幻想小説周辺の 覚書

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読書レビュー 世界の果てのこどもたち 中脇初枝

2022-07-13 15:42:00 | 書評 読書忘備録
世界の果てのこどもたち 中脇初枝 読了です381頁
★★★★★ 126
途中の場面の敗戦後の満州、中国で日本人達が受ける酷しい運命の仕打ち。
戦争が、とか軍隊が、とか何かに悪いことの根源を預けることが憚られるほど読んでいて辛い。

そしてそれに堪えて読み続けると、苛酷な境遇の中に差す僅かな光明、人間性の辛うじての救済のようなものに励まされます。

中脇さんはたぶんこの本が上手く書けた、とか時分の言いたかったことを全部ここに注げた、とは思ってもいないことだと思います。

読み方によれば先の戦争批判や平和賛美、さらには憲法や自衛隊にまで論議の火種になりかねない内容なのに、そしてこの内容を敢えて書かねばならなかった中脇さんにとっても書くことは辛かったでしょう。

伝え方書き方については「自分はもっと違う形で伝えたかったのに、こんな風にしか表現できないっ」と悶えている作家の姿が読了後の今では見えてきました。
でもだからこそ読者には作者の書きたくて書ききれない想いの断片が物語の小さなエピソードや登場人物達の語る台詞を通じて共感できているような気がします。




反対とか賛成とかを越えたところに存在する何かしらの尊いもの。
辛さや理不尽な不幸が今も世界のどこかに存在していること。
そしてそこに今も現実にいるはずのこの物語に出てきたようなこどもたち。
この物語を通じて彼女達に想いを寄せて欲しい。。。。
それが中脇さんが書ききれずに伝えたかった書題の意味なのだろうと僕は思いました。

多くの大人達とこどもたちに読んで欲しい本です。
ですが、表面的な恣意的な面を捉えて課題図書や教材的にこの本が一部の思想組織の手によりおかしな扱いや道具になることは僕は最も望まないことです。
本当に本の気持ちがわかるひとに真剣に大切に読み継がれていって欲しい、そんな遺すべき一冊になる本だと思いました。




読書レビュー 川崎秋子 肉弾

2022-07-13 15:37:00 | 書評 読書忘備録
「肉弾」 河崎秋子  256頁
失礼ながら初読みの河崎さん、しかしながら一気読みの自分の心境は極めて満ち足りた満腹感と疲労感であった。まるで超人気の焼肉屋さんで、しかも上ホルモンの大皿をわしわしとお腹はち切れるくらい食べ尽くした時のようである。
野生、というか本能とか欲望といった種火が胃の中に拡がって燃え盛り、真夏のじとじとした大気や汗でさえも心地よく誤感してしまっている。連日の猛暑に倦怠気味の諸氏には激辛香辛料のように効くに違いない。






前半1/3辺りは無気力なニートの男子とその子に反してワイルドで自己中心的な父親の関係性が描写される。建設会社をワンマン経営し、母親が3人も代わりしかもその3人目も家を出てしまっている。長男は高校駅伝で膝を故障して以来、無気力に人間関係にも家庭にも無関心になり引き込もってばかり。
前向きなきっかけに成ればと父親は強引に猟銃免許の取得を長男に勧め、二人で北海道に鹿射ち猟に出掛けた。
淡々、乾々としながら欝屈としたストーリーは途中一気に奈落に突き落とされる。
怠惰な日常から血と泥の非日常へ、
父親の独善的な思い付きから自然保護区の中の人喰い熊を射ちに入り込み、一瞬のうちに二人は熊の襲撃に遭ってしまう。

その先の熊嵐的な野生動物のテラーと主人公のニートからケンシロウへの覚醒も、冷静に思い返せば漫画的、戯作的と気づくものの読んでいる最中は作者の筆力に振り回されっぱなしでそんな暇などありはしない。電車の中であろうが食事中であろうが一気にこの物語世界のゴールまで走り足掻いていただきたい。きっと僕のように無性にホルモン焼が食べたくなっているはずだ。(*・x・)ノ~~~♪(*・x・)ノ~~~♪(*・x・)ノ~~~♪

安倍さんへの麻生さんの弔辞 全文

2022-07-13 08:23:00 | 日記
自民党の麻生副総裁が12日の安倍晋三・元首相の葬儀で、友人代表として述べた弔辞の詳しい内容は出席者によると、
以下の通り。
安倍先生、今日はどういう言葉を申し上げればよいのか、何も見つけられないまま、この日を迎えてしまいました。
参院選の街頭遊説のさなかに凶弾に倒れた。いくら何でもそれはなかろう。
この事態は私にとって、到底受け入れられるものではありませんでした。
そしてまた、多くの国民もやり場のない怒りや悲しみに暮れております。
誰もがどうお悔やみを申し上げればよいのか、その言葉すら知りません。

ただただ、ご冥福(めいふく)をお祈りするばかりであります。
振り返りますと、先生と私は随分長い時間、お付き合いをさせて頂いたことになります。
時に官房副長官と政調会長、時に総理と幹事長、時に総理と副総理として、先生とは政策、また政局において様々な課題に取り組んで参りました。
そこにありましたのは、先生との信頼関係。
いかなる局面においても、日本という国、及び国益を最優先する信念、先生と私をつなぐ一番の絆であることを確信しております。

 少々、かっこよく言い過ぎたのかも知れません。
普段はお酒を酌み交わし、ゴルフ場で冗談を言いながら回る。
むしろ、そんないつもの光景の、そこにあった安倍先生の笑顔が目を閉じれば浮かんでまいります。

総理としてのご功績は今更私が申し上げるまでもなく、多くの方々の知るところであります。
内政はもちろんのこと、外交において、間違いなく、戦後の日本が生んだ最も優れた政治家ではなかったか、そう確信するものであります。
戦後最長となられた在任期間を通じ、積極的な安倍外交は、あなたの持ち前のセンスと、守るべき一線は譲らない類まれなる胆力によって、各国の首脳からも一目置かれ、日本のプレゼンス、存在を飛躍的に高めたと確信しております。
 あなたが総理を退任された後も、ことあるごとに「安倍は何と言っている」と、各国首脳が漏らしたことに私は日本人として誇らしい気持ちを持ったものであります。

 世界が今、大きな変革の下に、各国が歩むべき王道を迷い、見失い、進むべき羅針盤を必要とする今この時に、あなたを失ってしまったことは日本という国家の大きな損失にほかならず、痛恨の極みであります。

 先生はこれから、(父親の)晋太郎先生の下に旅立たれますが、今まで成し遂げられたことを胸を張ってご報告をして頂ければと思います。
そして、(祖父の)岸信介先生も加われるでしょうが、政治談議に花を咲かせられるのではないかとも思っております。
ただ先生と苦楽を共にされて、最後まで一番近くで支えて来られた昭恵夫人、またご親族の皆様もどうかいつまでも温かく見守って頂ければと思います。
そのことをまた、家族ぐるみのお付き合いをさせて頂きました友人の一人として心からお願いを申し上げる次第であります。

まだまだ安倍先生に申し上げたいことがたくさんあるのですが、私もそのうちそちらに参りますので、その時はこれまで以上に冗談を言いながら、楽しく語り合えるのを楽しみにしております。
正直申し上げて、私の弔辞を安倍先生に話して頂くつもりでした。
無念です。

 令和4年7月12日 元内閣総理大臣 友人代表 麻生太郎