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マグネットについて 2

2010年06月26日 23時59分12秒 | オーディオ


こんばんは。今日はマグネットの続編ですが、やはり先にスピーカーの磁気回路についてちょっと説明をしておいた方が後の話が分かりやすいかと思いますので、予定を変えて磁気回路について簡単にお話させていただきます。

スピーカーユニットの中でその力の根源となる磁気回路は、マグネットと鉄などの磁性材から構成されますが、上の図のようにマグネットの位置によって、外磁型と内磁型に分類されます。現在市販のユニットの多くはマグネットが外にある外磁型を採用していますが、その最大の理由は安価で比較的磁束密度がかせげるフェライトマグネットに適しているためです。何故外磁型がフェライト系に適しているかというと、外磁型は図を見ても分かるようにマグネットの外径を大きくすることでその断面積を簡単に大きくすることが可能で、Brの低いフェライトを使うために適しているのです。反面、外磁型はマグネットが外部に露出しているため磁気漏洩が大きく、ブラウン管TVなどに対してはそのまま使うことには問題があります。そのため、ブラウン管TV用に使うためには底面に逆着磁したキャンセルマグネットを付けたり、さらに磁気回路全体を磁性材のカバーで覆う防磁型磁気回路を採用したりします。でも最近はTVの主流が磁気の影響を受けない液晶などの薄型TVに変わりつつあるので、この防磁型というのもあまり必然性が少なくなってきたというのも事実です。ちなみに、この防磁型は外部に漏洩していた磁束を効率的に使える(つまり磁束密度が増える)という本質的なメリットもあり、TV等への対応以外で磁束密度アップという目的で採用されることもあります。PARC Audioでも8cmウッドコーン(DCU-F101W)や10cmウッドコーン(DCU-F121W)等でこのタイプの磁気回路を採用しています。

一方内磁型の良さはマグネットが内部に配置されているため、磁気漏洩がないことですが、従来から音質面でもその良さが言われています。これに関しては、私も過去にいろいろと磁気回路の比較試聴などをやり、内磁型の音質の良さについて実感をしています。その理由については、磁気漏洩が無いためネットワーク等への影響が無い、磁気回路の外径が比較的小さく、また形状が音響的(アコースティック)にスムースな形状のためユニット背面のエアーフローに対して有利などがありますが、私見としてアルニコマグネット自身の音色の良さもあるのではないかと感じています。このマグネットの音色ということはなかなか技術的に説明し難いのですが、実際にいろいろなサンプルを比較試聴しての率直な印象なのでご容赦ください。

また明らかに外磁型と違う点として、アンプから見た時ボイスコイルのインダクタンスがボイスコイルの位置によってあまり変化しないということがあります。これは内磁型でなおかつマグネット外径がボイスコイル径よりも小さい時に限られますが、図で見ても分かるようにボイスコイルの内部にある鉄材の量がボイスコイルの位置によって変化しないことが要因です。ご存知のようにコイルのインダクタンスはそのコア材の透磁率に比例し、ボイスコイルのインダクタンスもその芯材にあたるボイス内部の部材の影響を大きく受けます。ここでポール材の鉄は透磁率が高く影響が大きいのですが、アルニコの主成分であるアルミ、ニッケル、こコバルトはいずれも鉄に比べれば圧倒的に小さく、影響は非常に少ないのです。ちょっと分かり難いかも知れませんが、早い話が外磁型のユニットはスピーカーが前後に振動する度に鉄芯の量が常に変化する鉄芯コイルのようなものと考えてください。これはアンプから見ると非常にいやらしい負荷となるのは言うまでもありません。ただこのことは意外にあまり語られていないような気がします。ちなみに以前ソニーミュージックでのスピーカーの講習会で、実際にフェライト(外磁型)とアルニコ(内磁型)の磁気回路にボイスコイルを出し入れしてその時のコイルのインダクタンス変化を実測するというデモをやりましたが、非常に直感的でその違いに参加者はかなり驚いていましたね。それと内磁型の欠点としては、やはり部品コストが高いということです。これはフェライトに比べてアルニコが高いということもありますが、内磁型で必須のつぼヨークもウーファーなどで使われる大型のものは生産数量が少ないことも影響してかなり高価なので、一部の高級モデルしか最近は見られなくなりました。


 

 


