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――パナソニックを中心とした電機業界の記事集.

パナソニック電工、完全子会社決議 動き出す抜本再編

2011-03-03 |  パナソニック



 パナソニック電工は、2日に開いた臨時株主総会でパナソニックの完全子会社になることを決議した。4日には、三洋電機が同様の総会を開く。

 これにより、4月1日付の完全子会社化の手続きは終了し、従業員38万人の大組織は次のハードルである2012年1月のグループ組織の抜本再編に向けて動き出す。

 新生パナソニックの完全融合は進むのか。グループ統合の現状と課題を追う。


前例ない規模に

 「新たなパナソニックグループに一層の支援をお願いします」。パナソニック電工の長栄周作社長は、2日の臨時株主総会をこう締めくくった。

 3月末に59年の上場企業としての歴史に幕を引き、来年1月にパナソニックと三洋電機の事業部門と統合再編する形で、5つの部門に分割される。

 パナソニックは昨年10月、グループの組織再編の大枠を発表した。

 16ある「ドメイン」と呼ばれる社内分社や子会社などの事業部門は来年1月、9つに集約され、ドメインからパナソニック電工と三洋電機の名前が消える。

 パナソニックの大坪文雄社長は、「一つの新しいパナソニックになり、韓国メーカーなどライバルに勝つため」と狙いを説明する。

 昨年8月から、3社の副社長クラスから事業担当者までが定期的に集まり、事業再編の調整を続けている。来年1月までに生産拠点の統廃合なども決まる見通し。

 パナソニックの連結べースの従業員数は、10年9月末時点で38万5000人。日立製作所(35万2000人)、トヨタ自動車(31万8000人)を上回る。

 企業活動を支える情報システムひとつをとっても、「製造業では世界で例がない規模になる」(パナソニックの福井靖知上席理事)。


900の品番重複

 パナソニックとパナソニック電工、三洋電機の情報技術の担当者ら約500人が昨夏以降、システム運用上の問題点などを洗い出してきた。

 家電製品から電子部品まで3社の製品につけられた品番は約500万点。受発注や会計システムに入力するために品番が重複することは許されない。

 調べたところ、数字などを組み合わせた品番が3社で偶然一致していたケースが900に上ることが判明。今年1月までに品番の他、内線電話番号などの重複を解消する予定。

 パナソニック電工と三洋電機の6万人の国内社員の電子メールについては、旧アドレスとパナソニック式の新アドレスを併用できるようにする。

 さらに、数年をかけてクラウド型を含めて各部門に適したシステムを再構築する。


給与体系も課題

 給与体系と人事制度の違いも課題。パナソニックの社員の平均年齢と年収は10年3月末で44歳、756万円。パナソニック電工は41歳、678万円で大きな差はない。

 だが、三洋電機は41歳で600万円弱と開きがある。

 三洋電機は来年1月以降も法人格を維持することが決まっており、三洋電機の社員は当面、出向扱いで新組織に移らざるを得ない。

 「給与・人事体系を一本化しないと、新組織で一体感が生まれないのではないか」昨秋、三洋電機の社員との懇談会で質問を受けた大坪社長。

 その質問に対して大坪社長は、「すぐに統一することは不可能だが、将来はその方向に進むべきだと思う」と答えたという。

 給与体系を統一すれば人件費は膨らむ。しかし、格差を残したままでは「一つのパナソニック」を実現するのは難しい。

 パナソニック電工と三洋電機の完全子会社化に投じる費用は、09年12月の三洋電機の子会社化からの累計で1兆2千億円に及ぶ。

 組織と給与・人事体系、情報システムの3つの再編を軌道に乗せ、38万人の垣根をいかに早く取り払うか。準備のための期間は、10カ月を切った。




【記事引用】 「日本経済新聞/2011年3月3日(木)/13面」