2月15日(土)東京藝術大学バッハカンタータクラブ
東京藝術大学奏楽堂
【曲目】
1.バッハ/シンフォニア ニ長調 BWV1045
2.バッハ/カンタータ 第30番「喜べ、救われし人々の群れよ」BWV30
S:大田茉里/A:相澤紀恵、德田あさひ/T:石黒達也/B:小河佑樹、坂本樹生、玉山彰彦
♪ ♪ ♪ 3. バッハ/無伴奏チェロ組曲 第2番 ニ短調 BWV1008
Vc:山根風仁
4.バッハ/カンタータ 第119番「エルサレムよ、主をたたえよ」BWV119
S:宮原唯奈/A:德田あさひ/T:石黒達也/B:玉山彰彦
【アンコール】
バッハ/カンタータ 第75番「乏しき者は食らいて」BWV75~終結コラール
【管弦楽&合唱】
山根風仁指揮 東京藝術大学バッハカンタータクラブ
東京芸大バッハカンタータクラブが50回目の定期演奏会を迎えた。初めて演奏を聴いたのは1980年の藝祭公演で、定期演奏会はその翌年からほぼ毎年欠かさず聴いているので、カンタータクラブの歴史の5分の4は聴いて来たことになる。僕が長く聴き続けている演奏団体やアーティストのなかでも最上位の存在である。
学生のサークルだからメンバーは年を追ってどんどん入れ替わって行く。けれどカンタータクラブは、40年前に初めて聴いたときと変わらぬ感動をいつも届けてくれる。いつもこのブログに書いていることだが、メンバーのバッハを演奏する喜びや、バッハへの愛がストレートに伝わってくる感動だ。今日の50回目の定期演奏会もそれが脈々と息づいていることを実感した。
冒頭のシンフォニアはトランペットやティンパニも加わった祝祭的で華やかな作品。演奏はキラキラした輝かしい光に溢れていた。独奏ヴァイオリンはヴァイオリンコンチェルト的に大活躍。コンマスの大光嘉理人さんは、生き生きと果敢なソロを聴かせ、ウキウキ気分を盛り立てた。
曲が終わるや、カンタータ第30番へアタッカのように繋がった。調性も同じニ長調だし気分も共通していて、シンフォニアをカンタータの序奏と捉えた試みは大成功だったと思う。喜ばしい気分に充ちた30番でもバハカンの持ち味は全開。合唱による「喜べ!」という小躍りするような生き生きとした歌いかけが、喜び溢れる顔の表情と共に訴えてくる。歌詞が自分たちの心からの思いとして表現されている。
これはソロの楽曲でも同じ。ソロを担当した7名の歌手は、誰もが十分な魅力と実力を具え、美しい発声で歌詞を自分の言葉として伝え、主を讃えるこのカンタータの気分を盛り立てた。とりわけ、最初にソロを担当したバスの坂本樹生さんの歌唱は、朗々と伸びやかで滑らかな表情が清々しく心に届いてきた。明朗な発音でくっきりとした「ともに喜びを分かち合おう!」という呼びかけが真っすぐに伝わってきた。
大規模なカンタータの締めは第1曲と同じ音楽。歌詞も共通点が多いが、より潤いと深みを増して戻ってきたように感じられ、慈しみ深い演奏と豊かな顔の表情にジーンと来てしまった。
後半はバッハの無伴奏チェロ組曲で始まった。バハカンの演奏会でコンチェルトやソロカンタータを聴いた記憶はあるが、たった一人で演奏する「無伴奏」は初めてではないだろうか。その大役を担ったのは、去年の定期演奏会からバハカンを指揮している山根風仁さん。少し緊張した表情で登場したが、聴こえてきたバッハは落ち着いた呼吸で滑らかに紡がれて行った。3月で卒業を迎える山根さんがプログラムに綴った「カンタータクラブに寄せる思い」が、一つ一つの音にも込められているような親密さを感じた。山根さんは今秋から海外留学する予定とのこと。更に大きな成長に期待!
