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マグネットについて 5

2010年08月17日 23時51分03秒 | オーディオ

こんばんは。だいぶ更新が遅れてしまいましたが、今日はマグネットについての最終回です。ちょっと難解なこのシリーズもこれで完結ですので、ちょっとなじめないと言う方ももう少しだけご辛抱を。

前回まででマグネットの基本的な特性や減磁などについてお話しましたが、今日は各マグネットについて特徴をまとめてみたいと思います。

1)フェライトマグネット
 長所
*一般のスピーカーで使われているマグネットの中では一番価格が安く、最も多く使われているマグネット。
*パワー減磁に強く、高温特性に優れているので、大パワーユニットやウーファーには最適。
*錆に強いので、アウトドアや車等での環境には最適。

 短所
*低温特性が悪く、低温減磁を起こすことがあるので、車用や極端な低温環境での使用には注意が必要。
*磁束をかせぐには大きな外径が必要で、小口径で高磁束が必要な場合などではサイズの問題で使えないこともある。
*特性的に外磁型に向いており、内磁型での使用は不可能。
 そのため、防磁型として使用する場合はキャンセルマグネットやバックカバーを併用することとなる。
*一般的に、音質評価はアルニコに比べ高くない。電気抵抗が高いことが一因とも言われている。

2)ネオジムマグネット
 長所
*現存するマグネットの中で最強の磁気特性を誇る。
*特性的には外磁型での使用が効率的だが、Brも高いため内磁型での使用も可能。
 そのため、トゥイターや小口径ユニットなど、外径規制のあるユニットではこれしか使えない場合もある。
 高性能トゥイターでは定番のマグネットとなっている。

 短所
*高温特性が悪いのが最大の欠点で、高温減磁を起こす。
 そのため、大パワーウーファーや高温環境下での使用は非常に厳しい。
*高価な希土類が素材であることと、日立金属(旧住友特殊金属)の基本特許があるため、価格が高い。
*非常に錆びやすいので、防錆処理が不可欠。これもコスト高の要因。
*非常に強力な着磁パワーが必要なため、大口径マグネットを使うには強力な着磁機が必要。
 そのため他のマグネットのように逆磁界をかけて行う簡単な脱磁が出来ないため、高温脱磁を行う必要がある。

3)アルニコマグネット
 長所
*特性的に内磁型に向いており、音質的にも最も評価が高い。
 私見ではありますが、経験的には同じ内磁型でもネオジムよりも音質的に良いと思います。
*低温、高温ともに温度特性は非常に優れており、精度を要求される測定器等にも使用される。
*内磁型を使うことでフェライトよりも外径を抑えることができ、ウーファー等での背面のエアーフロー処理に有利。
 (これについては、内磁型でのネオジムも同じ)
*機械強度が強く、取り扱いが楽。
*大きな着磁パワーを必要としないので、小型の着磁機でも簡単に着磁が可能。

 短所
*パワー減磁に弱く、パーミアンスを高くする必要がある。
*大型のものは使用例が激減していることもあり、以前にも増して高コストとなっており、
 磁気回路全体としてはネオジム以上に高価なマグネットである。

4)サマリウムコバルト(サマコバ)
 長所
*ネオジムマグネットの次に強力なマグネットで、初期のウォークマン等にも使われた。
*ネオジムと同じ希土類系ですが、ネオジムよりも温度特性が大幅に安定しており、高温特性も良い。
*錆にも強く、この点でもネオジムよりも優れている。
*ネオジム同様にBrも高いため、内磁型での使用も可能。

 短所
*希土類が素材のため、非常に高価である。アルニコよりも更に高価。
*脆くて欠けやすいので、取り扱いには注意が必要。


以上簡単にまとめてみましたが、何とか全体のイメージをつかんでいただけたでしょうか。さて次回は少し気分を変えて、もう少し身近な話題を書いてみようと思います。では今日はこの辺で。


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18 コメント

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分かったような気が (JUN)
2010-08-18 23:29:14
マグネットについて、してきました。
いえ、ホントに浅い理解ですけれど・・
「サマリウムコバルト」マグネットは、カートリッジに使用されていたように思います。
このシリーズでははっきりとは触れられていなかったように思いますが、マグネットのタイプと使用されるサイズの間にも何らかの関係(適不適)があるのではありませんか?
返信する
Unknown (PARC)
2010-08-18 23:48:49
JUN様

>マグネットのタイプと使用されるサイズの間にも何らかの関係(適不適)があるのではありませんか?

はい、あります。正確に言えば、コストとの関連が大きいと思いますが。例えば、外径サイズ規制がなく、大きな磁束が必要な場合、大型フェライトを使うのが一般的で、ネオジムを使うのはコスト的にあまりメリットがありません。(超強力な着磁機も必要ですし)
逆に外径規制がある場合、コストが高くてもネオジムにしないと、フェライトでは必要な磁束が取れなかったりします。
アルニコはサイズというより、内磁型(特にウーファーやフルレンジなど)にこだわった場合に出番があると思いますね。
返信する
5cmウッドコーンSP (saito)
2010-08-19 13:40:53
parc audio さま

5回にわたって、マグネットの基礎講座を掲載いただき、ありがとうございました。文科系の私にとっても、ある程度理解でき、スピーカーに対する理解も深まったと思います。
さて、貴社の5cmウッドコーン入りのスピーカーシステムを某所でオーダーし、到着を待っております。フェライトの音の悪さ(生々しさが無い)が嫌になり、調べた結果、貴社の製品にたどり着きました。「マグネットについて」を読み、幾つか疑問が出てきました。
①ネオジムは高温で不可逆減磁するとのことですが、F071Wを使用する際、注意点はあるのでしょうか?たとえば夏場のフルパワー再生は避けるべきでしょうか?
②F071Wは外磁型と考えてよいでしょうか?
③個人的な印象ですが、総じてネオジムを使用したSPは、アルニコと同様、フェライトに対する音質上の優位性が感じられますが、いかがお考えでしょうか?