磁気回路については構造や材質など面白い内容が他にもあるのですが、それについてはまた次の機会にするとして、次回は各マグネットについて話をしたいと思います。それにしてもこの手の話を出来るだけ分かりやすく、なおかつ正確に書くというのは結構疲れますね。本当は今日はB-Hカーブについても書こうと思っていたのですが、WEBで実際の例として転用できる適当なデータがなかなか見つからず、今日はこの辺にしたいと思います。(もうちょっと書いたほうが良かったかなぁ・・・・)

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10 コメント

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分かりません (JUN)
2010-06-27 01:58:16
磁束は両端に集まることはアルニコもフェライト同じだと思うのですが、なぜアルニコだけ磁力の追従(効率)がいい内磁型が可能なのか?
よく分かりません。お願いします。そしてお願いですが、次回は減磁の経年変化のお話を。
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Unknown (kasiwaya)
2010-06-27 04:26:10
こんばんは

お察しの通りですが100%バッティングしませんのでどうぞ趣味人として扱ってやってください

鉄心変化、気にはなるもののやはり現実は外磁が一般的ですね。昔、歪スペックに非常に厳しいユニットを手がけた際、ポールをT型に削るのが劇的に効いたのですが、どうしてもコストが折り合わずダンパーの材質で何とか逃げ切ったことがありました。
この時は鉄心効果よりも磁束の上下対称性の問題でしたが、最近はそのような案件もなく寂しい限りです。

ところでウッドシリーズは5cmだけ内磁でしょうか?
ヨークの縦横比からすると磁石はNdだと思うのですが・・・それにしてはコイル径に対してヨークの直径が異様に大きいですし、カタログ上の磁石重量もかなり重いですね。ということは、大きなNdを押し込んで、上に向かってポールで絞ってあるということでしょうか。
だとするとコストも調達もさぞかし大変でしょうね。国内ライセンシーのNdってほんと「お高く」て・・・色んな意味で

ではまた続編を楽しみにしております。
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宜しくお願い致します。 (穴 明太)
2010-06-27 09:43:56
いつもお世話になります。
丁寧な講座で、準備や執筆で大変御苦労されているとお察し致します。
でも教科書は紋切型の記述に終わっていることが多いので、大変勉強になるし面白いです。
B-Hカーブについて、私もその後ウエブを見たのですが、とうとう理解できず諦めました。
脳のVCがオーバーヒートで焼け切れそうです。

一つ教えて頂きたいのですが、キャンセルマグネットのことなのですけれども、
大抵教科書にはメインの磁石の一周り小さい径の大きさの物を付けるように出ていますが、
装着すれば、全体の磁力は磁束密度はどの位アップするものなのでしょうか?
またキャンセルマグネットをどんどん大きくしていくと全体的な磁力や磁束はどう変化していくのでしょうか・

プロの方が専門的な質問をされる中で素人くさくてスミマセンです。宜しくお願い致します。
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Unknown (PARC)
2010-06-27 22:35:58
JUN様

>なぜアルニコだけ磁力の追従(効率)がいい内磁型が可能なのか?

これについては次回計算式も含めてちゃんと説明させていただきますので、少々お待ちください。

>次回は減磁の経年変化のお話を。

了解しました。BHカーブの件を話すと結構重い話になるので次回は厳しいかも知れませんが、このシリーズ中に必ず話をさせていただきます。
返信する
Unknown (PARC)
2010-06-27 22:57:12
kasiwaya様

>お察しの通りですが100%バッティングしませんのでどうぞ趣味人として扱ってやってください

了解しました。せまい業界ですので、どこかでお会いしたことがあるかも知れませんね。(笑)

>昔、歪スペックに非常に厳しいユニットを手がけた際、ポールをT型に削るのが劇的に効いたのですが、

これは2ndHDに対して効くのではと思いますが、懐かしいですね。そう言えば、昔はTポールのモデルは普通に流れていましたからね。

>ウッドシリーズは5cmだけ内磁でしょうか?

