facciamo la musica! & Studium in Deutschland

足繁く通う演奏会の感想等でクラシック音楽を追求/面白すぎる台湾/イタリアやドイツの旅日記/「ドイツ留学相談室」併設

Salicus Kammerchor(サリクス・カンマーコア)

2020年11月16日 | pocknのコンサート感想録2020
11月13日(金)櫻井元希指揮 Salicus Kammerchor<合唱/管弦楽>
J. S. バッハの教会カンタータ vol.1
日本福音ルーテル東京教会


【曲目】
1.カンタータ第182番「天の王よ、あなたを歓迎します」 BWV182
2.カンタータ第103番「あなた方は泣き喚くだろう」 BWV103
3.バッハ/カンタータ第78番「イエス、私の魂よ」 BWV78
4.カンタータ第99番「神の御業は正しきこと」 BWV99

【独唱】
S:金成佳枝(4)、中須美喜(3)/A:富本泰成/T:金沢青児/B:小藤洋平



大好きな藝大バッハカンタータクラブのメンバーを中心に2015年に結成されたというSalicus Kammerchorによるバッハのカンタータの演奏会。カンタータクラブは藝祭もなかったし(あっても抽選になれば外れるだろうが・・・)、下谷教会の音楽礼拝も行われなかったようだし、そのうえ来年2月に予定されていた定期演奏会も中止になってしまった。益々サリクスの演奏会を聴くしかない! と大久保のルーテル東京教会へ。

曲目は教会カンタータが4つ。メンバーにはカンタータクラブでおなじみの顔がたくさんいる。合唱が最前列に来るコロナ仕様の配置は、合唱が重要な役割を担うカンタータにはむしろ適しているかも知れない。この響きのいい礼拝堂に、カンタータ182番の合唱と管弦楽の調べが美しく響き渡った。

どのカンタータでも合唱が入る楽曲が何といっても素晴らしい。合唱の面々の顔の表情は、カンタータクラブで歌っていた頃と変わらずとても豊か。そして透明で伸びのある合唱と、活きのいい管弦楽はアンサンブルとして呼吸し、瑞々しく生き生きとイエスへの思いを伝える。その響きに浸っていると幸せを感じる。コロナ禍で最も困難と云われる合唱でここまで聴かせてくれることは素晴らしい。

ソロのアリアやレチタティーヴォでも素敵なシーンは沢山あった。歌詞が意味を持ってはっきりと、そして親密に伝わってくる歌唱が心に響く。おなじみの金沢青児さんの明解なドイツ語の発音と、きめ細かな表情で歌われるレチタティーヴォやアリアは素直に心に届く。以前にも好印象を持った中須美喜さんの歌も良かった。顔の表情を見ているだけで何を伝えたいかがわかり、それが実際の歌としても表現され、艶やかで美しい声と共に「イエスの元へはせ参じます」という真っすぐな思いが、喜びとともに伝わってきた。

ほかの楽曲でも心に響く演奏はあったが、カンタータ全体から伝わる大きなメッセージということで捉えると、藝大バッハカンタータクラブからもらう至福や、BCJから伝わる濃密で揺るぎない思いなどを感じるには至らなかった。カンタータの演奏で僕にとって大切なのは、作品が発するメッセージが明確に、しかも熱い心を伴って感じられること。歌ではひとつひとつの言葉が美しくはっきりした発音で心からの共感を持って伝わってくること。「これだ!」という歌唱が続くと、その蓄積が大きな感動へと繋がっていく。逆に、あー、もっとこの子音が聞こえたらなぁ、とか、この言葉にはもっとこんな表情が欲しいなぁ、とかいう思いが重なると、物足りなさが蓄積してしまい、全体の印象が弱くなる。歌だけではない。オブリガートで演奏されるソロ器楽や通奏低音の表情も歌のメッセージを伝える上で重要だ。

藝大バッハカンタータクラブでバッハへの愛と演奏の研鑽を育み、その後プロとして更なる経験を積んで技を磨いているサリクスカンマーコアだから自ずと期待値も高くなる。そんなワンステージ上のバッハ演奏を花開かせることを楽しみにしている。

東京藝術大学バッハカンタータクラブ定期演奏会 2020.2.15 東京藝術大学奏楽堂
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