2015年3月27日(金)
一時
阿里山森林鉄道
嘉義の町を見て回った翌日は、台湾最高峰の玉山を抱く高山地帯の前衛、阿里山山域へ出かけた。阿里山へ運んでくれる阿里山森林鉄道は世界屈指の登山鉄道として有名で、これに乗るのも楽しみの一つだった。
日本統治時代、木材の運搬を目的として、険しい地形と厳しい気象条件のなか建設された阿里山森林鉄道は、環境の厳しさゆえに、台風などの災害に見舞われることも多く、最近では2009年に台風で壊滅的な被害に遭って全線が運行停止になった。それ以来、未だに完全復旧はしておらず、昨年ようやく嘉義から奮起湖までの運転が再開した。なので、奮起湖までの50キロの森林鉄道の旅だ。
早めに嘉義駅へ行き切符を買おうとしたら「満席」と言われてしまった。
「えーっ!!?? そんな~。。。」昨日北門駅の切符売り場で訊ねたときは「明天的車票買明天(明日の切符は明日買ってください)」って言ってたのに。阿里山森林鉄道は1日一往復しかしていない。諦めきれずに立っていたら「乗車券だけなら買えますよ」と言われた。2時間半も立ちっぱなしは辛いけど仕方ない。とりあえず乗れるということでヤレヤレだ。。。
ホームにディーゼル機関車に引かれたかわいい客車の阿里山森林鉄道列車が入線してきた。

阿里山森林鉄道は日本の大井川鉄道と「姉妹鉄道」になっていて、客車の車体には両国の国旗と双方の鉄道会社のロゴマークが掲げられていた。

午前9時。甲高い汽笛と共に出発。ディーゼル機関車が客車を6両押して行く。民家スレスレにゆっくり走る様子は江ノ電に似ている。小学校?の子供たちがたくさんこっちを見て手を振っていたので振り返した。この列車は滅多に通らないだけに子供たちも嬉しそう。

クリックで拡大
始発駅ではまだ満席でなかったので取りあえず空いてる席に座った。ここ、ずっと誰も来なければいいのになー・・・

住宅街を抜け、椰子の木が並ぶ風景、そして水田が広がる田園風景のなかを列車はゆっくりゆっくり走る・・・


出発から約40分、竹崎駅で中国の団体客風の一団が乗り込んできて、席は明け渡すことに。。それからは立って車窓を楽しんだ。
竹崎駅を過ぎると山深い景色に変わってきた。勾配やカーブも急になり、山岳鉄道の趣きが出てきた。沿線には石垣などの工事をする作業員さんをよく見かけた。竹崎から先はほんの1年前に再開したばかりなので、仕上げ作業はまだ大変なようだ。

クリックで拡大
ガスが出ていて遠望はきかなかったが、深い森や谷が続く大自然の中の約2時間半の鉄道の旅を満喫して11時半過ぎ、現在開通している区間の終点、奮起湖駅に到着した。それにしても2時間近く立ちっぱなしはくたびれた~。。

標高は1404メートルあるということで、空気がひんやりしている。山奥にあるわりには大きな駅だ。車庫もあって、かつて蒸気機関車はここで石炭や水を補給したそうだ。この車庫は自由に通り抜けが出来て、写真パネルをはじめとして阿里山森林鉄道に関する展示があった。

荷物は駅で預かってもらって(担当のおばさんの中国語は早口で殆どわからなかったが、荷物はちゃんと預かってくれた様子)、まずは腹ごしらえ。ここではやっぱり名物の駅弁を食べたい。
奮起湖老街
駅からは老街と呼ばれる古い商店街が続いている。坂や階段のある狭い道の両側に、食べ物系のお店やお土産屋がひしめいていて結構な賑わい。子供の頃に家の近所にあった市場通りのような雰囲気。お弁当屋さんも何軒も見かけた。

