若泉敬氏の『 他策ナカリシヲ信ゼムト欲ス 』を読みました。
ハードカバー1.1㎏で、上下二段630頁もある厚手の本でした。
図書館で借りたのですが、読むのに1ヶ月かかってしまいました。(先日も記した通り、読書に対する体力が低下し、読み始めるとすぐ睡魔に襲われてしまう私です)
トランプ氏が影響を受けたと云われるニクソン大統領との交渉が中心となっていて、その窓口となったキッシンジャー補佐官とのやりとりが事細かに記されています。
内容は、
鎮魂献詞
宣誓
謝辞
第一章 ”孤独なる闘い”
第二章 「沖縄が還るまで戦後は終わらない」
第三章 隠密のホワイトハウス訪問
第四章 一九六七年日米首脳会談
第五章 幕間の一九六八年
第六章 ニクソン政権への移行期
第七章 総理の”核抜き”裁断
第八章 佐藤総理・岸元首相とニクソン大統領
第九章 ”政治的ホットライン”の開設
第十章 ”西部ホワイトハウス”サンクレメンテへの旅
第十一章 沖縄の核、そして繊維
第十二章 ニクソン大統領の”最後通牒”
第十三章 佐藤総理の対案を携えて
第十四章 ホワイトハウスでの極秘折衝
第十五章 キッシンジャー補佐官との合作した脚本
第十六章 核抜き、本土並み、七二年返還
第十七章 絡みつく繊維
第十八章 「後世史家の批評にまつのみ」
第十九章 歴史の闇の奥深く
跋
読者の皆様へのお願い
「核時代における日本の独立と安全保障」を追求していた著者の、沖縄の理不尽な現状を踏まえた沖縄同胞への熱い思いがここ彼処にちりばめられていました。
印象に残った文章は、ハンス・J・モーゲンソー氏の
「国家は自国にとっての死活的でない争点に関してはすすんで妥協しなければならない」
と、福田恆存氏の引用で
「民主主義とは、最も大事なことを隠すために詰まらぬことを隠さぬやうにする政治制度です。」という一節でした。
著者の「アンビバレントなニクソンにかきまわされて、それこそ世界中がアンビバレントな『分裂症状』を呈してこないよう願うものである。」には現在の世界の騒ぎがダブって見えてきました。
著者は、この本(1994年5月15日第一版)の英語版の完成稿を翻訳協力者に渡した後1996年(平成8年)7月27日、福井県鯖江市の自宅にて逝去(享年67)されました。
自死だったと云われています。
著者が出版社に要請したことに、「印税は永久に公共の利益のために役立てて欲しい」「若い世代の方々に読み継いで欲しいので絶版にしないで欲しい」とありました。
「沖縄本土復帰」という大きな外交実績を裏側で支えつつも、その実現のために密約を取り交わしたことに対する贖罪のだったのでしょうか。
巻頭には、
「1945年の春より初夏、凄惨苛烈を窮めた日米沖縄攻防戦において、それぞれの大義を信じて散華した沖縄県民多数を含む彼我二十数万柱の全ての御霊に対し、謹んでご冥福を祈念し、この拙著を捧げる。」
とあります。
自らの命を削って示した「記録を後世に残す」という行為に、隠蔽が横行する現在の永田町はどう感じるのでしょうか。考えながら読み進めました。