マル激トーク・オン・ディマンド「自民党の難点・民主党の難点」をテキスト化。第10回。今回で終了です。
(神保)
次にメディア問題をやりたいんですが、何を言いたいかというと、民主党が政権を取って既得権益との対立が始まった時にメディアがそれをどういう風に報じるかということで、世論が民主党に付くか既得権益側に付くかが左右されるんじゃないかと思うんです。
それは小泉政権の時の教訓で、小泉政権の時というのは道路公団や郵政の民営化にしても、メディアがなんだかんだ言いながら小泉さん側に付いたという事がほぼ受動的に支持を受けた。だから抵抗があるものでも出来ちゃった。抵抗する人が悪者になるんですね。
問題は民主党にとってメディアも既得権益の一部。それがメディアにとって中立的に一つの既得権益との対立を報じるモチベーションがあるだろうか?というところが恐いんですね。(宮台)
そこは一つアイデアがありまして、官僚側が色んな法制を敷く場合、例えばメディア規制に関する法制を敷く場合に分断統治、ディバイド・アンド・ルールを使いますが、それを逆利用した方がいいと思うんです。
つまり、記者クラブにしか開かれていない会見という既得権益にぶら下がっているメディアというのはマスメディアの中の一部ですよね。週刊誌・その他のメディアはぶら下がれていない。こういう人間達がいる以上、こういう人たちを民主党が味方につけてうまく利用していく必要がある。なので、既得権益にぶら下がろうとしている全国紙であるとか、それにぶら下がっているテレビ局を徹底して叩くということをやらせる。それは今から準備しておいたほうがいいですよね。(神保)
政策論という意味でも、あるいは戦術論という意味でも民主党は国自体を改革しなきゃいけないわけですよね。だけど、国の改革をする時にメディアの力を利用しないという手は無いですよね。するとメディアを敵に回してしまう事によってそれがうまく出来なくなるんじゃないか。
上杉隆さんに聞いた話なんだけど、かなり民主党はメディアから弾が飛んできている。だから、メディア改革なんてやってると他の改革が出来なくなっちゃうよ。ということをメディア幹部なんかから親身なアドバイスとして貰っている人もかなりいるそうです。
一つはこれについてどう思いますかということと、一つはマル激の視聴者の方には、これから先、主要メディア報道が民主党に対して必ずしも客観報道ではなくなるというリスクを認識していただく必要があるのかどうか?(宮台)
やはりディバイド・アンド・ルールを貫徹する事が重要で、オルタナティブメディアだけでなく、外国のメディア、あるいは外国のメディアの権益を代表する各国の政府とのコネクトをする必要があると思います。既得権益にぶら下がる度合いさもメディアによって温度差があるので、そういう意味でいえば霞ヶ関に対するカードの提示の仕方と同じで、どこが勝ち馬であるのかということを提示する事が大事なんです。
これは山本七平の「空気の研究」の応用ですけど、何か現然に見えると人は呑まれて白旗をあげるというのが日本人の一つの傾向なんで、それをうまく利用していくことが重要で、今からでも既得権益に固執する度合いの強いマスコミを包囲できるような方向性を模索しておいたほうがいいですね。(神保)
それが民主党に出来るかなぁと心配なんだけど、もう一つあまり知られていない重要な政策に独立行政委員会というのを導入すると言ってるんです。その第一号として日本版FCCを作ると言っていて、これはどういうことかというと、日本は先進国の中で異常で放送免許を政府が出していて、権力の介入や総務省を通じて政治の介入も簡単に出来るようになっている。だからそれを第三者委員会で独立行政委員会というのを作ってやると。
でも、これは二重三重で大変な事で、まず役所が抵抗する。しかもメディアも抵抗する。ここは注目のところで、これが出来ればメディア戦争に勝てるかもしれないと思う。(宮台)
でもメディアを使うしかないので、ポピュリズムを有効に利用出来るかどうかにかかっていると思います。そのためには有能な広報マン、広報戦略を打ち立てる人たちを党外から大量に抱え込まないと難しいでしょうね。
(神保)
そこでもう一つ気になるのが、民主党はやたら政治主導と言ってるんですがそこに気負いがあって、党外から民間の人を引き込んで入れるということにどこまで積極的かということが見えない。
(宮台)
そこは党外という場合に民間の事だけを考えていなくて、官僚の利用が大事だと思ってるんですよ。それはライフリンクの清水康之代表とここで何度もお話をしましたが、そこで必ず出てくる問題で、やっぱりライフリンクがこれだけ有効な機能を発揮してこれた理由は役人をうまく利用したということが大きいんです。
腐っても鯛というか、元々情報を持っているし、ノウハウもあるので役人が持っているリソースはそれなりに大きいんです。そのリソースを何のために使うのかということに問題があったわけで、官僚の持っているリソースを官僚の昌益、個人益のためではなく、公益の為に利用させるようなインセンティブメカニズムを作ればいいんです。そういうマインドが今のところかなり弱いかもしれない。
僕が民主党の議員さんと話すなかでは、その中でも優秀な方々は霞ヶ関の役人を使わないとどうにもならないということを思ってらっしゃる方がいるんだけども、今の段階での民主党的ポピュリズムでは素朴なメッセージに集約されすぎています。
官僚主導から政治主導はいいんですが、政治主導という場合に、先進国並に市民主導が期待できないのが今の日本の状態であるとすれば、市民主導化していくためのNPO税制を含めた様々な手当てをしていくのと同時に、今まで官僚が主導してきたのであればそれを市民の為に使わせるようにしますと言った方がいいと思うんです。官僚を横に置いて何かしますという発想を強調しすぎていますよね。(神保)
二項対立の構造を作ろうという気配がありますよね。