台湾の夜市などで定番のデザートの一つ、愛玉(アイユイ)ゼリーの原料の植物がこの辺りに多く自生するということで、愛玉ゼリーのお店も沢山あった。台湾語で愛玉子(オーギョーチー)と発音されるイチジクのような実で、これを開いて乾燥させ(写真右側)、ゼリーを作るそうだ。このお店で黒蜜風味の愛玉を食べた。愛玉自体は味はないということだが、自然のうま味を感じた。

こちらもこの地方の特産品。樹蕃茄(シューファンチェ)という木に生るトマト。珍しそうなものは試したくなる僕は、この100パーセントジュースを飲んだ。味が濃そうなワイルドな見た目同様に濃厚だけど飲み心地はサラサラ。スイカとリンゴとトマトのミックスジュースのような味わいだった。

老街を散策した後は、今夜宿泊する予定の民宿の人がメールで教えてくれた「杉林歩道(杉林桟道)」というハイキングコースへ。賑やかな老街を出ると家は少なくなり田舎の風景。ニャンコを飼ってるお宅が多い。


まだ民家がある辺りからハイキングコースが始まる。ワクワク!

杉林歩道

見上げると、杉と同じぐらいの高さに延びた椰子系の大木が混ざっていて、台湾にいることを実感。

地面の近くも見逃せない。台湾らしい鮮やかな色の花や大きな葉っぱが生えていて、杉林が多彩な表情を見せる。






ハイキングコースから民家が点在する辺りに出たところで「百年老老街」の標識が出ていた。「老」が二つついた老街って、最初に歩いたところより古いってことだろうか。標識が示す方向へ歩いていくと、古い家が並ぶ小さな集落があった。駅近くの老街のような賑わいはなく、時代から隔絶されたような雰囲気。

老老街の中に「阿里山珈琲」の看板を掲げるお店があった。

淹れてもらったコーヒーは香ばしくてほんのり酸味があり、薫り高かった。老街でこんな美味しい台湾珈琲を飲めるなんて幸せ!

老老街からまた少し歩き、「100年楠」と呼ばれている大きなクスノキを見上げて、最初の奮起湖老街に戻ってきた。

老街のパン屋さんで菓子パンを買っていたら、隣の珈琲店のおじさんが日本語で話しかけてきた。日本の会社での勤務経験もあるという方で、つい最近も北海道を旅行してきたとのこと。そのお店にドリップ式の阿里山珈琲のカートリッジを売っていたので買ってしまった。
「今夜はどこに泊るんですか。」と聞かれ、泊る予定の民宿の話をして、「来るときは迎えに行くから電話するように言われているんです。」と言うと、自分のスマホで民宿に電話してくれ、車が来る場所まで一緒に来てくれた。迎えを待つ間、北海道旅行の写真をスマホで見せてくれた。迎えがくるはずの時間が過ぎても来ないとまた電話してくれて、「少し遅れるそうだけれど、ここで待っていれば大丈夫」と教えてくれ、「友達から電話があったからもう戻りますね」と、握手して別れた。本当に親切なおじさんだった。

迎えの車が来る場所まで案内してくれたおじさんとおしゃべり
おじさんと別れて間もなくして民宿のお迎えの車が来た。どこで待っていればいいかも不安だったし、おじさんに改めて感謝!
民宿「淵明居客棧」
迎えに来てくれたのはキレイで感じのいいお姐ちゃん。英語もわりと通じる。坂道をどんどん登り、山の上の方まで来たら、ガスっていたのがパーッと晴れて雲海に浮かぶ遠くの山並みが見えた。素晴らしい! 駅からかなり乗って着いた民宿「淵明居客棧」は広~い茶畑の中にあり、中庭をぐるりと取り囲む廟のような建物。またガスガスになり、視界は効かないが幻想的。

宿のご主人が案内してくれた部屋の入口は2ヵ所。「別々の部屋?」と思ったら、中で繋がっていた。ベッドルームが二部屋あり、その間に共用のリビングがある。ちょっと殺風景だが、広くてゆったり過ごせそう。
部屋にはストーブがあった。標高は1500メートル以上あるはずだから、下界より10度近く気温は低いわけで、さすがにかなり冷える。宿を選ぶとき口コミを見ていたら「部屋が寒かった」というコメントがある宿が多かっただけに、ここはストーブがあってよかった。台湾でストーブを使うなんて初めてかも。

霧が晴れないかなー、と寒いなかテラスに出て粘っていたら、パーッと視界が開けてきた! 家族を呼んでテラスでみんなで眺めを楽しんだ。一面の茶畑の向こうに浮かぶ山並みの風景、キレイだった!

