パナソニックの大坪文雄社長は11日、2013年3月期の事業方針を発表した。
前期決算は過去最大となる7721億円の連結最終赤字を計上。テレビなどの採算改善と、白物家電や電池などの販売拡大をテコに「何としても業績のV字回復を実現する」と宣言した。
構造改革に道筋をつけ、6月末にバトンを渡す津賀一宏次期社長ら新経営陣に次代の成長を託す。
●大きな危機
「今は大きな危機を抑えている。再出発して成果を出すため、皆さん一緒に頑張ろう」。
11日午後3時に始まった年に1度の社内向けの事業方針説明会で、大坪社長は従業員らにこう呼びかけた。
創業者・松下幸之肋以来の伝統ある舞台も大坪社長にとって今回が最後。いつもと変わらぬ然々とした語り口を貫いた。
パナソニックが同日発表した12年3月期の連結決算(米国会計基準)は売上高が前の期比10%減の7兆8462億円、最終損益は7721億円の赤字(前の期は740億円の黒字)だった。
不振のテレビ事業では、工場の集約など構造改革を断行。買収した三洋電機に絡む減損損失など、7671億円の事業構造改革費を計上した。
大坪社長は「今後の収益圧迫要因は取り除いた」と強調する。テレビ事業はなお赤字が残るものの、構造改革の効果で今期の営業損益は1300億円ほど改善。
電子部品やエネルギーなどを含む全9事業部門で収益改善を見込む。
●白物家電が柱
中でも収益の柱と見込むのが白物家電。大坪社長は「グローバルで大いに展開の余地がある」と自信をみせた。
ブラジルやインド、ベトナムなど、生活家電の普及期を迎える新興国で本格的に冷蔵庫やエアコンなどの生産に乗り出す。
成長市場を取り込めば「既存の事業も成長事業に変えられる」(大坪社長)。現地の需要に合った商品を投入し、白物家電事業は海外で2割の増販を計画する。
今後の成長を期待するのが環境・エネルギー分野。この分野でもアジア勢の追い上げを受けるが、事業拡大に先手を打つ。
リチウムイオン電池は中国への生産移管を進めてコスト競争力を高め、スマートフォンなど需要が伸びる機器向けに拡販。エコカー向け電池事業とともに、今期の黒字化を目指す。
「一言で言えば、激動の6年間だった。ただ、暴風雨の中でも胸を張って、環境革新企業を目指して着実に経営を進めてきた」。
11日夕、記者向けに開いた事業方針発表会で大坪社長は自身の任期をこう振り返った。
【記事引用】 「日経産業新聞/2012年5月14日(月)/3面」