幻想小説周辺の 覚書

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読書レビュー ガラパゴス 相場英雄

2022-07-24 21:25:12 | 映画レビュー
ガラパゴス上 相場英雄 を読む!!ヽ(゚д゚ヽ)130
★★★★ 270頁
読書の醍醐味のひとつに、
自分が今まで知らなくて、知るべきだった情報がどんどんと
ダムの放流のように自分に雪崩れ込んで来るような興奮というか
アドレナリンが暴走する感覚を味わう、というものがあります。

この本は刑事モノです。
自殺とされて処理されていた一人の身元不明者が、巧妙に偽造した
殺人事件の被害者であることを見抜いたベテラン刑事が企業ぐるみ
の暗幕に迫ってゆくというストーリーです。
ですが読者に詰め寄るこの本の核は、事件の真相に迫るうちに
明らかになるってゆく派遣業界に依存する現代社会の闇にあります。

経済が不景気であろうが好景気であろうが、効率化の名のもとに
雇用形態の底辺として 使い捨てられ 搾取されていく 派遣の人達。
その立場になってしまえば破格の低賃金と過酷な労働条件を強いられ
正社員への道は絶望的に狭く、病気や職場での労災で怪我を負っても
補償されることはおろか雇用自体も簡単に雇い止めされてしまう。
綱渡りのような月々は不安とストレスの連続で貯金も結婚も
思い描くことさえできません。

そして少なくない人数が綱から一度落ちれば更にホームレスや生活困窮者に
転落してしまいます。そこから這い上がることは更にできません。

小説ということで多少の誇張があったとしても事実と実態の持つ重みは
読者にじわじわと詰め寄ります。
いつからか、いつのまにか僕らが育ち、学校を出て就職してきた世界とは
全く変質してしまった世界。ホラーよりも異常殺人よりも怖いです。
この世界はどうしてしまったのでしょうか?
救われる道は下巻では示されるのでしょうか?。。。(/≧◇≦\) 
残念ながら下巻の予約の順番が巡ってくるのは少し先のようです。






映画レビュー オリオン座からの招待状

2022-07-24 21:21:55 | 映画レビュー
@映画の部屋 より@
[オリオン座からの招待状] 監督、三枝健起
そう言えば僕が初めて行った映画館も群馬県のオリオン座という名前の小さな映画館でした。そして今はなくなって駐車場になってしまっています。今以上に映画を見たり上映したりすることは特別なことでした。
宮沢りえさんが宇崎竜童さんと前半で相思相愛のいい感じの夫婦を演じてます。

ドラマもわざとらしい映画的な盛り上がりを控えて最後まで市井の人達を丁寧に丁寧にささやかなしあわせと、暮らすことのしんどさのようなものを、上手~く画面にまとめてます。
最近のレビューの作品はパソコンのドライブで観賞してるのですが、ちょっとしたセリフや表情、所作など何度も繰り返しみたくなるような良い出来でした。
監督、三枝健起
出演、宮沢りえ、加瀬亮、宇崎竜童、原田芳雄、中原ひとみ
子役、小清水一揮、工藤あかり








読書レビュー 木下昌輝 絵金闇を塗る

2022-07-24 21:17:17 | 書評 読書忘備録
「絵金闇を塗る」 木下昌輝 327頁
丁度先週末、七月の三週目は土佐の赤岡町では絵金祭りだったのですね。
ギャラリーフェイクで一躍有名になった絵金祭り。

小さな南の漁師町の真っ直ぐな通り、夜が更けるとどの家も明かりを消し百目蝋燭の火だけが並んでいる。
揺らめく蝋燭の灯りに照らし出されるのは各家の軒先に並べられた極彩色の血みどろの芝居絵。
血走った眼、見栄を切った異様な立ち姿、乱れる黒髪、
そして絵金の血赤と呼ばれる水銀朱で彩られた鮮血と業火。

闇夜だからこそ揺らめく蝋燭の火に生命を得たように蠢く残酷絵、無惨絵の数々。
今年の絵金まつりは豪雨災害の後の熱帯夜と湿気を得て、更に妖艶、凄壮なものであったことだろう。
いつかは行かねばならぬ私の夢の祭りの一つである。

そして、その絵師、絵金を題にあの木下昌輝が連作短篇を書いた。
時は幕末の土佐、江戸、大阪、そして土佐、更に赤岡。
絵金が絵金と成る前の幼少時代から随時トピックを追って語られる。
だが物語は絵金の成長物語というよりは、初めから妖異なまでに卓越した絵師である絵金が、その絵が動乱の幕末の時代の人物たちの運命の引き金となってゆく様相を描いている。
主役は絵金の絵であり、それに踊る男たちなのだった。






八代目團十郎を感応させ、岡田以蔵を人斬りに狂わせ、
武市半平太も坂本龍馬も絵金の絵に触発されて己の運命の役どころを取り憑かれたように演じてゆく。
以前より絵金を知る者も、この物語で絵金を知った者も
この登場人物たちのように読後に己の内の何者かに出逢い
何者かに変曜するかもしれない。

謎の絵師を謎のままに留めながら読者にこのように傷跡を刻むとは、流石は宇喜多サーガの語り部、我が命名の木下サーカス団の団長である。(笑)

最後に嬉しいお得情報をお知らせしよう。
現在書店では、小説すばる8月号の企画に、あのジョジョの奇妙な冒険の荒木飛呂彦と木下昌輝の豪華対談が10ページに渡って掲載されている。
同じ絵師として荒木飛呂彦が木下の絵金を読んでどのように対抗心を燃やし、こだわりに共感し、製作者ならでは作品見処のツボなどをノリノリで語っていた。
更には岸辺露伴と絵金がスタンド能力で邂逅するエピソードを着想するなど、両者のファンである自分にとってはまさに垂涎の、オイシイネタ満載の対談であった。
時期を逸することなく本書と対談、この二つの夏の課題は早々に片付けることをお奨めする。