P突堤2

「でにをは」別口入力・三属性の変換による日本語入力 - ペンタクラスタキーボードのコンセプト解説

活用形の拡張:接題目形…補助線

2020-11-08 | 文解析は副詞が鍵
ある種の句接辞において、副詞句/節を形成し後続の述部を連用修飾するものがあります。
動画を観賞[中]急いでメモした、学生[当時]手が届かない代物だった、等々助詞抜きで後続の述部に接続していくのが特徴です。
これらの中には
就任[後]-だろう、職業[柄]-なのか、など述部というより助動詞や接続詞と直接つながるものもありますがここでは典型的に副詞的職能をもつタイプのものや用例に絞って考えていきたいかと思います。
接続の仕方についてポイントとなるのは後接が[助詞抜き述部接続]となっている事です。これは前接の名詞的投げかけが、副詞的係り方というよりもやや接続詞的、あるいは題目提題的であると言えると思います。
ちょっと唐突に題目という言葉を持ち出してしまいましたが、そもそも以前から副詞-接続詞-題目語の境界が横断的になっているということについて以前から注目していました。

この気温差ヤバ~い
今日の服胸ポケないから
年齢層自分の周りだわ……って
どこに目ぇつけとるんや
道中お気をつけて

などのような何気ない助詞抜き接続のものはいずれも名詞的な先行語がその後の叙述成分の提題的要素としてはたらき連用修飾の色彩を帯びています。
先人の研究によれば「題目語」「はだか格」などさまざまなアプローチで説明が試みられておりますが当ブログなりの自己消化をしてひねり出した術語は
「アジェンダ名詞(句)」と呼ぶことに思い至りましたので暫定的にこの語を土台として考察を進めてまいったところであります。

ここまで典型的にはN+接辞+Vの形を念頭に置いて話を進めてまいりましたが、ここから一歩踏み込んで
Nが純名詞・抽象名詞だけではなくて、動詞から転成した連用形転成名詞もあくまで名詞扱いとし、VN+接辞+Vの形の句接辞も成立するのか、このあたりを深く掘り下げてみようかと思います。
前段として記事冒頭での例:観賞中にしても着地ざまなどにしましても観賞/着地という語基自体は動詞様態的ニュアンスが強いもののカタチ上は漢語名詞であり便宜的にはNの扱いとなりますが以下の例ではどうでしょう↓

ここで(VN+接辞)この部分を"導入フレーズ"と設定しますと

<ア.導入フレーズの例>
届けざま
帰りしな
行きがけ
渡り中
読みおわり
読みはじめ   (おわりもはじめも動詞としてではなく接辞名詞としてのはたらきとします)
起きぬけ

…ここまでは自分的にも目論み通り導入フレーズのカタマリがアジェンダ名詞的に振る舞っているな、という感触が得られました。助詞抜きでも違和感はありません。

<イ.さらに導入フレーズの例>
笑いながら
避けつつ
耐えかね


…こちらは「ながら」「つつ」「かね」にしましても接辞というよりは文法機能語の範疇ではないか、と接辞と言い張るには少し強引ではないかとの懸念も出てきます。
おまけに「(耐え)かね」のかねについてはむしろ複合動詞の範疇ではないかという疑問を持たれてしまうのももっともな話ではあります。
しかしV-かねるのような結合は統語的複合動詞でありますし活用形の形によって「--かね」のような連用中止用法であると短尺ということもあってチャンクの分離上境界の判別に苦労させられる元ともなります。(金・カネとの混線)
この接続詞的接続はすでに同様のような「別口入力[て]」でもマーキング検知が有効にはたらいていて区切り境界は早めの網で捉えた方が経験的に良策であることはわかっておりますので
別口マーキングほどではないですが早めの形態マッチングで「VN+かね(接辞)」が掬い取れれば構文解析運用上も利点が多いものだと思います。
ちょっと吟味してみますと「笑いながらに」「耐えつつが」みたいな助詞付随はかえって考えにくいのでアジェンダ名詞(の助詞あり用法が)がそもそもないとも考えられますが
「避けつつ[の]」「耐えかね[て]」みたいに一部助詞とは連結用法も健在ですので文法語とはいえ生産力そのものがまず多いことを重要視…接辞的に取り扱うことで物理キー[三属性変換ハ万]の機構を存分に活かすことにもつながってきています。

<ウ.さらに突っ込んで導入フレーズの例>
話し方(よく分からないよね)
怯えぶり(見てごらんよ)
履き心地(前より良くなってる)
混ざり具合(ちょっと尋常じゃないな)
逃げ性能(前者より後者の方が高いっスね)
うぬぼれ展開(散々見飽きたよ)
*囲い込み戦略(着々と実行中だ)
*斬られ役(なかなか堂に入ってる)
*タカリ外交(絶賛展開中)
*サボりキャラ(定着してきたね)

…こちらの例はアジェンダ名詞使いであることに疑いの余地はありませんが粒が立ちすぎてきていて<副詞的/接続詞的に述語にかかる>という職能が大分薄れてきてしまいました。やっぱりアジェンダ名詞という看板は単純語にだけ許容したものの方が説明がすっきりするということなのでしょうか。悩みどころです。
あと気になるのは副詞+述語(句を含む)というよりは格用法が単純化されやすい…逃げ性能最高だよ…みたいに主述一体の連語フレーズになってしまうケースが多く<副詞的提題>+<何がどうした(込み入った述語部)>という構造が見られにくくなっています。
これは通常変換で副詞を敏感に検知する構えがあったとしてもこちらのフレーズの場合単に主語動詞だけの用例共起の枠組みで事を済ませられることになり何か物足りません。
やはり構造・統語を包括的に捉えるには副詞を軸とした通常変換解釈バイアスのポテンシャルを存分に生かしたいところなのですが…。まあこのへんはペンタクラスタキーボードだけの事情であり本質的な問題ではないのかもしれません。
しかしアジェンダ名詞とは申したものの個々の生成チャンクはそのまま辞書や単語データに登録・立項されていることはむしろ稀で構文解析上は"アジェンダ名詞"というクラス素性などと設定しても徒労に終わってしまいかねず新しい枠組みでの捉え方が必要になってきてきます。