その後、西の空の雲間から夕日が顔を覗かせた。寒さは応えたが、食事の時間を回る頃まで眺めていた。

Agodaのサイトで宿を予約してから宿のホームページを見ていたら、中国語で「夕食の予約を受け付けています」と書いてあったので、夕食を頼んでおいた。食事はキレイな新館のレストランで鍋料理。

新鮮な野菜がたっぷり、魚介類、肉は牛肉か豚肉のしゃぶしゃぶを一人ずつ選べる。中華味噌風のタレもとても美味しくて完食!冷えた身体がポカポカと温まった。ふりかけがかかったご飯はおかわり自由。デザートもついて大満足の夕食だった。

夕食の予約を事前にしておかなかったら、周りには食事ができるようなところは全くなく、ひもじい夜を送ることになったかも知れない。ここに泊るときは、夕食の予約は必須!
食後、新館のロビーにお茶のセットがあったので淹れようとしていたら、宿のお兄さんが工夫茶でお茶を淹れてくれた。お茶はこの民宿の自家製烏龍茶。マレーシアから来たという女の子二人も加わって、みんなでおしゃべりしながらほのぼのした楽しい時間を過ごした。


母屋へ戻る道で、ライトアップされた茶畑と遠方の控え目な夜景も楽しめた。

母屋へ戻ると、こっちでも宿のご主人を囲んでお茶会が行われていて、誘われたのでご一緒させてもらった。香港から来たという若い二人連れの女の子は、日本語の単語をたくさん知っていてビックリ!

美味しい自家製のお茶を頂きながら、宿の人やお客さん達とまったりしたいい時間を過ごすことができた。これは民宿ならではの体験だろう。日本人のお客は殆ど来ないそうだが、ご主人もお兄さんもとても感じが良くて居心地が良かった。
2015年3月28日(土)
翌朝は日の出を見るために6時前に起きた。天気は晴れ!茶畑脇にあった給水タンクによじ登って、そこでご来光を待った。日の出前、一面の茶畑と、その背景にうっすらと霞がたなびく山並みの光景は実に優美。ひんやりとした空気(10.5℃)、あちこちで呼び交わす鳥の声… 静かな明け方の格別の時間が流れていった。

クリックで拡大
やがて山の背後から太陽が昇ってきた。雲が虹色に輝いた。

日の出のあと、しばらくの間、空と山の色が変わっていく光景を眺めていた。

クリックで拡大

クリックで拡大
朝食までにはまだ時間があったので、母屋と新館の道の途中に案内板があった「霞之道步道」という散策路を歩いてみることにした。
歩道は茶畑の斜面に沿ってつけられた木の階段。朝日を受けた一面の茶畑と、遠くの山並みを眺めながらの気持ちいい朝の散歩。

やがて道は竹藪に入って行く。民宿にいた黒いワンコがずっと僕たちに付いてきた。

一晩過ごした母屋。背後には茶畑がどこまでも… ここの宿の畑かなぁ。

朝食は、夕食を食べた場所と同じ新館のレストランでバイキング。葱油餅、野菜炒め、チキンナゲット、さつま芋もお粥など、みんな美味しかった。
新館の前にはコスモスが咲いていた。菜の花も。台湾でコスモスを見たのは初めて。しかも3月!

