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小林美恵 ヴァイオリン・リサイタル

2010年11月19日 | pocknのコンサート感想録2010
11月19日(金)小林美恵(Vn)/清水和音(Pf)
~デビュー20周年記念 ヴァイオリン・リサイタル~
紀尾井ホール
【曲目】
1.シューベルト/ソナチネ第2番イ短調D.385 Op.137-2
2.ブラームス/ヴァイオリン・ソナタ第3番ニ短調Op.108
3.バッハ/無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第3番ハ長調BWV1005
4.R.シュトラウス/ヴァイオリン・ソナタ 変ホ長調Op.18
【アンコール】
1.シューベルト/感傷的なワルツ
2.イザイ/子供の夢
3.プロコフィエフ/3つのオレンジへの恋から「行進曲」

小林美恵のヴァイオリンを初めて聴いたのは、彼女がまだ芸大在学中の1987年9月、芸術祭でやったモーツァルト/ディヴェルティメント17番の室内楽版の、もちろんファーストヴァイオリン。瑞々しく澄んだ美音と溢れ出る歌にすっかり魅了された。その後、1990年にロン・ティボーコンクールで優勝し、華々しいデビューを飾ってから20周年を記念してのリサイタルを聴いた。

小林さんのヴァイオリンを聴くのはとても久々だが、芸祭での第一印象からは当然大きな変貌を遂げている。誤解を招く言い方かも知れないが、特にプラームスやバッハから伝わってきたのは求道者的とも言えるストイックさ。何かをひたむきに求め続け、音楽の振幅が深い方へ深い方へと振れて行く。そんな透徹としたアプローチが、ブラームスでは、好みの問題かも知れないが、もう少し色彩感が欲しいという気持ちになる。

そうしたアプローチが、バッハでは真価を発揮した。第1楽章から聴こえてきた深い瞑想的な祈りが、第2楽章では徐々に熱を帶び、周囲の空気まで熱くする一心不乱な祈りになった。第3楽章では転じて青白い月明かりの下、妖精が思いつめたように独りで踊る優美なダンス。そんな夜の霊気が第4楽章では、ぎゅーっと凝縮され、周囲のエネルギーを吸収しながら宇宙の果てへ一直線に飛んでいく壮大さを感じた。持続する集中力も並々ならぬものがある。

シュトラウスのソナタも充実。弓を大きく使い、上半身を大きく揺らしながら息の長い線を描いて行くが、大味になることは決してなく、音楽はやはり内側へと振れ、高い密度を感じさせた。うーん、でもシュトラウスにはやっぱりある種のゴージャスさが欲しい・・・

アンコールで弾いたチャイコフスキーは、プログラム最初のシューベルトでも聴かせてくれた、後ろを振り返るたおやかで優美な姿に、更なる詩情が加わった心に残る演奏で、小林さんの歌心が伝わってきた。

清水和音のピアノはニュアンスに富み、音色も多彩で、自然な呼吸で紡がれる歌に聴き惚れる。小林美恵のヴァイオリンとは必ずしも同じ方向へ向かっていたわけではないかも知れないが、魅力的なピアノであり、良いエスコートだった。

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