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山口克枝 メゾソプラノ・リサイタル

2013年11月25日 | pocknのコンサート感想録2013
11月25日(月)山口克枝(MS)/岩崎能子(Pf)
~歌で綴るお話し・・・~
ルーテル市ヶ谷センターホール

【曲目】
♪ 山田耕筰/待ちぼうけ、あわて床屋
♪ 小原孝/「おはなしのうたの」~こぶとり、一寸法師、かぐや姫、雀のお宿
♪ 高田三郎/「パリ旅情」
♪ マルティーニ/愛の喜びは
♪ シューベルト/糸を紡ぐグレートヒェン
♪ ヴェルディ/私は安らぎを失い
♪ レスピーギ/夕暮れ ~メゾソプラノと弦楽四重奏のための~
【アンコール】
ヘンデル/オンブラ・マイ・フ
弦楽四重奏:曽我かおり、池田佐代子(Vn)/小山千鶴(Vla)/小山みどり(Vc)

以前、拙作の演奏にも協力して頂いたことのある池田さんが出演する、ということで出掛けたコンサート。ルーテル市ヶ谷センターは響きも雰囲気もいいこじんまりした礼拝堂を兼ねたホールで、声楽のリサイタルにも相応しい場所だ。メゾソプラノの山口克枝さんは、端正で細やかな表現で一つ一つの歌を丁寧に歌う。安定した歌唱で芯が通っていて、感情に流されることなく、伝えるべきメッセージを冷静にしっかりと届けてくる。

前半は日本歌曲のステージ。日本昔ばなしをモチーフに金子みすゞが書いた「おはなしのうたの」に小原孝が作曲した歌では、山口さんが絵本を手に、自らおはなしを朗読しながら歌い進めた。ここでは岩崎さんのすっきりとして気転の効いたピアノ伴奏に、大切なことをさりげなくウィットを効かせて伝える歌唱が印象的だった。また、山田耕筰の「あわて床屋」では、身振りや仕草を交えて会場の笑いを誘い、感情をストレートに伝えるオペラ的でドラマチックな表現力も聴かせた。

外国の作品を並べた後半ではシューベルトの「糸を紡ぐグレートヒェン」で有名なゲーテの「ファウスト」から同じ詩のイタリア語の訳詩に、ヴェルディが曲を付けたという珍しい作品が、シューベルトの作品と共に演奏されて興味深かった。ここでも山口さんの端正で誠実な音楽づくりが好印象ではあったが、「あわて床屋」で聴かせたような、ドラマチックな表現にもう少し踏み込んでもいいように感じた。

弦楽四重奏との共演となったレスピーギの「夕暮れ」は、メランコリックで官能的な音楽。とてもデリケートで妖艶な魅力を醸し出す弦楽四重奏の演奏に、山口さんの歌は美しく溶け込んでいた。弦楽四重奏は、伴奏の域を超えてとても雄弁に詩の情景や感情を表現し、弦のそれぞれのパートの艶やかな「歌」も聴きもの。池田さんの温かなヴァイオリンを久々に聴けて嬉しかった。歌と弦楽四重奏が一体となって美しい世界を描いていたが、山口さんの歌は、弦楽四重奏から一歩際立たせ、アンコールのレチタティーヴォで聴かせたような、エモーショナルな存在感を出した方がインパクトが更に強まるのではないだろうか。

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