夜明けの曳航

銀行総合職一期生、外交官配偶者等を経て大学の法学教員(ニューヨーク州弁護士でもある)に。古都の暮らしをエンジョイ中。

担保法

2005年01月04日 | profession
今日は1月4日だが、第1時限目から担保法の講義があった。

担保法は昨年度に続き、2回目。
昨年度は、初めて教壇に立つ上に、改正民法が公布はされたが施行はまだという、新法と旧法を両方教えなければならないという大変な課題に挑戦することになった。
その上小テストを毎回やって、全部採点して、学生ごとにコメント(あなたは保証は理解できているが、抵当権をもう少し復習するように、等)を書いて最後の講義までに全部返したので、結構タフであった。
また、銀行取引約定書を初めとする契約書式や新聞紙上の競売物権情報等を用いた授業を去年に引き続き、今年も行っている。

とくに、任意規定の場合、特約による変更は可能であり、最も周到な債権者である銀行の用いている書式では、債権者に不利な民法上の任意規定を全て特約で変更するようになっていることを、それぞれの該当条文を示して解説したりする。
大学の授業ではあまりとりあげられないが、実務上は、任意規定か強行規定かの区別は大変重要。なぜなら、前者なら特約で排除できるから(といってもあまり一方的にやると消費者保護の観点から無効にされるので、さじ加減も必要だが)。
また、債権管理という観点は大学の民法の授業からは抜け落ちている気がするが、実務では非常に重要。せっかく債権があってもそれが時効等により消滅したりしたら、何の意味もなくなるから。連帯債務より連帯保証の方が好んで用いられるのは、時効中断しやすいからだ、というような話を講義でも行ったりしている。

これらにとどまらず、銀行法務を長年やってきた経験からは、大学で習う民法と実務で使う民法の間には懸隔がある。それをこのような講義方法で埋めようと努力している。

ただ、限られた時間内で、基本を押さえつつ、実務的な話をするというのは、至難の業。
でも、法科大学院でもこのモットーを貫いていこうと思う。
新司法試験の問題を見たら、実際の契約書等を使った問題になっており、自分のやり方は正しかったのだと大いに自負を感じた。


今日は日にちが日にちだから欠席者が多いかと思ったがそうでもなかった。

レポートは、昨年は、自分の家や下宿のの不動産登記簿謄本を取ってそれを分析するという課題を出したが、今年は、受講生の多くが昨年1年生の社ゼミの授業で同じ課題を既にやっているので、違うものにした。

昨年に引き続き、短期賃借権、滌除、執行妨害を扱った、
『ナニワ金融道』青木雄二
『理由』宮部みゆき
『女たちのジハード』篠田節子

の該当部分を配り、新法と旧法を対照させながら、法的論点を解説させるというもの。

漫画や文学作品を使った方がより身近に法律がどのように適用されるか感じることができる(少なくとも私はそうだった)と思うからだ。

今日提出させたのだが、どれも非常に出来が良くてうれしい。
1年生の社ゼミのとき、「この子は大丈夫か」と思った学生も、前期の契約法でどんどん力をつけてきて(毎回小テストをやるから手に取るようにわかる)、今では見違えるようなレポートを書くようになってくれたのが、本当に教師冥利に尽きる喜びだ。

こういう幸福があるから、どんなに辛いことがあっても教師はやめられないな、と思う。

(久しぶり)

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