そうですね。やはり価格のことがあるので、どうしてもこのサイズでというような理由がないとなかなか積極的には使えないですね。
あ~そういえばコアキシャルのTWもネオジの内磁ですね。

>それにしてはコイル径に対してヨークの直径が異様に大きいですし、カタログ上の磁石重量もかなり重いですね。

ヨークサイズに関しては、標準品を選ぶしかなかったというのが正直なところです。まぁネオジの場合は高温減磁だけを考えておけばいいので小口径の設計は比較的楽ですね。

>国内ライセンシーのNdってほんと「お高く」て・・・色んな意味で

そうですね。ソニー時代は住友から直接連絡があり、社内でもライセンス品を必ず使うように案内が回っていました。でも最近は特許切れが出ているクラスもあるようで、これからは少しコストも下がるかも知れませんね。
返信する
Unknown (PARC)
2010-06-27 23:29:10
穴様

>丁寧な講座で、準備や執筆で大変御苦労されているとお察し致します。でも教科書は紋切型の記述に終わっていることが多いので、大変勉強になるし面白いです。

ありがとうございます。でも正直なところ、今回のテーマはやらなきゃよかったかな、とちょっと後悔しています。(笑)
久しぶりにこういう技術テーマを書くと、細かい数式など記憶があいまいになっている部分もあり、何十年ぶりかで新人のころ使った教科書をチェックしたりして、なんか大学時代のレポート提出している感じです。でも全くの素人の人に出来るだけ分かるように説明するためには、本当にポイントを捉えて上図に説明しないといけないので勉強にもなりますね。

>B-Hカーブについて、私もその後ウエブを見たのですが、とうとう理解できず諦めました。脳のVCがオーバーヒートで焼け切れそうです。


私も少しWEBでも調べてみましたが、マグネットそのものについては細かい表記はあるものの、説明が細かすぎてかえって分かり難く、またスピーカーとの関連ということでは殆ど情報がないようですね。次回は少し細かい数式なんかも出てきますが、何とか分かりやすく池上さんのようにうまく説明できればと思います。

>、キャンセルマグネットのことなのですけれども、大抵教科書にはメインの磁石の一周り小さい径の大きさの物を付けるように出ていますが、装着すれば、全体の磁力は磁束密度はどの位アップするものなのでしょうか?またキャンセルマグネットをどんどん大きくしていくと全体的な磁力や磁束はどう変化していくのでしょうか・

これはするどい質問ですね。実はキャンセルマグネットだけでは見た目ほど磁束は上がらないことが多いと思います。バックカバーを付けるとかなり効率は上がりますが、それでもマグネット2個分上がるかと言うとそんなことはないですね。むしろ音質面ではデッドマス的な効果もプラスされているように感じます。

ちなみにバックカバー無しだと効率がよくない理由には、キャンセルマグネットだけで着磁するとパーミアンスの関係で着磁が入りにくいということもあり、それを改善するためにプレートを付けて着磁するというようなレポートがM社から出ていたように記憶しています。あの当時は本当に細かい検討を各社がやっていましたね。
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Unknown (GX333+25)
2010-07-05 00:32:17
PARC 様

 アルニコ・内磁型というと、懐かしいDIATONE P-601のアルニコタイプのようなスタイルを思い起こしますが、Webを見ていたら、ビクターのウッドコーン最上位機種WD-500のウーファーがアルニコ内磁型を売りにしていますね。

 ただ、口径が14.5cmというのに、写真を見ると、むしろ奥行きの方がうんと長そうで、長いアルニコの棒磁石(?)を活かすためのこういう格好のヨークだと、なるほどコストもかかるだろうと思ったことです。

 まぁ、趣味の世界ですから、世の中には、オール・パーメンジュールで途方もない値段のフルレンジも存在します。一度聴いてみたいとは思いますが……素材だけがすべて、というのは少し寂しい感じがします。

 私なんぞが知って、別に役に立つわけでもないのですが、世の中を見回していたら、この連載、さながら素材の料理法入門という感じがしてきました。

 世の中には、金に糸目をつけず、どこまでも素材を追及して、当然それに相応の技量(残念ながら、技量が伴わない場合もありますが)とお値段でもてなすお料理もあれば、ごく普通に手に入る素材を上手に料理して、私なんかでも口に入れることのできるお値段でおいしくもてなしていただけるお店もあります。前者はもちろんのこと、私なんかは貧乏人のせいか、後者のようなお店の大将と少し親しくなって、耳学問でもいいから、そのノウハウを知りたいと思う方です。

