草陰草案は手を伸ばす。その近いようで遠いみんなの居る場所へとその小さな手を……草陰草案の目には見えてる。悪魔のような女性があふれ出させてるその力を……少なくとも草陰草案が見えるその力は他人の自我を崩し、朦朧とさせて、そして普段は抑制してる心の奥底の願望を隆起させて人を獣へと変える。
そんな力だ。あれに包まれると、何もわからなくなっておかしくなる。それは周囲の人たちを見れば瞭然だ。
「くっ……つぅ」
草陰草案はみんなを覆うようにして向かってきてたその力に対して、自身の力を向ける。向こうが上から押しつぶすようにきてる力に対して、草陰草案の力は床から沸き立つようにして向こうの力を押し返そうとする。
草陰草案は力を使いながら素早く動く……という事はできない。自身の足では間に合わないと思ったから、力を使った。なんとか持ちこたえてるけど……やっぱりだけど自身の傍で使う方がより力を発揮できるような気がしてる。
てか実際、少し遠くで強力な悪魔のような女性の力を阻んでるだけで心臓が痛くて、さらに体全体が重く感じてた。草陰草案は走ってるつもりだが、あとちょっとの距離がどこまでも遠く感じる。
実際、草陰草案の足はとても走ってる……とは言えないくらいのスピードしかだしてない。ほぼ歩いてるといってもいいし、もうその歩みだって止まりそうなほどだ。それほど、力を使って対抗する事には大変だという事だろう。
必死に抵抗してる草陰草案……だけど飛んでる彼女はこんなことをいう。
「私の……せいじゃない……私の……みんなみんな……私を……責め……」
取り乱す彼女。すると周囲の柱とか壁とかに亀裂が走る。ブワッ! ブワッ! と衝撃波のようなものが彼女を中心に走ってるようだ。その影響は当然草陰草案にもあるが、力を使ってるおかげか転がっていく……なんてことにはならなかった。かなりの衝撃が走ったはずだけど、自身の力に草陰草案は感謝する。
駅構内にいたおかしくなった人たちは今のでかなり倒れ伏したし、それに……だ。ホームの方に降りるための階段に作られてたバリケードとかも吹き飛んでる。ホームの方で祈ってた人たちは今ので阿鼻叫喚になってるが……下手に階段を上ったりしてこないでほしい……と草陰草案は願ってる。
「はぁ……あぐ……」
草陰草案の額からは汗が噴き出して、大量に流れてた。今のでダメージこそうけなかっだが、けどその衝撃は足を止めるには十分だった。
(これ以上は……)
そんな風に草陰草案は足を止めて泣いてるアンゴラ氏達の背中を見る。天井に向かって泣いてたり、体を丸めて泣いてたり……大の大人が子供である草陰草案だけに働かせるな! ってちょっと憤慨してる。でも、それを口になんてする元気も今はもうない。少しずつ、上から下に押される圧力が強くなってきてる気がしてた。
(もう……無理……)
そんな風におもって草陰草案は誰かに願う。自分以外で力を使える人なんて……と思うが、それでも一女子中学生である草陰草案は誰かに頼りたくなってしまう。
その時だ。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおらああ!!」
そんな方向と共に誰かが空中にいる悪魔のような女性に向かって看板? みたいなのを投げたのかそれが悪魔のような女性へとぶつかって力の圧力が止まった。