さて今日は現在発売中のウッドコーンモデルについて、設計者本人の私がどう思っているかについて書いてみたいと思います。5モデル全てについて一度に書くのはちょっとしんどいので、先ずはフルレンジ3モデルについて書きます。メーカーは通常良いことしか書きませんが、私は完璧なスピーカーなんか無いと思っているので、正直に自分が感じている欠点についても書いてみようと思います。参考にしてみてください。
先ず一番小口径である8cmウッドコーンのDCU-F101W。
このモデルはスペックを見ていただいてもお分かりのように、8cmクラスの他社ユニットに比べるとかなり特異な存在となっています。特にF0が68Hzというのはこのクラスとしてはかなり異例で、82dBという低めなSPLと共に、このクラスで代表的なF社のユニットとは全く正反対のスペックになっています。正直なところ、今回の一連のモデルの中ではこのモデルだけはちょっとやりすぎたかなぁとも考えましたが、逆にそのスペックゆえのこのユニットの魅力もあるので、最終的に商品化を決断しました。
ではその魅力は何かということですが、やはりそれはこのクラスの口径では出色の低域特性です。ホームページでも紹介している2.4Lの小さなBOXでも十分に低音が出ます。私の考えるこのモデルの良さが最も出る時とは、比較的小さな音量でゆったりと音楽を聴くような時ではと感じています。
一般的にスピーカーは音量を下げていくと、低音が先に無くなってくることが多いのですが、このモデルは小音量でも十分低音が出ますので、例えば夜PCで作業をしながらのBGM再生とか、深夜あまり音量を上げられない時に音楽を楽しむというような使い方にはベストではと思います。もちろん、ウッドコーン自体の持つその音色の自然さや優しさが相乗効果として効いていることは言うまでもありません。
逆にスピーカーと対峙して大音量で音楽を楽しむといったような使い方には、正直なところベストではないのではと思います。SPLは他社比でも低いのでそのような使い方には、10cmや13cmの方が向いているのではと思います。
次は、10cmウッドコーンのDCU-F121W。
このモデルは、一言で言えばウッドコーンフルレンジ3兄弟の中では一番の優等生です。実際売れ行きも一連のモデルの中では一番人気で、現在もメーカー欠品となっている状態です。
最大の魅力はやはりそのバランスの良さで、10cmというサイズの中で低域と高域を絶妙のバランスでまとめられたと自負しています。SPLも86.5dBと、クラスとしては十分なレベルですし、特に欠点と言うのが見当たらないという印象を持っています。
おそらくこのモデルは今後もPARC Audioを代表するモデルの一つとなっていくと思いますし、私としても出来るだけロングランのモデルにしていきたいと考えています。さらに今後このモデルについてはスピーカーシステム(つまりBOX付の完成品)も出せたらいいなぁ、なんて漠然と考えたりもしています。
ただ量産仕様を決めるまでに一番試作数が多かったのもこのモデルでした。一番苦労したのは、バランスをうまく維持しながらSPLをいかに上げるかという点で、スタート当初は85dB弱でしたので、自分でも随分頑張ったかなぁと感じています。
実は90dBという隠し玉もあるのですが、そちらはさすがに現状のバランスそのままというわけにはいかず、良くも悪くも別物になってしまったので、今回の商品化には採用しませんでした。こちらは、今後ちょっと別の形での登場があるかも知れません・・・・・。
最後は、フルレンジでは最大径の13cmウッドコーンのDCU-F131W。
このモデルは、フルレンジ3モデルの中のトップモデルとして、ボイスコイルに高品位なリボン線を採用し、フレームもダンパー下部にエアーホールのあるタイプを採用したり、結構自分としても頑張ったモデルでした。
スペック的な特徴としては、13cmとしては他社比で異常な程低域が伸びていることで、このことはスピーカーのシミュレーションソフトspedのホームページでも紹介されています。裏話ですが、ある方からシミュレーションで見るとあまりに低域が出るので、このモデルのTS定数は間違っていませんか?と言われたこともありました。
