(つづき)
この《クロイツェル》の第I楽章と、
《ピアノ・ソナタ“熱情”》の第I楽章とには、
類似性・相互関係が見え隠れして仕方がありません。
例えば、
提示部において、両者は
巨大なソナタ形式の様相を呈しています。
●第Iテーマに続き、
●今までと雰囲気の違った長調の第IIテーマが現れ、
さらには
●第IIIテーマと言っても過言ではないような
(普通のソナタ形式では第2テーマまでしかありません)
再び短調に戻った情熱的なパッセージが続いて
それから提示部が終わる形は、
両者に共通するものです。
長大な展開部では、
熱情は絶えることなく、
さらなる高みを目指します。
再現部は、
●《ピアノ・ソナタ“熱情”》においては、
低音に連打される低い「ド」の音が静かに・不気味に連打され、
不吉な予感とともに、冒頭のテーマが帰ってきます・・・
●《ヴァイオリン・ソナタ“クロイツェル”》においては、
展開部最後に、いったん「pp(ピアニシモ)」まで音量を落として、
幾度かに渡る停止(フェルマータ)を介して、
F-Dur(ヘ長調)という柔らかな響きに包まれ、
突如として、冒頭のテーマが打ち鳴らされます。
両者の持つ「再現部」というソナタ形式における
価値ある面白い部分は、方法は違えど、
強く精力的な様相を見て取ることができましょう。
さらに再現部の要所要所では、
提示部とは、微妙に形が違うことがあります。
これがまた、なんとも切なく、情熱的で、
いよいよ主調(“熱情”ならf-mollヘ短調、
“クロイツェル”ならa-mollイ短調)のまま
音楽が終息へと向かう予感が溢れてきます。
Coda(終結部)
●《ピアノ・ソナタ“熱情”》においては、
力強い「第IIIテーマ」に引き続き、長大なCodaが展開されます。
最後には「Piu Allegro(より速く)」となって登りつめ、
長いトレモロに導かれて、音楽は「ppp(ピアニシシモ)」まで
(これはベートーヴェンにとって珍しい強弱記号)
降りてゆきます・・・
さて、この長いトレモロに似た形は、
●《ヴァイオリン・ソナタ“クロイツェル”》においても
見受けることができます。これがまた、
“クロイツェル”と“熱情”の類似性を思わさられることを
禁じ得ません・・・
ヴァイオリンのトレモロを、
ピアノが引き続きうけおいます・・・そして
「Adagio」の静寂と静止・・・
しかし“クロイツェル”においては、
このまま静寂のうちに音楽は終わることなく、
再び始めのテンポ(Presto)に戻って
荒々しく「f」から「ff」の音量のうちに
決然と、その幕を閉じます。
―――――――――――――――――――――――――――
1803年前後のベートーヴェン32歳、
この時期における人間・作曲家ベートーヴェンの心情を
これら二つの作品はあらわに伝えてくれているのではないでしょうか。
一体この時期のベートーヴェンに
何があったというのでしょうか!?
研究の価値は、多大にあるでしょう。
作品番号と作曲年から見ても、
“クロイツェル”が“熱情”の前段階であって、
ゆえに、
《ピアノ・ソナタ》における「最高峰」の名が
冠されることもある“熱情”は、
この《ヴァイオリン・ソナタ“クロイツェル”》を通して
更なる発展を遂げている、と見ることもできましょうか
そうした意味において、
《ヴァイオリン・ソナタ“クロイツェル”》は、
《ピアノ・ソナタ “熱情”》の前身といっても、
過言ではないかもしれません。
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この記事に関するコメントやご連絡等ございましたら、
以下のアドレスまでメッセージをお送り下さい。
PianistSegawaGen@aol.com
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この《クロイツェル》の第I楽章と、
《ピアノ・ソナタ“熱情”》の第I楽章とには、
類似性・相互関係が見え隠れして仕方がありません。
例えば、
提示部において、両者は
巨大なソナタ形式の様相を呈しています。
●第Iテーマに続き、
●今までと雰囲気の違った長調の第IIテーマが現れ、
さらには
●第IIIテーマと言っても過言ではないような
(普通のソナタ形式では第2テーマまでしかありません)
再び短調に戻った情熱的なパッセージが続いて
それから提示部が終わる形は、
両者に共通するものです。
長大な展開部では、
熱情は絶えることなく、
さらなる高みを目指します。
再現部は、
●《ピアノ・ソナタ“熱情”》においては、
低音に連打される低い「ド」の音が静かに・不気味に連打され、
不吉な予感とともに、冒頭のテーマが帰ってきます・・・
●《ヴァイオリン・ソナタ“クロイツェル”》においては、
展開部最後に、いったん「pp(ピアニシモ)」まで音量を落として、
幾度かに渡る停止(フェルマータ)を介して、
F-Dur(ヘ長調)という柔らかな響きに包まれ、
突如として、冒頭のテーマが打ち鳴らされます。
両者の持つ「再現部」というソナタ形式における
価値ある面白い部分は、方法は違えど、
強く精力的な様相を見て取ることができましょう。
さらに再現部の要所要所では、
提示部とは、微妙に形が違うことがあります。
これがまた、なんとも切なく、情熱的で、
いよいよ主調(“熱情”ならf-mollヘ短調、
“クロイツェル”ならa-mollイ短調)のまま
音楽が終息へと向かう予感が溢れてきます。
Coda(終結部)
●《ピアノ・ソナタ“熱情”》においては、
力強い「第IIIテーマ」に引き続き、長大なCodaが展開されます。
最後には「Piu Allegro(より速く)」となって登りつめ、
長いトレモロに導かれて、音楽は「ppp(ピアニシシモ)」まで
(これはベートーヴェンにとって珍しい強弱記号)
降りてゆきます・・・
さて、この長いトレモロに似た形は、
●《ヴァイオリン・ソナタ“クロイツェル”》においても
見受けることができます。これがまた、
“クロイツェル”と“熱情”の類似性を思わさられることを
禁じ得ません・・・
ヴァイオリンのトレモロを、
ピアノが引き続きうけおいます・・・そして
「Adagio」の静寂と静止・・・
しかし“クロイツェル”においては、
このまま静寂のうちに音楽は終わることなく、
再び始めのテンポ(Presto)に戻って
荒々しく「f」から「ff」の音量のうちに
決然と、その幕を閉じます。
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1803年前後のベートーヴェン32歳、
この時期における人間・作曲家ベートーヴェンの心情を
これら二つの作品はあらわに伝えてくれているのではないでしょうか。
一体この時期のベートーヴェンに
何があったというのでしょうか!?
研究の価値は、多大にあるでしょう。
作品番号と作曲年から見ても、
“クロイツェル”が“熱情”の前段階であって、
ゆえに、
《ピアノ・ソナタ》における「最高峰」の名が
冠されることもある“熱情”は、
この《ヴァイオリン・ソナタ“クロイツェル”》を通して
更なる発展を遂げている、と見ることもできましょうか
そうした意味において、
《ヴァイオリン・ソナタ“クロイツェル”》は、
《ピアノ・ソナタ “熱情”》の前身といっても、
過言ではないかもしれません。
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