昨夜、お茶会をやってくれたヨン様似の静かなお兄さんが、阿里山行きのバスが出る石棹の停留所まで車で送ってくれた。お世話になったお礼に日本から持ってきたミニ風呂敷のお土産を渡したら、とってもびっくりして喜んでくれた。
切符を売っている売店まで来てくれて、切符を買うのにも付き添ってくれた。とても親切。ありがとう。民宿「淵明居客棧」は、僕たちを温かく迎えてくれた。素晴らしい景色、暖かい部屋、美味しい食事、心和むお茶会と、奮起湖の滞在を思い出深いものにしてくれた。いつかまた是非訪れたい。
嘉義 ~映画「KANO」の舞台 古い日本が蘇る町~
阿里山~巨木群に太古の声を聴く~+台北南機場夜市
鶯歌&三峡 ~台北近郊の陶器の町と100年の老街を歩く~
猴硐 ~猫たちと触れ合える炭鉱の町~
台北 ~古くて新しくて楽しくて美味しい町~
優しい台湾 ~三峡で出会ったおじいさん(台湾人の優しさを考える)~
おもしろすぎる台湾
にほんブログ村


阿里山森林鉄道
嘉義の町を見て回った翌日は、台湾最高峰の玉山を抱く高山地帯の前衛、阿里山山域へ出かけた。阿里山へ運んでくれる阿里山森林鉄道は世界屈指の登山鉄道として有名で、これに乗るのも楽しみの一つだった。
日本統治時代、木材の運搬を目的として、険しい地形と厳しい気象条件のなか建設された阿里山森林鉄道は、環境の厳しさゆえに、台風などの災害に見舞われることも多く、最近では2009年に台風で壊滅的な被害に遭って全線が運行停止になった。それ以来、未だに完全復旧はしておらず、昨年ようやく嘉義から奮起湖までの運転が再開した。なので、奮起湖までの50キロの森林鉄道の旅だ。
早めに嘉義駅へ行き切符を買おうとしたら「満席」と言われてしまった。
「えーっ!!?? そんな~。。。」昨日北門駅の切符売り場で訊ねたときは「明天的車票買明天(明日の切符は明日買ってください)」って言ってたのに。阿里山森林鉄道は1日一往復しかしていない。諦めきれずに立っていたら「乗車券だけなら買えますよ」と言われた。2時間半も立ちっぱなしは辛いけど仕方ない。とりあえず乗れるということでヤレヤレだ。。。
ホームにディーゼル機関車に引かれたかわいい客車の阿里山森林鉄道列車が入線してきた。

阿里山森林鉄道は日本の大井川鉄道と「姉妹鉄道」になっていて、客車の車体には両国の国旗と双方の鉄道会社のロゴマークが掲げられていた。

午前9時。甲高い汽笛と共に出発。ディーゼル機関車が客車を6両押して行く。民家スレスレにゆっくり走る様子は江ノ電に似ている。小学校?の子供たちがたくさんこっちを見て手を振っていたので振り返した。この列車は滅多に通らないだけに子供たちも嬉しそう。

クリックで拡大
始発駅ではまだ満席でなかったので取りあえず空いてる席に座った。ここ、ずっと誰も来なければいいのになー・・・

住宅街を抜け、椰子の木が並ぶ風景、そして水田が広がる田園風景のなかを列車はゆっくりゆっくり走る・・・


出発から約40分、竹崎駅で中国の団体客風の一団が乗り込んできて、席は明け渡すことに。。それからは立って車窓を楽しんだ。
竹崎駅を過ぎると山深い景色に変わってきた。勾配やカーブも急になり、山岳鉄道の趣きが出てきた。沿線には石垣などの工事をする作業員さんをよく見かけた。竹崎から先はほんの1年前に再開したばかりなので、仕上げ作業はまだ大変なようだ。

クリックで拡大
ガスが出ていて遠望はきかなかったが、深い森や谷が続く大自然の中の約2時間半の鉄道の旅を満喫して11時半過ぎ、現在開通している区間の終点、奮起湖駅に到着した。それにしても2時間近く立ちっぱなしはくたびれた~。。

標高は1404メートルあるということで、空気がひんやりしている。山奥にあるわりには大きな駅だ。車庫もあって、かつて蒸気機関車はここで石炭や水を補給したそうだ。この車庫は自由に通り抜けが出来て、写真パネルをはじめとして阿里山森林鉄道に関する展示があった。

