「あ……あぁ……なんでお前……が……ああああああああ! そうかああああ!! そうだったんだあああああああ!!
全部……全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部!! お前のせいだったんだああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
ビリビリと伝わってくる怒気といっていいのかその圧力。それによってこの駅の建物が再び細かく振動してる。もう割れてたガラスとかが割れることはないが……それでもその圧力は草陰草案や野々野小頭の心臓を握りこんで潰しそうな……そんな根源的な恐怖って奴を与えて来てるような……そんな気さえした。
多分きっとあの飛んでる悪魔の様な女性は今日一番饒舌に喋っただろう。それに……だ。それに草陰草案も野々野小頭も気づいた。それは目だ。視線といってもいいだろう。
彼女の視線……それが確実に目の前の大きな男性へと注がれてる。そこに虚ろな感じはまったくない。さっきまではどこを見てるのかわからなくて、草陰草案たちにも反応なんてしてなかった。確かに飛んだりしてるが……けどそれは結果であって、あの悪魔の様な女性から明確な敵意をぶつけられたか? と言われたら……なんか違う……と草陰草案は思う。
(これが本物の敵意とかなら、やっぱり私たちはあいつに意識なんてされてなかった……)
そう、今まさにその敵意を受けてるからこそわかる。これが本物なら……今までの草陰草案やアンゴラ氏たちの行動……それらは全く持って彼女の眼には止まってなんてなかったということだ。
だってそうだろう……草陰草案なんて何回か『対話』を試みた。けど全くそれはかなってない。叶わなかった。彼女は何かをブツブツと呟いてたけど、あれは会話になんてなってなかっただろう。
けど今のはどうだ? と草陰草案は思う。
(完全にあの人を見てる……よね?)
それは確実。無意識に彼女は持ってるカメラを両手で支えてお腹くらいの位置まででしか持ってないから、この放送を見てる視聴者たちがどこまで見てるか? なんてのは意識してない。
けどそれでも視聴者にも現状はある程度は伝わってるらしい。新たな人物の登場……そして初めてあの飛んでる女が反応したことで盛り上がってる。
「ねえ、あの人って、あの悪魔っぽい人と知り合いなの?」
草陰草案は野々野小頭にそう聞いた。けどどうやらガタガタと震えてるの野々野小頭には返答するのは難しいみたいだ。悪魔の様な女性……その敵意を受けるには野々野小頭はか弱すぎた。