音楽家ピアニスト瀬川玄「ひたすら音楽」

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◆ショパンの和声 《マズルカop.17-4》

2006年11月09日 | ショパン Frederic Chopin
ショパンの音楽について、
その当時、彼が名を成し始めたばかりのころ、彼の音楽が
「斬新な、これまでにない和声法に基づき、
賛否両論が展開された」そうです。

ところが、この「斬新で、これまでにない和声法」??
自分にとって、これがいまいち納得できなかった・・・のです。

なぜなら、
ショパンの音楽、彼が幼少のころから触れてきたという
J.S.バッハ、モーツァルトなどの実に自然な
「S-D-T(サブドミナント、ドミナント、トニカ)」
の奥義(!?)に即した美しい和声進行を
ショパンの音楽にも見出せると思われるからです。

例えば、ショパンの名をとどろかせるに多いに貢献した
彼の初期の作といえましょう《コンチェルト》など、
無数の煌びやかな音達の大元は、実に規則正しい和声進行に
のっとっている耳に心地よい、名曲の一つとして、
今日でも愉しまれている音楽だと思います。

「規則正しい和声進行」それは
論理先行の味気ないものではなく、
大自然の原理とも結びつく究極的な美しさそのものに
限りなく近いものと、今の自分は信じております。


ところが、
ショパンの特異な和声法。
そのひとつと思われる事例に出くわすことが出来ました。

《マズルカop.17-4》

「小さなユダヤ人」という名で、すでにショパンの少年期に
着想されていたというこの曲なのですが、
一体、何調の曲なのでしょうか?

譜例は、この曲の冒頭四小節、「序奏」に当たると思われる部分ですが、
ここだけでは、この曲が一体何調なのかは見当つかないでしょう。

臨時記号は無し。ということは普通に考えて、
C-Dur(ハ長調)か
a-moll(イ短調)、
あるいは頭をひねるとドリア調!?と考えられなくも
ないのでしょうが、(さすがにそれはここでは当てはまらないか)

冒頭四小節の和音達は、最終的に「a c1 f1(ラ ド ファ)」の和音に
終結するようです。これは「F-Dur」の響き・・・

既存の和声法では解決できなさそう、
「????」が行き交います。これが、
19世紀当時の人々、そして今日の我々をも惑わせる、
ショパンの斬新な和声法のひとつということになるのでしょうか。

この曲は、まぎれもないa-moll(イ短調)の曲のようです。
それは、曲が進むにつれて明白に成ります。この記事の最後に
Codaから曲の終結に向けての譜例を載せますが、
それを見れば、音楽がa-mollであることが分かりましょう。

そしてそして・・・
ショパンの若き天才は、この曲冒頭の
あの和声感の薄い浮世離れしてしまったとも感じられる
あの序奏でもって、曲を閉じようとします。(楽譜下段、
「Perdendosi」は「消えゆく様に」という意味のショパンの指示)





音楽は夢の彼方へ、幽玄の世界へと向けて浮遊していくかのよう
ショパンは、二度と帰らぬあの故郷を夢見たのでしょうか




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