二泊三日の自宅外泊はあっという間に終わりました。
外泊二日目、初日付き添った姉から聞いた言葉は意外なものでした。
「病院に戻ろうか迷ってるみたい…」その理由は、ある程度のことは自分で出来ると思っていたのが現実は自力歩行どころか寝床から起き上がることもできなくなっていて(病院のベットなら手すりがあるから出来る)狭い家なのにトイレにもひとりで行けないことに自信をなくしてしまったからのようでした。病院にいれば先生や看護師さんがすぐ来てくれるのが家ではそうもいかないし不安にもなったようです。
でも、家にいたいという気持ちはすごくある母。出発前には「なるべく長く滞在したい。早く行ってぎりぎりまで家にいる」と言っていたのです。私たち子供にも予想以上に負担をかけることを思って悩んでしまったのでしょう。
せっかく家に戻ったんだし、私も頑張るから。母さんが病院に戻りたいって言えばすぐに病院に連れていくからさ、となだめてやっと思い止まりました。
付き添いですることと言えば、トイレの介助、ごはんの支度、足のマッサージなどでしたが、結構母が頻繁に呼んでくれたので、それなりに役に立てたかな?
自己満足かもわからないけど、私も実家に泊まって母だけのことを考え母に尽くせる時間が持ててよかったと思います。
実は…私たち子供も母の状態をもう少し楽観視してました。
病院のリハビリ見てるとつかまるとこさえあればひとりで歩けると思ってました。
でも、足は上げることもできません。トイレに行くときは後ろから両手で体を安定するように押さえないと立っていることができないようです。
とにかく腕は骨と皮だけだし、なのに足は不自然にむくんで冷たい。そしてお腹はパンパンに膨らんでます…末期ガンの人はみんな同じなのでしょうか…?
本人が一番辛いことですが、家族にも辛いことです。
でも、悲しみに浸っていられない状況です。刻々と変わる状況を受け止めて母の時間を第一に前に進むしかない。
病院に戻った母は、なんだかホッとしたようでした。
自宅に戻って現実を突きつけられて辛い外泊になってしまったかも知れません。
病院に戻る少し前、写真を探してと言う。
見つけて渡すと、一枚の写真を見せて、「万が一のときは、この写真を使って」と。
それは、20年前くらい前に友達とワイングラスを持って乾杯してる飛びきり笑顔の写真でした。
「わかった。でも、少し若すぎない?」と笑ったら「でも、この写真がいいの。いい写真でしょ」と。「そうだね…そうだね…!」と言うのが精一杯でした。