最後はまた華やかなカンタータ。冒頭の管弦楽組曲を思わせる壮麗なフランス風序曲に心が躍った。このカンタータはライプツィヒ市参事会員交代式のために書かれた祝祭的な作品で、バッハの教会カンタータのなかでは宗教色が薄い。そのためか音楽も歌詞も外向的な印象を受けたが、カンタータクラブの演奏からはバッハの音楽を届けるピュアな喜び、バッハへの敬愛が真摯に伝わってきた。
アンサンブルは器楽も声楽も生き生きと美しく響き、トランペットやオブリガートのソロ楽器の妙技にも耳を引かれ、4人のソリストの歌も堪能した。どの歌い手も印象的な素敵な歌を聴かせてくれたなかでも感銘を受けたのは、前半にも登場した石黒達也さんのテノール。張りと艶のある声、細やかで明瞭な表現、滑らかな歌いまわし、石黒さんの歌には一昨年から感銘をブログに綴っているが、聴く度に魅力を増しているように思う。
華やかなカンタータを締めるコラールは一転して内側へ気持ちが向かい、慈しみと愛情がこもった温かで親密な世界が静かに示されてジーンと来たところに、寄せては返す波のような管弦楽の前奏に乗って僕が大好きな75番のコラールをアンコールでやってくれるなんて幸せ過ぎ!終演後、メンバーのなかには涙ぐむ人が何人も。精一杯バッハと向き合ったことの感動なのかな。カンタータクラブへの感謝を胸にホールを後にした。
《カンタータクラブ関係者の方へ》
プログラムに掲載されていた「カンタータクラブ定期演奏会の歩み」という記録で、2005年と2009年の公演内容が(不明)となっていますが、2009年については当ブログの以下の感想をご参照ください。
東京芸術大学 バッハカンタータクラブ定期演奏会 2009 ~2019.2.21~
2005年はブログを始める前ですが、訪れた演奏会の感想は記しています。けれどカンタータクラブの公演記録は残っていませんでした。
また顧問の土田先生の挨拶文に「昔のプログラムなどお持ちの方がいたら一声かけてください。」と記されていたので、私が保管している定期演奏会のプログラムの発行年をお知らせします。必要でしたらお気軽にメッセージを送ってください。
1981~1993,2000,2004,2007~2011,2013~2020
下谷教会音楽賛美礼拝(東京藝術大学バッハカンタータクラブ)~2019.10.20~
♪ブログ管理人の作曲♪
「星去りぬ」~フルートとギターのための~
Fl:佐々木真/G:岩永善信
拡散希望記事!やめよう!エスカレーターの片側空け
東京藝術大学奏楽堂
【曲目】
1.バッハ/シンフォニア ニ長調 BWV1045
2.バッハ/カンタータ 第30番「喜べ、救われし人々の群れよ」BWV30
S:大田茉里/A:相澤紀恵、德田あさひ/T:石黒達也/B:小河佑樹、坂本樹生、玉山彰彦
Vc:山根風仁
4.バッハ/カンタータ 第119番「エルサレムよ、主をたたえよ」BWV119
S:宮原唯奈/A:德田あさひ/T:石黒達也/B:玉山彰彦
【アンコール】
バッハ/カンタータ 第75番「乏しき者は食らいて」BWV75~終結コラール
【管弦楽&合唱】
山根風仁指揮 東京藝術大学バッハカンタータクラブ
東京芸大バッハカンタータクラブが50回目の定期演奏会を迎えた。初めて演奏を聴いたのは1980年の藝祭公演で、定期演奏会はその翌年からほぼ毎年欠かさず聴いているので、カンタータクラブの歴史の5分の4は聴いて来たことになる。僕が長く聴き続けている演奏団体やアーティストのなかでも最上位の存在である。
学生のサークルだからメンバーは年を追ってどんどん入れ替わって行く。けれどカンタータクラブは、40年前に初めて聴いたときと変わらぬ感動をいつも届けてくれる。いつもこのブログに書いていることだが、メンバーのバッハを演奏する喜びや、バッハへの愛がストレートに伝わってくる感動だ。今日の50回目の定期演奏会もそれが脈々と息づいていることを実感した。
冒頭のシンフォニアはトランペットやティンパニも加わった祝祭的で華やかな作品。演奏はキラキラした輝かしい光に溢れていた。独奏ヴァイオリンはヴァイオリンコンチェルト的に大活躍。コンマスの大光嘉理人さんは、生き生きと果敢なソロを聴かせ、ウキウキ気分を盛り立てた。