でも正直な事を言ってしまえば、この低域特性は結果論であって、最初から**まで低域を伸ばすぞ~なんていうような目標を設定して開発を進めていたわけではないのです。あくまで最大の目標は、ウッドコーンフルレンジのハイエンドモデルとして現状実現できる最善のバランスと高品位な音を出すことでした。結構10cmの仕上がりが良くなったので、このモデルのハードルは高かったですね。
では肝心の音はどうかと言えば、PARC Audioのサウンドポリシーをしっかりと実現できた本当に聴きやすく高品位なものにできたと自負しています。(ちょっと言いすぎかなぁ) 強いて欠点を言えば、若干(?)低域よりにいっちゃったかなぁとも思いますが、その魅力的で豊かな中低域を考慮すれば自分としては十分OKではと考えています。
ユーザーの皆様からは、かなりウーファーよりとのコメントもいただいたりしてますが、同時に中低域の魅力や定位の良さも認めていただいているので、これはこれでいいかなぁと感じています。(keik様、勝手にリンクしてごめんなさい)
結論として、良くも悪くも今までのF社的なフルレンジモデルのバランスとは一番対極にあるモデルなので、是非一度皆様に体験していただければと切に願っています。
今回ウッドコーンを商品化してユーザーの皆様からいただいたコメントの中で多かったのが、「本当に聴き疲れしない音」ということと、「分解能や音像定位が抜群に良い」という2点でした。実は設計者としては、これらのコメントは非常にうれしい内容なのです。何故なら、この2つは基本的に相反する内容であり、両立させるのは本当に大変なんですよね。つまり、聴き疲れしない音を出そうとすると、耳に目立つ中高域を抑えるのが常套手段で、それをやると今度は分解能や音像定位等の情報量が落ちていく傾向になるのです。そのため、この2つを両立させるには本当に高い次元でバランスさせることが要求され、設計者の力量が試されます。この辺は、また別の機会にもう少し詳しく書いてみたいと思いますので、また楽しみにしていてください。では今日はこの辺で。
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自分は13cmしかいじってないのですが、小気味よく纏まった良いユニットだと思います。伸ばすところはどんどん伸ばして、割り切るところはスパッと割り切ると。これは、やはり経験が効いているのかなと思います。さんざんっぱら色々なことをやってこないと(笑)、こういう事は出来ない感じがします。
あと推測ですが初期モデルに関しては、自作方面の事をよく知らないというのも、コンセプト等の割り切りの良さにつながっているのかなとも思います。ずっとこういう方面にいたのなら、出てこない感じのユニット群に思えます。
今までに無いようなユニット群ですので、種をまいてもなかなか芽が出ないと感じることもあるでしょうが、辛抱強くやっていただければと思います。個人的には、多少時間はかかるかもしれませんが、あちこちで面白い花が咲くのではと感じています。
コメントいつもありがとうございます。
確かに私はクラフトの世界は全くと言っていいほど知りませんので、今までのユニットに慣れているユーザーの皆さんにはちょっと戸惑われたかも知れませんね。メーカー勤務時代も、今までの常識に囚われるのを出来るだけ避けるようにしてましたから・・・。
でも長年の設計経験で言わせていただければ、量産設計というのはコスト、量産性、品質、性能、デザイン等その他いろいろな項目をあるところはスパッと割り切りながらメリハリをつけてまとめていかないと結局は中途半端な商品になってしまうとの持論があり、今後ともこの方針は続けていきたいと考えています。
性格的には決して辛抱強いタイプではないのですが、いろいろな面白い花が咲くのを楽しみに、何とか頑張っていきたいと思います。
今後ともよろしくお願いいたします。
先週DCU-F101Wを購入致しまして、箱をどうするかと言う事で御社の指定箱(4.6L)を借りに製作して聴いて見ました。
私は去年から自作箱の製作に嵌り、1年足らずで16㎝・1セット、10㎝・4セット、8㎝・5セット、13㎝・1セットを製作致しました。
その中で8㎝は5種類の設計を行い現在85K・AMG用と有る程度の音が出る様に成ったと自分で思っています。(全てバックロードです)
