立て続けに、仕事以外の書き込みをしてしまった。
いくら銀行員時代のことも入っているといっても、遊んでばっかりいるみたいだ。
(趣味と仕事が一致していればよかったのだが、それでは満足できず、文科三類からわざわざ法学部に進学し、法学教師になってしまったのは私の選択だから。)
それで、仕事のことも書くことにする。
現在、「ジェンダーと法」でレイプ裁判を扱っているが、奈良の女児殺害事件をきっかけに、性犯罪の前科のある者の情報を公開することの是非が問題になっている。
ここで参考にされているのが、アメリカのメーガン法だ。
1994年にNew Jerseyで、7歳の少女メーガンちゃんが性犯罪の前科者に強姦され殺されたが、この犯人が被害者の向かいに住んでいたことから、できた法律である。
多くの州で同様の立法がされており、詳細は州によって違うが、性犯罪の前歴がある者の、住所、氏名、写真が、ネット等で公開されている。州によっては、再犯の危険度まで公開されている。
むろん、こうした情報には、「前科があることのみを理由とするあらゆる嫌がらせは犯罪に該当する」という警告文もついているが。
ここで、アメリカ法の性犯罪に対する態度について、見てみよう。
1.レイプ・シールド法
日本では、レイプの裁判において、被害者が受けるセカンド・レイプが問題になっている。
つまり、「貞淑な女性が夜道で見知らぬ男に襲われるのが強姦」という強姦伝説が司法関係者にすら信奉されているため、貞淑でない女性は、本件でも性交に合意したに違いないという論理を導くために、被害者の過去の男性との交際等が、事細かに、加害者側の弁護士によって暴露され、いわれのない辱めを受けるのである。
男にも女にも、誰といつどんなふうに性交渉をもつかを選ぶ、性的自己決定権がある。
だから、過去にどんな性行為があったかどうかは、その時同意したかどうかには関係ないはずである。
そもそも、強姦罪177条等、性犯罪の、日本の刑法における位置をみると、虚偽告訴罪と賭博罪に挟まれた、社会的法益を害する罪という性格付けになっていること自体が問題で、個人の自己決定権こそ保護法益だという観念が欠けているのだ。
アメリカのレイプ・シールド法は、このようなセカンド・レイプを防ぐため、被害者の過去の性的な経験を証拠として取り上げることを原則禁止している。
2.他の証拠法
アメリカの証拠法では、陪審制度のために、定型的に、素人が偏った結論を導きやすい証拠を出すことを、関連性のない証拠として禁止している。そのためのそれはそれは細かいルールがある。
(この点、日本では、証拠法がそれほど厳密でないことから、裁判員が誤判に導かれやすいのではないか、と私は危惧している)
たとえば、車を修理したこととか、和解交渉をしたこととかは、原則として証拠とすることはできない。また、被告人の前科についても、原則として、同種の犯罪の証拠には出せないことになっているが、性犯罪に関してだけは、出してもいいことにしている州が多い(NYは採用していないが)。
以上のように、プライバシー権の保護や、証拠の関連性についてのルールの厳格なアメリカでさえ、性犯罪についてだけは、被害者保護に大きく傾いていることは大いに参考になるだろう。
少なくとも、裁判員制度実施の前に、レイプ・シールド法だけは制定すべきではないかと考える。
いくら銀行員時代のことも入っているといっても、遊んでばっかりいるみたいだ。
(趣味と仕事が一致していればよかったのだが、それでは満足できず、文科三類からわざわざ法学部に進学し、法学教師になってしまったのは私の選択だから。)
それで、仕事のことも書くことにする。
現在、「ジェンダーと法」でレイプ裁判を扱っているが、奈良の女児殺害事件をきっかけに、性犯罪の前科のある者の情報を公開することの是非が問題になっている。
ここで参考にされているのが、アメリカのメーガン法だ。
1994年にNew Jerseyで、7歳の少女メーガンちゃんが性犯罪の前科者に強姦され殺されたが、この犯人が被害者の向かいに住んでいたことから、できた法律である。
多くの州で同様の立法がされており、詳細は州によって違うが、性犯罪の前歴がある者の、住所、氏名、写真が、ネット等で公開されている。州によっては、再犯の危険度まで公開されている。
むろん、こうした情報には、「前科があることのみを理由とするあらゆる嫌がらせは犯罪に該当する」という警告文もついているが。
ここで、アメリカ法の性犯罪に対する態度について、見てみよう。
1.レイプ・シールド法
日本では、レイプの裁判において、被害者が受けるセカンド・レイプが問題になっている。
つまり、「貞淑な女性が夜道で見知らぬ男に襲われるのが強姦」という強姦伝説が司法関係者にすら信奉されているため、貞淑でない女性は、本件でも性交に合意したに違いないという論理を導くために、被害者の過去の男性との交際等が、事細かに、加害者側の弁護士によって暴露され、いわれのない辱めを受けるのである。
男にも女にも、誰といつどんなふうに性交渉をもつかを選ぶ、性的自己決定権がある。
だから、過去にどんな性行為があったかどうかは、その時同意したかどうかには関係ないはずである。
そもそも、強姦罪177条等、性犯罪の、日本の刑法における位置をみると、虚偽告訴罪と賭博罪に挟まれた、社会的法益を害する罪という性格付けになっていること自体が問題で、個人の自己決定権こそ保護法益だという観念が欠けているのだ。
アメリカのレイプ・シールド法は、このようなセカンド・レイプを防ぐため、被害者の過去の性的な経験を証拠として取り上げることを原則禁止している。
2.他の証拠法
アメリカの証拠法では、陪審制度のために、定型的に、素人が偏った結論を導きやすい証拠を出すことを、関連性のない証拠として禁止している。そのためのそれはそれは細かいルールがある。
(この点、日本では、証拠法がそれほど厳密でないことから、裁判員が誤判に導かれやすいのではないか、と私は危惧している)
たとえば、車を修理したこととか、和解交渉をしたこととかは、原則として証拠とすることはできない。また、被告人の前科についても、原則として、同種の犯罪の証拠には出せないことになっているが、性犯罪に関してだけは、出してもいいことにしている州が多い(NYは採用していないが)。
以上のように、プライバシー権の保護や、証拠の関連性についてのルールの厳格なアメリカでさえ、性犯罪についてだけは、被害者保護に大きく傾いていることは大いに参考になるだろう。
少なくとも、裁判員制度実施の前に、レイプ・シールド法だけは制定すべきではないかと考える。