荷物は駅で預かってもらって(担当のおばさんの中国語は早口で殆どわからなかったが、荷物はちゃんと預かってくれた様子)、まずは腹ごしらえ。ここではやっぱり名物の駅弁を食べたい。
![]() | 駅のすぐ脇の切符売り場のような小屋の形をした駅弁屋で、いくつかある中から「香炸排骨」という弁当を食べた。 大きな揚げた豚肉がご飯の上にドーンと乗り、青菜炒め、厚揚げ、茶梅、さつま芋、型抜き人参(なんと抜いた後の方!)などおかずも盛り沢山で温かく、薄味で優しい美味だった。 |
奮起湖老街
駅からは老街と呼ばれる古い商店街が続いている。坂や階段のある狭い道の両側に、食べ物系のお店やお土産屋がひしめいていて結構な賑わい。子供の頃に家の近所にあった市場通りのような雰囲気。お弁当屋さんも何軒も見かけた。

台湾の夜市などで定番のデザートの一つ、愛玉(アイユイ)ゼリーの原料の植物がこの辺りに多く自生するということで、愛玉ゼリーのお店も沢山あった。台湾語で愛玉子(オーギョーチー)と発音されるイチジクのような実で、これを開いて乾燥させ(写真右側)、ゼリーを作るそうだ。このお店で黒蜜風味の愛玉を食べた。愛玉自体は味はないということだが、自然のうま味を感じた。

こちらもこの地方の特産品。樹蕃茄(シューファンチェ)という木に生るトマト。珍しそうなものは試したくなる僕は、この100パーセントジュースを飲んだ。味が濃そうなワイルドな見た目同様に濃厚だけど飲み心地はサラサラ。スイカとリンゴとトマトのミックスジュースのような味わいだった。

老街を散策した後は、今夜宿泊する予定の民宿の人がメールで教えてくれた「杉林歩道(杉林桟道)」というハイキングコースへ。賑やかな老街を出ると家は少なくなり田舎の風景。ニャンコを飼ってるお宅が多い。


まだ民家がある辺りからハイキングコースが始まる。ワクワク!

杉林歩道
![]() | 道はやがて立派な木の階段のコースになり、深い森の中へ導かれて行った。 階段は湿っていて滑りやすいが、しっかりした作りで整備も行き届いている。静寂に包まれ、ひんやりとした空気の中、一気にマイナスイオンのシャワーを浴びる感覚。 ここの杉林は台湾固有の杉に、日本統治時代に日本本土の杉が植林されて形成されているそう。日本では花粉の時期真っ盛りだが、花粉は全く感じない! 杉に混ざって他の植物も多く、珍しい鳥たちがキレイな声で呼び交わしていた。 |

見上げると、杉と同じぐらいの高さに延びた椰子系の大木が混ざっていて、台湾にいることを実感。

地面の近くも見逃せない。台湾らしい鮮やかな色の花や大きな葉っぱが生えていて、杉林が多彩な表情を見せる。






阿里山地域でのハイキングコースと言えば、僕たちも明日行く予定の阿里山駅付近のご神木などの巨木巡りが有名だが、そこよりもずっと手前の奮起湖で、台湾の深い森の幽玄の世界を堪能できるこんな素晴らしいコースを楽しめたのは収穫だった。 「奮起湖」と言っても湖があるわけではなく、山に囲まれた窪地に霧が立ち込めて湖のように見える様からこの名が付いたということだ。 ちなみにこの杉林歩道はガイドブックにも、日本語のサイトにも出ていない。民宿でいいコースを教えてもらってよかったー | ![]() |
ハイキングコースから民家が点在する辺りに出たところで「百年老老街」の標識が出ていた。「老」が二つついた老街って、最初に歩いたところより古いってことだろうか。標識が示す方向へ歩いていくと、古い家が並ぶ小さな集落があった。駅近くの老街のような賑わいはなく、時代から隔絶されたような雰囲気。

