夜明けの曳航

銀行総合職一期生、外交官配偶者等を経て大学の法学教員(ニューヨーク州弁護士でもある)に。古都の暮らしをエンジョイ中。

喪服の似合うエレクトラ

2005年01月01日 | 演劇
ユージン・オニール作の「喪服の似合うエレクトラ」を新国立劇場で見てきた。

大竹しのぶは好きな女優というのではないが、舞台俳優としての才能を評価しているので、舞台作品はけっこう観に行っている。

TPT「ルル」(堤真一と共演)、「奇跡の人」(菅野美穂のヘレンはなかなか良かった)、「パンドラの鐘」(蜷川演出バージョン)、「太鼓たたいて笛吹いて」(井上ひさし)、「ママが私にいったこと」等をこれまで見ている。

「ロミオとジュリエット」の稿でも書いたように、欧米人のバックグラウンドにはギリシャ神話世界とキリスト教世界という相反するものがある。歴史的には後者が前者を超克する形だが、この戯曲は、ギリシャ神話をキリスト教的価値観で解釈したらどうなるか(しかもアイルランド系のオニールは厳格なカトリック教徒の家庭に育った)という大変興味深い試みに挑戦している。
しかも、オリンの母への異常な執着は、エレクトラ・コンプレックスのみならず、エディプス・コンプレックスまでこの劇が取り込んでいることを示している。

ギリシャ風の巨大エンタシスを配した舞台装置、第2幕でのラヴィニアの衣装が母親と同じものという点も成功していた。
大河ドラマ「新選組!」の山南敬助で評判になった(映画「壬生義士伝」では沖田総司だったが、同じ役作りだったのには笑えた)堺雅人の弟オリンの演技もその線の細さが生かされて良かった。

ちなみに、パンフレットの「ブロードウェイ便り」で、現在、「12人の怒れる男」がブロードウェイでは初めて上演されていることを知って意外だった。舞台劇がもとの映画だとばかり思っていたが、TVドラマから芝居になったがそれはブロードウェイではなかったようだ。

開演前に、ロビーで「12人の優しい日本人」で陪審長役を演じた塩見三省を見かけたので、また少々関連妄想。
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