大阪教育条例NO!

2012年、大阪で成立した教育関連条例の具体化と、「君が代」不起立処分に反対する運動の交流ブログ

大阪市教育委員が右派機関誌に投稿

2012-12-21 20:24:47 | 大阪市:教育振興基本計画
育鵬社版歴史公民教科書を事実上編集している「日本教育再生機構」の機関誌「教育再生」12月号に、大阪市教育委員の高尾元久氏が「これでは改革は進まない 現役教育委員が見た”教育界の壁””古い価値観の巨塔”」と題して投稿しています。この事実だけでも、高尾教育委員が、日本教育再生機構と親密な関係であることが十分想像できます。

しかも、投稿の中身が橋下市長の教育政策を絶賛しています。高尾教育委員は次のように述べています。

 市長は自らの責任で教育振興基本計画を策定。「基本的な目標及び施策の大綱」を定めることに。これまで「カネ」は出しても教育そのものに直接関与できなかった首長の桎梏から抜け出ました。最高責任を明らかにした以上、あとは首長と教育委員会が同じ方向を向いて教育振興を図らねばなりません。
 ところが、厚い壁が。地方教育行政法(地数行法)。首長(部局)は教育の中味に口を挟めません。区長は地元にいちばん近い存在。行政マン(公選制になれば政治家)としてともに教育を考え施策を実行する立場なのに、法からみれば「部外者」なのです。そこで区長を教育委員会の「区担当理事」に。教委内部の人間なら教育 を語ってもよかろう、というわけです。
 だが、この苦心のアイデア、すぐ問題と直面しました。区長から「区内の教育を考えるために全国学力・学習状況調査の鈷果を提供してほしい」との要望。区内の学校がどんな課題を抱えているか、区としてどんな教育施策を立てればよいか。当然の要請でした。
 ところが、教育委員会議では激論に。「全国のどこが学力が高くて、大阪は低いとか、そこだけで物事を考えて、それだけに注目して一喜一憂する風土を作ってはいけない。」「区担当理事にここまでの情報を渡すことは問題。職務に必要のない詳細なものである。」 議案は一部修正されて可決されましたが、「提供する情報は、区担当理事のみが保有することとし、区の職員へ結果を示すことや外部への公表を認めない旨、(教育長は)職務命令を発する。」などの条件付きでした。
 現在、区に教育委員会の職員は1人もいない。データを受け取った区長は区役所では誰とも相談できず、調査結果を胸に秘めたまま、ただ1人で教育を考えねばなりません。
 行政の「シマの掟」。その根っこにある、地数行法の「教育の孤高」と「政治(民主制度)不信」を見せつけられた思いがしました。


つまり、区長が教育行政にもっと介入できる構造にすることを推奨しています。区長が教育委員会の「区担当理事」となり、全国学テの結果を収集すること自体、「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」で区長に委任されている事項ではなく、違法性が高いと言えます。しかし、高尾教育委員は、教育委員会の独立性を、自ら、内部から否定する発言です。

さらに、高尾教育委員は、現在策定中の大阪市教育振興基本計画について次のように述べています。彼が「刺激的」で「具体的」だと述べているのは、橋下市長が教育振興基本計画を議論する前から政治決定していた項目です。大阪市教育振興基本計画有識者会議では、ほとんど議論されていないものです。

 基本計画の改訂も急ピッチです。「中学卒業段階で30%以上が英検3級」「重点校では小6修了時に英検5-3級、中3修了段階で英検2-準1級」。ちょっと刺激的でしょうか。
 計画の特徴は非常に具体的です。お題目型の理念に流されない。どこの自治体の基本計画を見ても区別がつかない、計画書の裏を見ると「文科省」という判が押されていた…というジョークから離れられそうです。
 例えば、ICT(情報通信技術)の徹底活用。タブレットは教科書やドリルの代役にとどまらない。あらゆる使い方を駆使し、新しい世界が児童生徒の前に広がる。
 さらに、ガバナンスとマネージメントの改革。学校の意思決定の主体と構造を明確に。学校の運営計画に協議会が関与し、校長が決定する。校長はトップ・マネージャーとして権限を大幅に拡大。教委に対する人事・予算請求権、人材を広く募集できる公募制などの環境も整える予定です。


最後には、橋下市長の教育介入を絶賛して終わります。

「教育」という名のキメラ。同じ個体内に異なる遺伝子の生物が宿る怪物。
 要するに、学校の組織編成や教育課程、学習指導などは教育委員会。必要なおカネは首長。それも小中学校の人件費は都道府県…。「教育は不当な支配に服することがあってはならない」。御旗を掲げ、巨大怪獣はのっしのっしと歩き続けました。

「橋下(市長)が大阪の教育をめちゃくちゃにした」。反市長派が続ける激しい糾弾。裏を返せば、確かに市長の強力なリーダーシップがなければ、大阪の教育のイノベーションはなかったでしょう。古い価値観の巨塔を倒すには、外部力が必要です。改革は、組織内部のイニシアチブによって進められるに越したことはありません。しかし、この自省的改革は「王国」では極めて困難です。



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