老老街の中に「阿里山珈琲」の看板を掲げるお店があった。

![]() | 田舎のばーちゃんがやっているようなお店の店先に、サイフォン式のコーヒーメーカーが並んでいた。 台湾では量は少ないながらコーヒーが生産されていて、以前台北松山空港の免税ショップで、ドリップ式のカートリッジを結構な値段で買ったことがある。主な産地はここ阿里山の山域。 阿里山珈琲は、台湾でもあまり味わうことができない深い味わいに定評があるコーヒーで、そんな貴重なコーヒーを産地で飲めるということで、他の飲み物に比べると格段に高いが、是非とも飲みたくて注文した。 |
淹れてもらったコーヒーは香ばしくてほんのり酸味があり、薫り高かった。老街でこんな美味しい台湾珈琲を飲めるなんて幸せ!

老老街からまた少し歩き、「100年楠」と呼ばれている大きなクスノキを見上げて、最初の奮起湖老街に戻ってきた。

老街のパン屋さんで菓子パンを買っていたら、隣の珈琲店のおじさんが日本語で話しかけてきた。日本の会社での勤務経験もあるという方で、つい最近も北海道を旅行してきたとのこと。そのお店にドリップ式の阿里山珈琲のカートリッジを売っていたので買ってしまった。
「今夜はどこに泊るんですか。」と聞かれ、泊る予定の民宿の話をして、「来るときは迎えに行くから電話するように言われているんです。」と言うと、自分のスマホで民宿に電話してくれ、車が来る場所まで一緒に来てくれた。迎えを待つ間、北海道旅行の写真をスマホで見せてくれた。迎えがくるはずの時間が過ぎても来ないとまた電話してくれて、「少し遅れるそうだけれど、ここで待っていれば大丈夫」と教えてくれ、「友達から電話があったからもう戻りますね」と、握手して別れた。本当に親切なおじさんだった。

迎えの車が来る場所まで案内してくれたおじさんとおしゃべり
おじさんと別れて間もなくして民宿のお迎えの車が来た。どこで待っていればいいかも不安だったし、おじさんに改めて感謝!
民宿「淵明居客棧」
迎えに来てくれたのはキレイで感じのいいお姐ちゃん。英語もわりと通じる。坂道をどんどん登り、山の上の方まで来たら、ガスっていたのがパーッと晴れて雲海に浮かぶ遠くの山並みが見えた。素晴らしい! 駅からかなり乗って着いた民宿「淵明居客棧」は広~い茶畑の中にあり、中庭をぐるりと取り囲む廟のような建物。またガスガスになり、視界は効かないが幻想的。

宿のご主人が案内してくれた部屋の入口は2ヵ所。「別々の部屋?」と思ったら、中で繋がっていた。ベッドルームが二部屋あり、その間に共用のリビングがある。ちょっと殺風景だが、広くてゆったり過ごせそう。
部屋にはストーブがあった。標高は1500メートル以上あるはずだから、下界より10度近く気温は低いわけで、さすがにかなり冷える。宿を選ぶとき口コミを見ていたら「部屋が寒かった」というコメントがある宿が多かっただけに、ここはストーブがあってよかった。台湾でストーブを使うなんて初めてかも。

霧が晴れないかなー、と寒いなかテラスに出て粘っていたら、パーッと視界が開けてきた! 家族を呼んでテラスでみんなで眺めを楽しんだ。一面の茶畑の向こうに浮かぶ山並みの風景、キレイだった!

その後、西の空の雲間から夕日が顔を覗かせた。寒さは応えたが、食事の時間を回る頃まで眺めていた。

Agodaのサイトで宿を予約してから宿のホームページを見ていたら、中国語で「夕食の予約を受け付けています」と書いてあったので、夕食を頼んでおいた。食事はキレイな新館のレストランで鍋料理。

新鮮な野菜がたっぷり、魚介類、肉は牛肉か豚肉のしゃぶしゃぶを一人ずつ選べる。中華味噌風のタレもとても美味しくて完食!冷えた身体がポカポカと温まった。ふりかけがかかったご飯はおかわり自由。デザートもついて大満足の夕食だった。

