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足繁く通う演奏会の感想等でクラシック音楽を追求/面白すぎる台湾/イタリアやドイツの旅日記/「ドイツ留学相談室」併設

内田光子&ヴィヴィアン・ハーグナー デュオ・コンサート

2010年11月20日 | pocknのコンサート感想録2010
11月20日(土)ヴィヴィアン・ハーグナー(Vn)/内田光子(Pf)
~日本オーケストラ連盟青少年育成基金チャリティコンサート~
東京オペラシティコンサートホール タケミツメモリアル
【曲目】
1.モーツァルト/ヴァイオリンとピアノのためのソナタ ホ短調 K304
2.バルトーク/無伴奏ヴァイオリンソナタ Sz117 から「シャコンヌのテンポで」
3.バッハ/無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番ニ短調 BWV1004~「シャコンヌ」
4.ブラームス/ヴァイオリンソナタ第1番ト長調Op.78「雨の歌」
【アンコール】
ベートーヴェン/スプリングソナタ~第3楽章

この演奏会のタイトルは、ピアノの内田光子が先に来ていて、何だか内田光子のピアノを聴く気分ででかけたが、無伴奏を真ん中に据えたプログラミングを見ても、そして実際の演奏を聴いても、この演奏会はヴァイオリンのヴィヴィアン・ハーグナーのウエイトが半分以上。

但し、最初のモーツァルトは曲がそのようにできていることもあるが、内田のビアノが耳を引き、音楽的にも主導権を握っていた。その演奏は、モーツァルトの内面的な衝動をストレートに音に出して魂に訴える。常に緊迫したものが底辺で流れ、それが時おり衝動的に噴出し、次の瞬間には抑え込まれる。内田の赤裸々でありながらコントロールの行き届いた確かな構築指向は相変わらず冴えていた。

ハーグナーのヴァイオリンの澄んだまっすぐな音色も印象深かったが、ハーグナーの真の魅力は、休憩なしで組まれたプログラムの中央に置かれた2つの無伴奏作品で堪能した。深い湖の底まではっきりと見えるようなヴァイオリンの透明な音には気高さが備わっている。ハーグナーは黒髪が似合うキリッとした顔立ちで、瞳までは見えなかったが、きっと澄んだ黒い瞳の美人だ。笑顔にも凛々しさが表れているが、そんな容姿がヴァイオリンの音や演奏にぴったりなんて言ったら、男のひいき目と思われてしまうかもしれない。けれど、一本筋の通った怜悧さと澄んだ音色はそれほどに美しい。

バルトークでは、心の中で静かに燃える炎が、高い集中力の持続でついには身を焦がすほどの高まりを見せた。バッハでの決然とした開始は、鮮烈でビュアー。声部の弾き分けも鮮やかで、それぞれのパートが、隙間なくびったりと組み合って、造形的な美しさと強さで迫ってきた。

ただ、このシャコンヌはつくづくシビアで巨大な音楽だと思う。この曲は人生観を変えてしまうほどのすごい力を秘めているとは思うが、正直、いつでも聴きたいという曲ではない。この曲の強烈なメッセージ性に加え、これに取り組む演奏者の並々ならぬ気合いの入れ方に押しつぶされそうになってしまうことが多い。いっそのこと、思いっきりサラリとスマートでウィットの効いたシャコンヌの演奏を聴いてみたい。

内田光子が再び登場して演奏されたブラームス。ピアノでト長調の和音が、とても深く暖かく鳴ると、それを更に包み込むような包容力のあるヴァイオリンの音色。懐かしさを覚える温かみのある音色と語り口は、この曲のウェットな質感をよく引き出していた。ハーグナーの幅広い表現力とパレットの多彩さを感じた。けれど・・・ とまた言ってしまうのだが、冒頭に感じた包容力が全曲を通して続いたかと訊かれると、ちょっとわからない。聴き終ったあとに、もっと満たされた気分になりたかった、というのが本音。素晴らしい煌めきとセンスと、美音を持ったヴァイオリニスト。若いだけに、今後の更なる成長を期待したい。

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2 コメント

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私も聴きました! (HIROSHI)
2010-11-22 22:44:52
pocknさん、大変ご無沙汰しております。

今回のコンサートは大変楽しみにしていました。休憩なしのコンパクトなプログラムだったにも関わらず、大変美味なフルコース料理をいただいたような満足感を感じたコンサートでした。

第一曲目のモーツァルトは私の大好きな曲のひとつで、第二楽章のメヌエットの旋律にはいつもウルウル・・今回の演奏でも、なんて美しい曲なんだろうと心底浸ってしまいました!
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Re: 私も聴きました! (pockn)
2010-11-23 18:38:55
HIROSHIさん、お久しぶりです。デュオリサイタル、いらしてたのですね。
このリサイタル、確かにプログラミングがとてもよく出来ていましたね。
「内田光子&ヴィヴィアン・ハーグナー」と銘打っていて、内田さんの存在感の大きさを感じましたが、あの素晴らしいモーツァルトを聴いたら、できれば内田さんのソロも聴きたい気持ちが益々強まりました。
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