 数式はまったく苦手ですが、どうかお手柔らか、かつまっとうな料理法をご披露されることを楽しみにしています。
返信する
毎回ありがとうございます (carriage driver)
2010-07-05 10:18:17
特に吸音材の使い方と磁気回路(磁石を含めて)のことについては、単に知識のストックとしてみても参考になる記述があまり多くないので単純にうれしいです。これまでは東京フェライトという磁石メーカーさんのHPに記述されている解説を読んでいたのですがいかんせん磁石単体での話が主体(メーカーですから当然ですし解説を記載していただけるだけで十分感謝しておりますが)ですので応用については依然として憶測に推測を重ねたような検討しかできませんでしたし。
ポールピースとインダクタンスのことなんかはまさにそれで、図に書けば一目瞭然なのに今までみたことがなかった点だったのでなるほどと思わされました。
今まではウーファの駆動力とBL積が関係していて、Bを大きくするのが難しければLなら(Bに比べれば)簡単だしストロークも大きく取れるのになんで製品にはないんだろうと単純に思っていたのですがなるほどこれではそう簡単に狙うべき性能にまとめられるわけがないですね。

>でも正直なところ、今回のテーマはやらなきゃよかったかな、とちょっと後悔しています。(笑)
まあそうおっしゃらずにぜひともお願い申し上げます(笑)
いっそ何年かは掛かってもこうした技術関連の記載をまとめて出版なさってはいかがでしょう? かなーり売れると思うのですが。
なにも多聞先生の本のような全体を網羅するような形でなくともクックブック的な技術情報のハンドブック的なものでも十分ではないかと。

とりあえず1万円以下なら迷わず買います(笑)
返信する
Unknown (PARC)
2010-07-07 01:14:22
GX333+25様

>ビクターのウッドコーン最上位機種WD-500のウーファーがアルニコ内磁型を売りにしていますね。

ビクターは私がいた当時からアルニコが大好きでしたね。私もそのことが少し影響されているのかも知れません。

>写真を見ると、むしろ奥行きの方がうんと長そうで、

これは今日のエントリーで説明しましたが、アルニコマグネットの特性上そのように使うしかないのです。

>世の中には、オール・パーメンジュールで途方もない値段のフルレンジも存在します。

私は、商品というものには必ず価格対効果ということが問われると考えています。高性能な素材を使えば磁気特性などの性能が上がるのは当然ですが、大事なことはそれだけのコストをかける価値が本当にあるかということだと思います。物量を投入すればOKなら、お金に余裕のあるメーカーがベストということになりますが、そんな単純な世界ではないと思います。

>数式はまったく苦手ですが、どうかお手柔らか、かつまっとうな料理法をご披露されることを楽しみにしています。

了解です。私も数式などは大の苦手なので、出来れば今回で勘弁してほしいところです。(笑)
返信する
Unknown (PARC)
2010-07-07 01:23:33
carriage driver様

>特に吸音材の使い方と磁気回路(磁石を含めて)のことについては、単に知識のストックとしてみても参考になる記述があまり多くないので単純にうれしいです

そう言っていただけると、苦労したかいがありますね。

>東京フェライトという磁石メーカーさんのHPに記述されている解説を読んでいたのですがいかんせん磁石単体での話が主体(メーカーですから当然ですし解説を記載していただけるだけで十分感謝しておりますが)ですので応用については依然として憶測に推測を重ねたような検討しかできませんでしたし。

確かにマグネットメーカーや販売店様のHPでかなり詳しく解説されているところがあるので、私も当初はわざわざ私が書かなくてもそのページを紹介すればいいかなぁとも思ったのですが、実際スピーカーということになると肝心の知りたい内容が書かれていなかったりするので、今回のブログが少しでもお役に立てれば幸いです。私もいざ書いてみると、忘れていた部分もあったりして、大変でしたが結構楽しかったりもします。

>Lなら(Bに比べれば)簡単だしストロークも大きく取れるのになんで製品にはないんだろうと

Lを大きくすると、BLは増えますが同時に重量も増えるので、単純にSPLが増えることにはならないのです。またインダクタンス分が増えることによる高域の減衰も考慮しなければいけません。

>いっそ何年かは掛かってもこうした技術関連の記載をまとめて出版なさってはいかがでしょう?

いや~それはだいぶ私には荷が重過ぎますね。(^^; この手の話が得意なエンジニアはもっと他に沢山いるように思いますが・・・・。まぁ私に出来る範囲でまったりと今後も少しずつ書いていければと思います。
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