お忙しいところ恐縮ですが、簡単にお答えいただければと存じます。
返信する
Unknown (Sophie)
2010-08-19 22:08:56
今回の「マグネットについて」シリーズですが、1~4回目まではかなり気合を入れて拝読させて頂き、どんな感じで終了するのかと思いきや唐突に一般論で終わってしまった感
も・・・。
個人的にはもっと冨宅さんなりの方針、見解、思いなどを開陳して締めくくって頂きたかったと思います。
何だか苦言のようになってしまいましたけれど、これからも面白いお話を楽しみにしております。
返信する
Unknown (PARC)
2010-08-19 23:45:49
saito様

>文科系の私にとっても、ある程度理解でき、スピーカーに対する理解も深まったと思います。

少しでもお役に立てたようで何よりです。

>①ネオジムは高温で不可逆減磁するとのことですが、F071Wを使用する際、注意点はあるのでしょうか?たとえば夏場のフルパワー再生は避けるべきでしょうか?

厳密なテストをやったわけではありませんが、F071Wはもともと大パワーを入れるようなユニットではない(VC径が小さいのでパワーがもたない)ので、高温減磁が起こるような温度にマグネットがなることはないのではと考えます。

>②F071Wは外磁型と考えてよいでしょうか?

いえ、内磁型です。

>③個人的な印象ですが、総じてネオジムを使用したSPは、アルニコと同様、フェライトに対する音質上の優位性が感じられますが、いかがお考えでしょうか?

あくまで私見ではありますが、音質面でネオジムがフェライトに対して優位差があると感じたことはあまりないですね。ただ今回のように内磁型にすれば、その効果ははっきりとあると思います。マグネット自体の音質という点では、やはりアルニコがチャンピオンかと。サマコバは私自身使った経験が無いため、コメントはできません。
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Unknown (PARC)
2010-08-19 23:53:34
Sophie様

>どんな感じで終了するのかと思いきや唐突に一般論で終わってしまった感も・・・。

そうかも知れませんねぇ。正直なところ、今回のテーマはここまで重い内容にするつもりは当初無かったのですが、いろいろご質問をいただいたこともあり、途中からかなりヘビーな内容になり過ぎたのではと、自分でも少し複雑な気持ちでした。おそらく理系の方は面白かったかも知れませんが、文系の方はかなり微妙だったかも・・。まぁそんな気持ちもあって、最後はかなり簡潔にまとめ過ぎたかも知れません。(^^;

>個人的にはもっと冨宅さんなりの方針、見解、思いなどを開陳して締めくくって頂きたかったと思います。

了解しました。それでは、最終回にもちょっと補足しましょうかねぇ。来週にでもやりますので、少しお待ちください。
返信する
Unknown (元気です)
2010-08-20 18:35:43
冨宅様、

毎回、楽しく閲覧しております。

大昔、Lo-D HS-500のL-200ウーファーでポールピースを台形に切削して銅メッキを行ったとかの記事を見た記憶があります。

この辺りの磁気回路の低歪化と音質との相関等について教えて頂けると幸いです。
返信する
Unknown (PARC)
2010-08-21 00:14:36
元気です様

お久しぶりです。

>Lo-D HS-500のL-200ウーファーでポールピースを台形に切削して銅メッキを行ったとかの記事を見た記憶があります。

Lo-DとはLow distortion(低歪み)からきているとの話を聞いたことがありますが、かなり歪み対策には気を使っていたようですね。

>この辺りの磁気回路の低歪化と音質との相関等について教えて頂けると幸いです。

磁気回路の歪み対策は結構いろいろなものがあるので、またちょっと重たいエントリーになりそうですが、また機会を見てお話することにしたいと思います。
返信する
Unknown (倉田 智朗)
2010-08-30 21:07:38
社長、お疲れ様でしたー
そのうち一冊の本にしてくださいw
間違いなく売れるかと!

ところで、話は変わりますが、PA用スピーカーについて何かネタがあればお話を聞かせてもらえたらと思います。

モニタースピーカーや、ピュアオーディオスピーカーと違うところにPA用スピーカーはあるとおもうのですが、具体的にどういった違いがあるのか知りたいです。

私がわかることは、でかいウーハー積んでて安いというぐらいでしょうか^^;
返信する
Unknown (PARC)
2010-08-31 23:35:06
倉田様

>そのうち一冊の本にしてくださいw 間違いなく売れるかと!

いやぁ、こんな内容でお金をいただくなど、とても無理です。(^^; 私なら絶対買いません。(笑)

>PA用スピーカーについて何かネタがあればお話を聞かせてもらえたらと思います。

了解しました。私は、ピュアオーディオ、PA用、シアター用、スタジオモニター用、カー用、TV用と結構いろいろなカテゴリーのスピーカーを設計してきましたので、またブログでその辺のことも書いてみましょう。

と言いながら、既に2週間もブログ更新してない! ごめんなさい。
実は、現在ホームページをparc audio com として再スタートさせるよう準備中で、それに合わせてこのブログもHPに統合予定です。またリクエストのあった掲示板もHP内に設置予定なので期待していてくださいませ。
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