夕食の予約を事前にしておかなかったら、周りには食事ができるようなところは全くなく、ひもじい夜を送ることになったかも知れない。ここに泊るときは、夕食の予約は必須!
食後、新館のロビーにお茶のセットがあったので淹れようとしていたら、宿のお兄さんが工夫茶でお茶を淹れてくれた。お茶はこの民宿の自家製烏龍茶。マレーシアから来たという女の子二人も加わって、みんなでおしゃべりしながらほのぼのした楽しい時間を過ごした。


母屋へ戻る道で、ライトアップされた茶畑と遠方の控え目な夜景も楽しめた。

母屋へ戻ると、こっちでも宿のご主人を囲んでお茶会が行われていて、誘われたのでご一緒させてもらった。香港から来たという若い二人連れの女の子は、日本語の単語をたくさん知っていてビックリ!

美味しい自家製のお茶を頂きながら、宿の人やお客さん達とまったりしたいい時間を過ごすことができた。これは民宿ならではの体験だろう。日本人のお客は殆ど来ないそうだが、ご主人もお兄さんもとても感じが良くて居心地が良かった。
2015年3月28日(土)

翌朝は日の出を見るために6時前に起きた。天気は晴れ!茶畑脇にあった給水タンクによじ登って、そこでご来光を待った。日の出前、一面の茶畑と、その背景にうっすらと霞がたなびく山並みの光景は実に優美。ひんやりとした空気(10.5℃)、あちこちで呼び交わす鳥の声… 静かな明け方の格別の時間が流れていった。

クリックで拡大
やがて山の背後から太陽が昇ってきた。雲が虹色に輝いた。

日の出のあと、しばらくの間、空と山の色が変わっていく光景を眺めていた。

クリックで拡大

クリックで拡大
朝食までにはまだ時間があったので、母屋と新館の道の途中に案内板があった「霞之道步道」という散策路を歩いてみることにした。
歩道は茶畑の斜面に沿ってつけられた木の階段。朝日を受けた一面の茶畑と、遠くの山並みを眺めながらの気持ちいい朝の散歩。

やがて道は竹藪に入って行く。民宿にいた黒いワンコがずっと僕たちに付いてきた。

霞之道步道は下の車道に出たところで終点。300メートルもない手軽な歩道だった。このワンコはここまで付いてきた。撫でたら裏返って腹を出して服従ポーズ?おとなしくてかわいい。 当然のことながら、帰りは階段をひたすら登って戻らなければならない。朝飯前のいい運動になった。 | ![]() |
一晩過ごした母屋。背後には茶畑がどこまでも… ここの宿の畑かなぁ。

朝食は、夕食を食べた場所と同じ新館のレストランでバイキング。葱油餅、野菜炒め、チキンナゲット、さつま芋もお粥など、みんな美味しかった。
新館の前にはコスモスが咲いていた。菜の花も。台湾でコスモスを見たのは初めて。しかも3月!

昨夜、お茶会をやってくれたヨン様似の静かなお兄さんが、阿里山行きのバスが出る石棹の停留所まで車で送ってくれた。お世話になったお礼に日本から持ってきたミニ風呂敷のお土産を渡したら、とってもびっくりして喜んでくれた。
切符を売っている売店まで来てくれて、切符を買うのにも付き添ってくれた。とても親切。ありがとう。民宿「淵明居客棧」は、僕たちを温かく迎えてくれた。素晴らしい景色、暖かい部屋、美味しい食事、心和むお茶会と、奮起湖の滞在を思い出深いものにしてくれた。いつかまた是非訪れたい。
嘉義 ~映画「KANO」の舞台 古い日本が蘇る町~
阿里山~巨木群に太古の声を聴く~+台北南機場夜市
鶯歌&三峡 ~台北近郊の陶器の町と100年の老街を歩く~
猴硐 ~猫たちと触れ合える炭鉱の町~
台北 ~古くて新しくて楽しくて美味しい町~
優しい台湾 ~三峡で出会ったおじいさん(台湾人の優しさを考える)~
おもしろすぎる台湾
