そして、ひときわ大きな歓声があがったのが大トリを飾った羽生さん。昨夏にプロへ転向し、2年ぶりにこの舞台に帰ってきた羽生は毎日異なるプログラムでファンを驚かせた。公演初日の3月30日は『オペラ座の怪人』。2014-2015シーズンのフリーで演じ、羽生さんにとっては苦しい経験がよみがえるプログラム。それだけに思い入れも強い。「中国杯での衝突の事故や、病気やけがに苦しんだシーズンのプログラムだったので長い期間滑らないと決めて封印してきた。封印して以来、先日(2月26日)の東京ドーム公演で初めて滑って、このオペラ座の怪人をもっと完成させて、体力のある状態でみなさんに届けたいと思って滑ることにした」とこの曲を選んだ理由を明かした。
翌日は、真っ赤なサテンのシャツに青のネクタイを身にまとい、Adoの『阿修羅ちゃん』を披露。アップテンポな音楽に合わせた巧みなステップと自ら振り付けたダンスを観客のすぐ目の前まで近づいて魅せる羽生に、割れんばかりの歓声が送られた。演技後、「音が聞こえなくなるくらいに歓声がすごかったので正直すごくうれしかったです」と頬を緩めた。
そして4月1日、大阪公演の最終日は『あの夏へ』。アニメ映画『千と千尋の神隠し』に出てくるキャラクターを思い起こさせる衣装と切なく心に響く音楽にのせて幻想的な世界に観客を引き込んだ。3つの異なるジャンルのプログラムを披露したことについて「違うプログラムも見たいという声を受けたいと思って3つ披露することにした。」と明かした羽生さん。観客やファンに寄り添い、最高のパフォーマンスを追求する羽生さんらしい理由だった。
奥州公演、横浜公演と続いていくスターズ・オン・アイス2023。「それぞれのプログラムに気持ちを込めてしっかり滑りたい。楽しんでいただけたら嬉しい」と笑顔を見せた。