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フランチェスコ・トリスターノ ~バッハ「フランス組曲」を弾く~

2013年12月03日 | pocknのコンサート感想録2013
12月3日(火)フランチェスコ・トリスターノ(Pf)

王子ホール

【曲目】
1.バッハ/フランス組曲第1番ニ短調BWV812
2.バッハ/フランス組曲第5番ト長調BWV816
3.バッハ/フランス組曲第3番ロ短調BWV814
4.バッハ/フランス組曲第4番変ホ長調BWV815
5. バッハ/フランス組曲第2番ハ短調BWV813
6.バッハ/フランス組曲第6番ホ長調BWV817
【アンコール】
トリスターノ/ラ・フランシスカーナ


今年の2月、王子ホールで聴いたフランチェスコ・トリスターノのピアノにすっかり魅せられ、その時既に今回のリサイタルに来ようと決めていた。

今回はオールバッハプログラム。前回のブクステフーデに輪をかけてトリスターノの真価が問われることにもなるが、期待に胸をふくらませて臨み、その期待は100%満たされ、トリスターノのピアノに益々惚れ込んでしまった。

トリスターノの指先から生まれる音は、精巧なまでに研ぎ澄まされたとびきりの美音。この美音で、誰に媚びることもない透徹とした世界を作り上げる。バッハの鍵盤作品のなかでは親しみ深く、温かな情感を湛えたフランス組曲だが、トリスターノはロマンチシズムやセンチメンタリズムとは無縁のリアリズムでストイックに勝負を挑んできて、これがことごとく聴く者の心にストレートに響いてくる。

このストレートなアプローチがトリスターノの真骨頂。打てば響く冴えと煌めき、息づくリズム、そして、一種近寄りがたい非の打ちどころのなさが、バッハの音楽に高貴な磨きをかける。この磨き抜かれた高貴さは、宝物殿に大切に保管された飾り物ではない、生きた音楽として聴き手に語りかけてくる。

トリスターノの発するピアノの音には全てに前に進もうとする能動的な意思がある。鍛え上げられた血統のいい馬を、思うままに緩急のリズムをつけて巧みに操る乗馬競技の騎士のようにも思えるが、それは単なる育ちの良いお坊ちゃんのたしなみとしての乗馬ではなく、心技体全てに渡ってどんな相手も決して及ぶことのない超然とした佇まいを感じさせた。

オールバッハのプログラムを弾き終えたあとのアンコールで演奏した、電子音楽の雰囲気が漂う自作が妙にしっくり来たのは、宇宙人的な人間離れした感性と技を宿すトリスターノが、やはり宇宙的な普遍性を持つバッハと握手を交わしたせいだろうか。フランチェスコ・トリスターノからは益々目が離せないという気持ちになった。

フランチェスコ・トリスターノ ピアノリサイタル~2013.2.20 王子ホール~

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