UENOUTAのお絵描きとかブログ

 お絵描きや小説、YouTubeとかの報告とかしていきます。

ある日、超能力に目覚めた件 306P

2023-10-28 20:16:34 | 日記

「わかんないって……あんたが治してるんじゃない」

「それはそうだけどさ。実際怪我とか、骨折とかなら私だって治ってるなぁーってわかるし、わかりやすいよ。でも体の内側の……それこそウイルスとか疾患とか、癌とか? そんなの治ってるのかどうかなんて私にもわかんないよ?

 私は祈ってるとき『痛いの痛いのとんでけー』って祈ってるだけだし」

「おい」

 衝撃な告白をしてる草陰草案に思わず低い声が出てしまう野々野小頭である。そしてハッとして野々野小頭は一緒にいるダンディーな人の方をみる。けどその人は別にこっちの話には我関せず……という風にしててグラスをキュッキュッと拭いてる。

 けどそれを見ても安心なんてできない野々野小頭である。だってここは密室だ。聞こえないわけない。野々野小頭はお尻半分くらい空いてた空間に詰めよって、草陰草案にピタッと体をくっつけた。そしてさらに顔も近づけて、耳元で手を添えて口元を車内のその人から隠した。

「ねえ、もっと声のトーンを落としなさいなよ。聞かれちゃまずいでしょ」

 そういってちらちらとそっち方向に視線を向けてる。するとバチッとその人と視線がぶつかった。すると人のよさそうな顔でお辞儀をしてくれたから野々野小頭もペコっと頭を下げる。

「あんたは色々と精細な立場なんだから気をつけなさいよ。この車だってあの金持ちの人のでしょ? ならあの人は知り合いでもなんでもないんでしょ? あとで報告とかされたらどうするのよ? 詐欺とか言われるわよ」

「でも治ってたし。小頭ちゃん。私が使ってるのは超能力とかじゃないんだよ?」

「どういうことよ?」

 ちっちっちっとか言いたそうに指を振る草陰草案。言ってはないが、なんかそんな声が聞こえてくるようでちょっとイラっとする野々野小頭。

「し・ん・ぴ 私だってそれが何かなんてわからない『神秘』だよ」

「それでいいわけ?」

「それでいいか悪いかで言ったたら悪いよ。私もアンゴラさんみたいに色々とやりたいようになりたいし。でも私は多分特化型なんじゃないのかな?」

「特化型?」

「私は回復特化ってこと」

 なるほど……と野々野小頭は思った。けど――「でも」――とさらに草陰草案は続く。

「もしかしたら私の力は回復とかそういうのじゃなくて、こういう物体から力を引き出せる……とかかもしれない。だからもしかしたらこれの別バージョンとか手に入れたら、違う力が引き出せるかも」

「え? じゃあ、最近あんたが宝石を買いまくってるのって……」

「ふっ、そういう事だよ小頭ちゃん。私は別に金が有り余ってるから宝石を買いまくってるわけじゃないだよ」

 いや、絶対に違うな――て野々野小頭は思った。


転生したらロボットのなかだった(ただし出ることはできません)運命という世界線を壊せ 943

2023-10-28 20:10:58 | 日記

ドンドンドドドン!! ドドドドン! ドドドドン! ドンドンドドドン!!

 ――そんな太鼓の音がアズバインバカラの街に響き渡る。宮殿の周り、広場、そして一番大きな通りには人々が集まってる。そこには元からこの町にいた人と、そして後から入ってきた人たちで垣根なんてない。

 なにせ等しく、ここにいる人達は教会の敵対者なのだ。つまりは同じ立場。教会がこの世界の覇権を握ると、砂の上に生きる彼らに待つのは死だけだろう。

 まあけどだからってわけじゃなく、皆が希望を抱いて、これから起きることを今か今かと待ちわびていた。太鼓の音が響いたことで、これからようやく始まるという合図。それによって否応にも皆のテンションはブチ上がってる。空には空中に浮遊してる複数台のモニターがある。モニターというか、そこに物理的な何か……があるわけじゃなく、ドローンによってその場に投射されてるのだ。けど今はそれはザザザーという何とも目が痛くなるような、そんな映像しか流れてなかった。

 けど一瞬のその映像の暗転、そしてそれから、違う映像が流れ始める。それはたくさんの色が流れていく映像だった。画面の周囲から渦巻くようにでてくるそれは、中央に集まるにつれて、数字を作っていく。それは10から始まった。そして次には9――8――7――そうなると皆が察する。

 きっと0になったときに始まるんだと。これから始まるのは世界の命運を賭けた戦いだ。この戦いに負けると、どっちかは『死』という最後が確実に待ってるだろう。

 でも、悲壮な感じは誰も発してない。ただただ、これからが楽しみだと……そういわんばかりかのようだ。それを証明するかのように、誰かが数字を叫ぶ。

 すると、それに続くようにその声はどんどんと重なっていく。3からはこのアズバインバカラ……そしてそれだけじゃなく、ジャルバジャルでも町全体がここに集う人々の声で震えてるかのようだった。

 そして皆で0を紡ぐ。その瞬間、モニターには王様が映り、そして宮殿のテラスに彼がその姿を現した。最初に発した言葉……それはこんなんだった。

「よい声だ」

 満足そうに、この世界の晴れ渡る空のように、満足気に王様は言葉を紡いでる。