が毎日起こっていて、事故の危険性と隣り合わせ。そういう時には一刻も早く基地を縮小して、海の上に出してやるというのが一番現実的な選択肢なんです。
ヘリコプターだけを移せばいいと皆さんは思ってるけども、2万人以上の海兵隊員と訓練場。この3つをワンセットで動かさなければいけない。これを本土に移すのは望ましいと思いますが、これは何年もかかりますよ。それまで宜野湾市の皆さんの苦労をそのままにしておいていいのかという切迫性をどう考えるかという問題だと思います。
出来もしない事で、沖縄県民の心を惑わせるということはしてはいけないと思います。(グリーン)
岡本さんが仰った通り、15年もかかってここまで来たんです。残念な事に、これからどうなるかを考えますと、現行案の実施が出来なかった場合には米軍再編全体の計画が破綻するのではないかと思います。その場合には、半分の海兵隊がグアムに移転も起こりません。また、第一軍司令部が普天間に移設することなく、現状のままになってしまって、皆さんが失望します。一番失望するのは、沖縄の方々ご自身です。
プランB、Cが必要だ仰いますが、しかし15年間が経過したんです。かつ、この問題に関して日本の指導者が弱い事を考えますと、全ての利害関係者が、直ちに「そうですね。新しい計画にしましょう」とは言いにくいと思います。15年の議論で分かってると思いますが、他の代替案では問題があったのです。従って、現行案を実施する努力をする必要があります。
ハリスさんが言うとおり、鳩山政権はまだ現行案についてはオープンな考えを持っています。それをトライすべきだと思います。代替案については、全ての人にとって失望感があると思います。