楽しみにしてたWowow放送
コクーン歌舞伎
「切られの与三」
瀬川如皐 作 「与話情浮名横櫛」より
木ノ下裕一 補綴
串田和美 演出・美術
与三郎 中村七之助
お富 中村梅枝
伊豆屋与五郎 中村萬太郎
下男忠兵衛・蝙蝠安 笹野高史
赤間源左衛門 真耶胡敬二
おつる 中村鶴松
小笹 中村歌女之丞
海松杭の松五郎 片岡亀蔵
和泉屋多左衛門・観音久次 中村扇雀
わけあって(放蕩の末に勘当された?)江戸を離れた与三郎は
木更津の地で
たまたますれ違った美しい女に一目ぼれ
元深川芸者のお富で
赤間源左衛門に囲われの身でありながら
2人はいい仲に・・・
ことはすぐにばれて
源左衛門とその子分たちに
与三郎は体中を切り刻まれ
お富は海に投げ捨てられてしまいます
全身傷だらけの変わり果てた姿で
無一文になった与三郎は
たまたま(また!)出会った悪党の蝙蝠安に上手くのせられて
傷だらけの顔で道行く人をおどろかせ
ゆすり、たかりの片棒をかつぎ
「切られの与三」と呼ばれるようになります
そんなある日
たかりにはいった和泉屋多左衛門の屋敷には
多左衛門に囲われの身になったお富がいて
まさかの再会!
お富のおかげでひどい目に合った与三郎は
しがねぇ情けが仇で~と
恨みつらみを吐いて
一応すごんでみせるものの
そこは惚れた弱み・・・
可愛くすねたりひがんだりする与三郎よりも
一枚も二枚も上手のお富と
あっさりもとさや!
実は
お富とは生き別れの兄だった多左衛門から
やり直すためのまとまったお金をもらっておきながら
無計画に使い切り
お金に困ったあげく
お富にそそのかされて
人殺しまでして・・・
とうとう島流し
島の苦しい生活で
思い出すのは楽しかった江戸の暮らし
なんとか島ぬけをして
恋しい江戸に戻ってみれば
時が流れたせいなのか
与三郎自身が変わってしまったからなのか
町の様子が一変して見えます・・・
現実なのか幻なのかわからないまま
生家(実はもらい子ですが)に帰ると
じいやの忠兵衛は温かく迎えてくれたものの
父親は会ってもくれず
屋敷の前で
追い返されてしまいます
行くあてのない与三郎は
落ちぶれ果てた赤間源左衛門と出くわして
ばっさり切り捨てると
お富と暮らした屋敷へ向かいます
訊ねてみると
こともあろうか
与三郎と同じ島に流されながら
恩赦で自由の身になって江戸に舞い戻った久次と
夫婦になっています
お富には
目の前に現れた男に身を寄せて生きるすべがあって
与三郎のことは愛してはいたんだろうけど
いなくなったところでたいして困らない(笑)
はかなげで楚々と見えて
自分の幸せのためなら
他人をそそのかして
ひとを躊躇なく殺してしまうような女
梅枝さんのお富には
悪い女なんだけど
可愛らしさがあって
情の深さがあって
母性があって
いっぽうでは
冷酷さもあって
残忍さもあって
計算高くて
一筋縄ではいかない魔性の女の
とらえどころのない色香がありました
お坊ちゃま育ち
甘えん坊で世間知らず
情に流されやすい与三郎が
お富に惚れたのはムリもなく
それがきっかけで転落人生を歩んでしまうわけですが
最後
お富は久次に言われるがまま裏切って
与三郎を裏切って殺そうと迄します
はーーー
可哀そうすぎる(涙)
ところが!
お富に与三郎を殺せと言っておきながら
久次はいきなり自分の腹を刺して
自分の血と、ある薬を一緒に飲めば
体の傷がきれいに消えて
人生をやり直せると告げます
えーーー?!
わけがわからないけど
まさかのハッピーエンド?!
かと思いきや
与三郎は
これまでの人生をなかったことにしたくないと
その申し出をあっさり断ってしまいます
えーーー?!
ひとまかせ流されるままに見えた与三郎のこたえが
意外だったけれど
胸がジーンと熱くなりました
いつのまにか悪事に手を染めて
人殺しまで犯したけれど
運命のいたずらで歯車が狂っただけで
心根は腐ってなかったし
まっとうな心が残ってるはず
と
思わずかばいたくなる魅力が
与三郎にはありました
大捕り物の末
追手をかわして
たどりついた原っぱで
ひとり空を見上げながら
「しがねぇ恋の情けが仇(あだ)
よくまぁお主ゃあ達者でいたなぁ」
というセリフには
たまらず涙、涙でした
人生をやり直すよりも
罪を犯して
追われの身になり
走りに走って
なんとか逃げ延びながらでも
放蕩三昧の人生を全うしたいなんて
どうかしてるけれど
与三郎の道行に
救いが待っていてほしいと
願わずにはいられませんでした
七之助さんの与三郎
繊細そうな見目麗しい面立ちで
文句のつけようがない優男
頼りなげで母性本能をくすぐり
弱弱しいのかと思ったら
意外とあっけらかんとしていたり
打たれ強いしなやかさを備えていたり
その時々でムードや声色がガラリと変わって
最初から最後まで
ほんとに素敵でした
美しい見得が
めちゃくちゃよかった!
じわじわーっと心に響くストーリーに
JAZZがよく合って
大好きなお芝居でした
七之助さん出演の
南座新開場記念 九月花形歌舞伎
「東海道四谷怪談」
チケットぴあプレリザーブ
当たりますように!