そこで今回提案していきたいのが活用形の拡張、「接題目形」なのであります。
対象となるのは今回のさまざまな導入フレーズで考察してきた、VN+接辞+述語の形となる句接辞(とその拡張の機能語接辞)についてです。
ここで紛らわしいようでありますが↓以下のケースにおいては別物と考えとりあげる対象外であることに留意ください。

<接題目形の対象外例>
道行くすがら
場数踏んでるゆえだろうね
気づくあたり流石です

…これらは前接の動詞が連体形であり後接の接辞部分も形式名詞であることから典型的な連体接続であり明確に分けて考えなければなりません。
今回の導入フレーズではいずれも従来の活用形態で言いますと連用形からとなっており、本来用言に連接するものが<導入フレーズ>=<アジェンダ名詞?>=形式名詞とも少し違うような抽象結語(句接辞)と一体化して結びついており単なる連用形とは容易に考えづらいケースのものであります。
この、「一体化した結びつき」というのがキモであり平たく言うと接題目形ではVN+接辞の部分を含めて一語であるとみなし「[続]けざま」の「続」は語幹、「けざま」の部分は活用語尾と捉えることにするのです。
同様に「[力]み加減」の「力」は語幹、「み加減」は活用語尾、さらには「[癒]され中」の「癒」は語幹、「され中」の部分は使役/受身ながらも活用語尾として捉えるといった具合です。
(「され中」に関して言えば「する-される」みたいなサ変の語尾変化ともとれるのでもしかしたら語幹の切り取り方はまたちょっと違ってきますが…適切な例ではないかもしれませんが意欲課題として)
なんにせよ文法的な形式語ではなく具体語彙である加減や心地みたいなものまで活用語尾にするとなると文法的にいびつで整合性が取れなくなるのではないかとの心配はありますがコンピューターで構文解析をさせる段において密かに役に立つのではないかと期待しているところなのです。
連用形は連用と謳っておきながらも連用中止法・連用形転成名詞であるとかこの例のような題目接続であるとか例外も多くならばタイピカルな連用形でなくて活用語尾と一体になってアジェンダ機能をもつものは連用ではなく副承の職能連接でありますのでこうして独立した解釈で接題目形を立てることが接続テーブル参照/構文解釈コストづけの面から言っても避けられないことだと思います。
つまりカタチ上は連用形と同形でありながらも職能の面から言って初手から別物であるのでこれを別カテゴリにとりたててみよう、ということであります。

あとは転成名詞との住み分けをいかにして乗り越えていくか、こちらが大事になってくると思います。
<ウ.>のフレーズ例では*が付くにつれて単純な複合語として捉えた方がすっきりするのではないかと思われるフシもありますし、
悩み事 かかりつけ 挫折慣れ みたいなところはもうほとんどアジェンダ職能はみられません。
あとはとる構文の形が副詞成分→叙述成分みたいにならずになにかの装定化成分(連体修飾)になったり、補語や目的語になったりするので兼任や構文特性などともバランスを取って解釈を進めていかなければなりません。
例えば接題目形の要件を満たしそうな「食べである」みたいな題目でも存在文でしか出てこなかったり「とる」「なる」など特定の構文でしか成立しない語彙もあるのでその辺のところの精査も必要です。
仮に構文特性がこちらが想定しているアジェンダ名詞的職能と違う場面での使用が多いと判断すれば辞書的には転成名詞や文末用言としての位置付けて対処し、同時に通常変換で接題目形を取りたがる性向を少し抑制するように調整しなければならない場面も出てくるということであります。
そしてそもそも連用形転成名詞の形をもたない「食べ」や「書き」などを接題目形に組み込むのか、不自然であればネガティブリスト的に例外措置テーブルを設定するのかいろいろ懸案は出てきて来るかと思います。
転成名詞単体では出てこなくとも「聴きつつ」みたいな形は当然自然ですし接題目形特有の接続勢力語彙空間というのもありますのでこの辺の見極めは未だ未踏の領域と言っていいかもしれません。
あとは宿題としては「家に居さえ」の「さえ」、「食べでもしなきゃ」の「でも(これは複合助詞)」みたいのは後接がアジェンダ展開をせずに用言との接続とみなせるので適用外かとは思いますが文法機能語彙、具体固有語彙に限らず接続パーツの親和性組み合わせには今後も注視していかねばならない課題であるかと思います。


※この記事は近日中にあげる「入力上の待遇⑤に入る前の基礎説明事項:接頭辞接尾辞」記事について補助線という形で先行UPするものであります。
接頭辞接尾辞記事のカテゴリーは「ジャンル横断的な問題」となっておりますがこの記事単体につきましては「文解析は副詞が鍵」に資するものだと判断しましたのでそちらのカテゴリとして分類するものとします。
入力上の待遇の一連の記事はシリーズ化しておりますので全弾投下次第まとめのリンク列挙をいたしますので一区切りつくまでどうかお待ちください。
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