コロナのせいで、外出は必要最小限に控えているため、家にいるときはもっぱら
テレビか読書だ。以前兼好法師歌集の話をしたが、現代語訳や解説が無かったため、
いろいろ探していたら、笠間書院からコレクション日本歌人選の一冊に兼好法師を
見つけた。解説が丁寧で良い本だが、いかんせん歌が50首しかないのが残念だ。
兼好法師歌集は300首弱しかないので、できれば全首の解説が読みたかったが、
このシリーズは誰の歌も50首限定で、コンパクトにまとめるという趣旨らしい。
兼好といえば誰しも徒然草を思い出す。現代人にも通ずる合理的で冷静な思考
のせいだと思うが、彼にとっては「つれづれ」に書いたものにすぎない。二条派
に属し、和歌四天王と呼ばれた兼好は、和歌に生きがいを求めていたのは事実だと
思われる。にもかかわらず評価が低いのは、時代状況が悪かったからだろう。
和歌史上では京極派のほうが評価が高いが、兼好は晩年京極派の作った風雅和歌集
に一首入首している。冷泉派にも出入りしていたようで、和歌の派閥にかかわらず
どん欲に歌と取り組んでいたことがわかる。
この本の帯に山崎敏夫氏の評「兼好の歌はすべて非常に巧緻である」とあるが、
悪く言えば手が込んでいて分かりにくいということでもあり、それが不評の一端
でもあろう。いずれにせよ、藤原定家の時代に頂点に達した和歌は政治とともに
落ちぶれていったので、そういう時代に生まれた兼好は不幸だったと言うしかない。
もっとも、兼好は不幸とは思っていなかっただろうが。