あめ~ば気まぐれ狂和国(Caprice Republicrazy of Amoeba)~Livin'LaVidaLoca

勤め人目夜勤科の生物・あめ~ばの目に見え心に思う事を微妙なやる気と常敬混交文で綴る雑記。
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ソウルフード喰ったの誰?

2014-10-07 22:33:37 | 日替わりchris亭・仮設店舗
食いしん坊の自覚はさほどありませんが、これまで多くの「食」関連の歴史本をレビューしてきました。黄門様のお食事だったり、麺類フィールドワークだったりといわば気楽なコンセプトのものばかりでしたが、今回は少し重めのテーマを。歴史書籍レビュー、第百二回です。


上原善広『被差別の食卓』(新潮社)

「秘密のケンミンSHOW」のようなご当地ネタを扱うテレビ番組などでは、「ソウルフード」というフレーズがよく登場します。日本だと「郷土料理」とか「ある国・地域だけで特に好まれる食べ物」程度の意味で使われますが、本来は「ソウルミュージック」などと同じように、アフリカ系アメリカ人の食べ物という意味の言葉です。

アフリカ系アメリカ人のルーツが奴隷として連れてこられた黒人であることは今さら言うまでもありませんが、かつての奴隷を初めとする「虐げられる人々」の間には、独特な食文化が根付くことがあります。
この本は、アメリカ、ブラジル、ブルガリア、ネパールと世界各地を巡り、「被差別者」たちの食風景とその発祥に迫ったルポです。

作者自身被差別の出身であるということで、その立場が眼差しにも反映されているばかりでなく、取材対象の人々に切り込む武器ともなっています。
そこから生まれる説得力がこの本の強みでしょう。「抵抗的余り物料理」という表現もなるほどと思わされます。

世界各地の食卓を訪ねたしめくくりは、作者のルーツを日本で再確認。恥ずかしながら近所の串カツ居酒屋でときどき食べる「さいぼし」の起原が被差別にあるとは考えたことがありませんでした。今度食べるときは味わいも違って感じられるような気がします。