世にある日々

現世(うつしよ)は 愛おしくもあり 疎ましくもあり・・・・

八雲立つ

2011-06-27 | 記紀雑感









八雲立つ 出雲八重垣 妻ごみに
                   八重垣作る その八重垣を


   やぐもたつ いずもやえがき つまごみに
              やえがきつくる そのやえがきを



古事記・日本書紀に書かれている和歌の中で一番好きな歌です


スサノオの命が高天原を追放されて出雲の国の川のほとりに来る
川上から箸が流れてきたので 人が住んでいるのだろうと思い
川上に上っていった
すると 老夫婦が一人の娘を間において泣いていた
老夫婦の名は アシナズチ テナヅチ
娘の名は クシイナダ姫という

「 どんなわけで泣いているのか 」 と訪ねたら
「 毎年  八つの頭のある大蛇 (おろち) が襲ってきて 娘を食べてしまう
 今年もその時期が来てたので嘆き悲しんでいます 」
とアシナズチは答えた

すると スサノオの命は
「 娘を私の妻に下さらないか 」
とアシナズチに言う・・・・

そこから  スサノオの命と八俣の大蛇 (やまたのおろち) の戦いが始まる・・・・

八俣の大蛇を退治したスサノオの命は
出雲の国で新居を造る
そのとき歌われたのがこの歌


つきぬけるような青い空に つぎつぎと雲が湧き立つていく
その雲が八重の垣となり 私の妻をこもらせてくれる
    わたしと妻のあたらしい家の八重の垣よ・・・・  *


高天原で天照大神との葛藤
そして追放されたスサノオの命

きっと 荒ぶる神は荒ぶる神ゆえに
清き美しい高天原では
心休まることがなかったのだろう

出雲の国でひとりの姫を守り
その姫を妻にしたよろこび

そのよろこびを思うとき
この歌をより深く味わうことができる

それはきっと
晴れ晴れとした青い空に真っ白な雲が湧き立った
何とも言えない清々しいお心だったのだろう

僕はこの歌をよく口にして読んでみる
言葉の響きに濁りがなく
一言一言のよろこびの言霊が重なっていく
そして
最後の「その八重垣を」で
一気にその言霊たちが凝縮され
よろこびがひとつの形となる
このリズム感がとてもスキです

スサノオの命とクシイナダ姫の子孫に大国主の命がおられます
この物語からから
出雲の物語が始まっていくのです


                                                            * 私訳です  原文に忠実に訳してません





精霊