曲が終わるや、カンタータ第30番へアタッカのように繋がった。調性も同じニ長調だし気分も共通していて、シンフォニアをカンタータの序奏と捉えた試みは大成功だったと思う。喜ばしい気分に充ちた30番でもバハカンの持ち味は全開。合唱による「喜べ!」という小躍りするような生き生きとした歌いかけが、喜び溢れる顔の表情と共に訴えてくる。歌詞が自分たちの心からの思いとして表現されている。
これはソロの楽曲でも同じ。ソロを担当した7名の歌手は、誰もが十分な魅力と実力を具え、美しい発声で歌詞を自分の言葉として伝え、主を讃えるこのカンタータの気分を盛り立てた。とりわけ、最初にソロを担当したバスの坂本樹生さんの歌唱は、朗々と伸びやかで滑らかな表情が清々しく心に届いてきた。明朗な発音でくっきりとした「ともに喜びを分かち合おう!」という呼びかけが真っすぐに伝わってきた。
大規模なカンタータの締めは第1曲と同じ音楽。歌詞も共通点が多いが、より潤いと深みを増して戻ってきたように感じられ、慈しみ深い演奏と豊かな顔の表情にジーンと来てしまった。
後半はバッハの無伴奏チェロ組曲で始まった。バハカンの演奏会でコンチェルトやソロカンタータを聴いた記憶はあるが、たった一人で演奏する「無伴奏」は初めてではないだろうか。その大役を担ったのは、去年の定期演奏会からバハカンを指揮している山根風仁さん。少し緊張した表情で登場したが、聴こえてきたバッハは落ち着いた呼吸で滑らかに紡がれて行った。3月で卒業を迎える山根さんがプログラムに綴った「カンタータクラブに寄せる思い」が、一つ一つの音にも込められているような親密さを感じた。山根さんは今秋から海外留学する予定とのこと。更に大きな成長に期待!
最後はまた華やかなカンタータ。冒頭の管弦楽組曲を思わせる壮麗なフランス風序曲に心が躍った。このカンタータはライプツィヒ市参事会員交代式のために書かれた祝祭的な作品で、バッハの教会カンタータのなかでは宗教色が薄い。そのためか音楽も歌詞も外向的な印象を受けたが、カンタータクラブの演奏からはバッハの音楽を届けるピュアな喜び、バッハへの敬愛が真摯に伝わってきた。
アンサンブルは器楽も声楽も生き生きと美しく響き、トランペットやオブリガートのソロ楽器の妙技にも耳を引かれ、4人のソリストの歌も堪能した。どの歌い手も印象的な素敵な歌を聴かせてくれたなかでも感銘を受けたのは、前半にも登場した石黒達也さんのテノール。張りと艶のある声、細やかで明瞭な表現、滑らかな歌いまわし、石黒さんの歌には一昨年から感銘をブログに綴っているが、聴く度に魅力を増しているように思う。
華やかなカンタータを締めるコラールは一転して内側へ気持ちが向かい、慈しみと愛情がこもった温かで親密な世界が静かに示されてジーンと来たところに、寄せては返す波のような管弦楽の前奏に乗って僕が大好きな75番のコラールをアンコールでやってくれるなんて幸せ過ぎ!終演後、メンバーのなかには涙ぐむ人が何人も。精一杯バッハと向き合ったことの感動なのかな。カンタータクラブへの感謝を胸にホールを後にした。
《カンタータクラブ関係者の方へ》
プログラムに掲載されていた「カンタータクラブ定期演奏会の歩み」という記録で、2005年と2009年の公演内容が(不明)となっていますが、2009年については当ブログの以下の感想をご参照ください。
東京芸術大学 バッハカンタータクラブ定期演奏会 2009 ~2019.2.21~
2005年はブログを始める前ですが、訪れた演奏会の感想は記しています。けれどカンタータクラブの公演記録は残っていませんでした。
また顧問の土田先生の挨拶文に「昔のプログラムなどお持ちの方がいたら一声かけてください。」と記されていたので、私が保管している定期演奏会のプログラムの発行年をお知らせします。必要でしたらお気軽にメッセージを送ってください。
1981~1993,2000,2004,2007~2011,2013~2020
下谷教会音楽賛美礼拝(東京藝術大学バッハカンタータクラブ)~2019.10.20~
♪ブログ管理人の作曲♪
「星去りぬ」~フルートとギターのための~
Fl:佐々木真/G:岩永善信
拡散希望記事!やめよう!エスカレーターの片側空け