「ユーレイ窓」 三宅乱丈 208頁
あまり巷で見ることの少ない三宅氏(といっても妙齢の女性漫画家である)の短編集
先日の東洋文庫散策の折に駒込の小綺麗な古書店の「青いカバ」で購入しました。ここは坪数小さいものの品揃えが新刊から新し目の中古、レア物の古書、絵本、児童書まで幅広くそれでいて本好きのツボを押さえたセレクトでお洒落な外観からはなかなか侮れない店なのです。
帯に触るな危険、とあるように収録の短編はどれも破壊力抜群で、「なんか凄いもの読んじゃったな(;∀; )(;∀; )」という虚脱感というか疲労感がかぶさってきます。
一つ一つ読み終えたあとちょっと一服して気分を落ち着けないと次に進めないような感じです。
怖いのに笑ってしまう
笑っちゃいけないのに怖すぎて止められない
読んだあと一人なのに誰かが部屋に居るよう気がする
というわけでこういうのダメな方は
まさに「触るな危険」 触ったら障るヨ
な、取扱い注意な存在でございます
「本のエンドロール」 安藤祐介 381 頁
本のエンドロールとは安藤祐介の造語なのだろうが
とても良いタイトルだ。
映画のエンドロールでは延々と10分くらい制作スタッフの名前や会社が映し出されるが、本当の映画好きはその間サントラを堪能しながら時折知っている人物などが出てくるのを待ちながら映画の余韻に浸るものだ。
同様に本だって奥付というエンドロールがある。
出版社に加えて印刷会社、製本会社、装丁デザイナー、
更にはその社名の奥に連なる何十人もの本作りの関係者たち。
今回は安藤氏特製の全員出場のエンドロールが巻末にあるので
そこまでしっかりと楽しんでもらいたい。いい映画を見終わったあとのように。
そして、中表紙裏を見直すと本書に吟味され使われた用紙と印刷仕上げがひっそりと、だが確かな存在感を持って主張している。
「紙つなげ」に感動した本好きの諸氏には必読の本造り小説である。
自称本好きを名乗る自分も本書で初めて紹介された本作りの人々の世界に今まで何を読んでいたのだ?と自省してしまった。
フィクションではあるけど綿密な取材とリアリティによる臨場感。
読んでいる本をしみじみと愛おしく触れたくなる。
本好きには必読の課題図書なのである。
JAGAE ジャガエ 織田信長伝奇行 夢枕獏
蛇替え の意味 織田信長でこの言葉は繋がる読者は少なくないだろう だが ファンにとっては釈然としない、というかやや欲求不満気味の読後感かもしれない
物語は織田信長と加藤弾蔵の二人が二本のレールとなって戦国という時代を読者と作品世界の住人を導いてゆくものだが 蛇替えは導入の一章のみ 戦闘シーンも無く ひたすら先進性と合理主義のかたまり信長と妖怪じみた術師弾蔵の友情と殺し合いのやり取りが積まれてゆく
おもしろいのに この本に書かれてることの大半はすでに獏さんや他の人がどこかで書いたり描いたりしているように感じてしまって困った。
もしかして獏もそう思っているかもしれぬな
くひひひ
だからもう一冊 帰蝶の孕んだ腹を裂く信長の小編を書けば良いな
それは誰も読んでないでな
それを能でも絵本でもアニメにでもすると良い
腹を割いて出てきた赤児が段蔵の声で喋ったりするとなお良いな
くかかかか。
最終章はお約束通り本能寺であり敦盛である
人間五十年 この下りは過去沢山の役者がドラマで演じて来たが中途半端に器用な信長役が多く、この夢枕獏のような物語を読めば読むほどそれらの違和感が鼻につき馴染めない。
小野的には、過去見た中で1番の出来は渡辺謙の信長だ。
画面いっぱいに正面から渡辺謙がアップでカメラを睨むように人間五十年を謡う いや謡うというよりは腹の底から節も音階もあったもんじゃない怒号で吠える敦盛なのだった。
なるほど ! とその時、自分はこの役者の才能とここに至った研究に思い感心極まったことを覚えている。 役の解釈とはこういうものか!?と
その後、これを超える人間五十年は未だ巡り合っていない。