御社のDCU-F101Wを指定箱で聴いて確かにF社・AMGと可成りの違いが有ると言うのは一聴して分かりました、このブログにも書かれていますが能率が低いと言うのはこのユニットの音飛びの良いのがカバーしているので問題無いと思っています。(私の部12畳の部屋で)
巷で言われている中高音の艶やかな音は中々魅力的ですね、製作したバスレフは組んだままの無調整の状態なので音どうのこうの言うのは早いのですが、締まった低域が出せる様なバックロードを造ろうと思っています。
ホームページなどでスロート率などの良い値と言うのが書かれていますが、AMGもそうでしたが御社のユニットもその数値に当てはまらないと思っています。
この艶の有る音を殺さずに良い箱が出来る様に試行錯誤したいと思っています。
長文に成りましたが今後の良いユニットを出される事を期待しています。
DCU-F101Wのご購入ありがとうございました。
一年足らずで11モデルとは本当にすごい数の製作ですね。メーカーも真青です。(^^;
そのような沢山の製作品と比べても、PARC Audioの音を気に入っていただけたようで、本当に設計者冥利につきます。それにしてもF101Wで12畳とは驚きました。
バックロードに関しては、いろいろな方からの問い合わせやリクエストをいただき、自作ユーザーの中でのバックロードファンの多さには本当に驚いています。お使いのDCU-F101Wは残念ながらPARC Audioのモデルの中でもバックロードとは相性が悪い方向のため、今後余裕が出来れば8cmクラスでもバックロードの方向にふったモデルの開発もやらなければいけないかも知れませんね。
今後調整が進みましたら、またレポートしていただけると幸いです。今後ともよろしくお願いいたします。
言われる様に、ユニット自体が低域出ているので確かにバックロード向きでは無いと思いますが、スロート・音道の拡張率などで何とか成る様な気がしています。
85K用に設計したバックロードにAMGを入れると低域がやはり出過ぎてとても聴けなかったのですが、AMG用にスロート率・音道・空気室を変えて今は85Kより気に入っています。
DCU-F101W用に合う箱が出来れば間違いなくお気に入りのスピーカーに成る様に思っています。
頑張ってDCU-F101W用のバックロードの製作に掛かりますので、良いのが出来ましたらまたご報告致します。
DCU-F101W用のバックロード、楽しみに結果をお待ちしております。他のユーザーの皆様の参考にもなるかと思いますので、レポートよろしくお願いいたします。
では。
実は昨年秋葉へ買い物に行きまして、何とも言えないいい音に足がついつい止まってしまって店員さんと長話してしまいました。
その時鳴っていたのがこのウッドコーンスピーカで、まだ販売前でデモ用で配布されていた物だったのでしょう、私は真空管アンプの音にぞっこん惚れ込んでまして是非ともこのウッドコーンスピーカを真空管アンプで鳴らしたく思っておりました。
実は注文したDCU-F131Wが明後日届くと販売店から連絡がありまして到着を楽しみにしておるところであります、さてどう料理するか!?低域の50Hzあたりは持ち上げないで素直に落とそうかと考えてるところです。
結果出たら報告します。
コメントありがとうございました。
いやぁ、うちは町工場までもいってないので・・・(^^;
DCU-F131Wがお好みの音でありますよう、心から願っています。試聴後のレポート楽しみにしております。今後ともよろしくお願いいたします。
どちらも試聴用にハセヒロMM-151Sに入れてあるので上の店でF121Wを、1階でF131Wを聴き比べてみました。自分もMM-151Sに入れるつもりだったので何とも好条件な試聴です。
基本的にトレブリーなサウンドが好きで最近はALTEC CF404-8Aを入れてジャズを聴いていますが、折角ならとウーハー寄りと名高いF131Wに決め、151S用バッフル板も合わせて買ってきました。
自宅へ帰り着き早速バッフル板に取り付けて音出しを始めました。
おやおや・・エージングしてないSPは音が変だと言いますが、至極まともに綺麗な音が流れてきます。ユニットからもホーンからもベースやバスドラムが響いてくる。慣らしとしてCSのスターデジオのジャズをずっと聴いていますがエージングが進めば更に良くなるでしょうね。
いい買い物をしました。社長さん、有り難うございます。