Organic Life Circle

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健康大楽 ひねくれずに、捻ろう!

2006年03月08日 | 健 康


さて、テーマは決まったが、どのように原稿を書き始めようか? いつも出だしの数行に悩みます。そんなとき、ちょっと頭をひねって考えると、ポン!とアイディアが浮かびます。さらに無い知恵をギュッと絞ると、これも書きたい、あれも加えたいと、あっという間に頭の中がいっぱいに満たされて、あー、日頃使わない頭も、たまに「捻る」といいんだなぁと幸せになります。

そうです。今回は「ひねり・ねじり」がテーマです。人間の体の動きを見てみると、前後屈、左右側屈、上下(伸び縮み)、さらに左右の捻転(ねじり)の8つの方向に大きく分けられます。私たちは普段、これらの方向や動きを特に意識することなく、毎日、毎分、毎秒動き続けていますが、人体にある大小併せて約600個の筋肉を、瞬時に、かつ無意識に動かし、目的にあった動作を行っているということは、とても驚くべきことだといえます。特に、今回のテーマである「捻り」動作は頻繁に生じ、私たちが体を効率よく動かしたり、すごいパワーを生み出したり、さらには体を痛めないようにバランスを取って我々を守ってくれたり、と非常に大切な動作です。

「捻る」動作はパワーが生まれると言いましたが、一方でそのパワーを生むために、それだけのエネルギーが必要だともいえます。ゴルフやテニスのスイング、バットでボールを打つ、ボールを投げたり蹴ったりなど、スポーツでは体の中心部である腰やお腹、骨盤など、体幹部の捻り運動をいかに手足や用具へ伝えるかがポイントになり、この上手下手によって、生みだされるパワーも違ってきます。体操競技での宙返り、スキーのモーグルやスノーボードのエアーターンなどの採点競技において、回転運動に捻り動作が加わると高得点につながるのは、それだけ多くの筋肉を複雑に動かしえる技と力が必要だからです。

日常生活でそのようなハイパフォーマンスや高得点を狙ったりはしませんが、床の物を持ち上げる、ドアを開ける、野菜を切るなどの簡単な動作でも、この捻り動作を上手に使うと、ほんの少しの力でスムーズな動きとなり、消費エネルギーの少ない(=効率の良い)動作となります。

逆に、下半身と上半身を繋ぐ体幹部(骨盤、さらにお腹や腰)を使わず、上半身だけで床のものを取ろうとしたり、腕だけで重たい扉を開けたり、長時間台所で野菜を切ったり、容易な動作とはいえ、体の使い方をちょっと間違えると、すぐに疲れたり、簡単に筋肉を痛めたりしてしまうこともあります。フムフムなるほど。

しかし、捻り動作が重要だからといって、何でもかんでも捻れば良い、というわけでもありません。体幹部(お腹、腰、骨盤)の筋肉群は捻りに対して非常に強くて丈夫ですが、末端(足首、手首)の筋肉群は筋肉の性質や関節の構造上、捻っている状態で外圧や抵抗を加えられるとすぐに傷めてしまう弱さ、もろさがあるので、ちょっとつまずいただけで足首を捻挫・骨折したり、軽くテニスをしただけなのに手首や肩を痛めるということはよくあります。よって、日々の動作で、体をどう捻るかがポイントであり、いかにもドタバタとぎこちなく動くのではなく、「清く・正しく・美しく」動くということが、心身の美しさを保つ上で、さらには健康で楽しい人生を送る上でとても重要になります。

さて、そろそろ本題に入りましょう。ねじったり、ひねったりするときに大切なのが「重心の位置」と「重心の移動」です。正しい重心と正しい重心移動が出来ていれば、体は非常に安定し、効率的に動くので、少ないエネルギーで疲れにくく、怪我をしにくい動きとなります。逆に、重心がズレたり違っていたりすると、バランスを崩しやすく、崩れたバランスを保つために無駄な動き(余分な筋肉の消費)が多く、疲れやすく怪我にもつながります。

今回紹介する体操は「重心の位置」に意識を置いて動くことで、体に重心の大切さを覚えさせるとともに、左右の筋肉のアンバランスを解消し、歪みを軽減、さらには無くしていくのにとても有効です。


<方 法> 例:右への捻り

◎ まず、足を肩幅に開き、上半身の力を抜いた自然体で立ちます。(図1)
◎ 次に、右足に重心を移し、左足は爪先がやや床に触れている程度の状態で、
  右足の踵から右肩にかけて回転軸が一本通っていることをイメージします。(図2)
◎ そして、腰の捻りを上半身、両肩へとつなげていくように右方向へ捻転していきます。
  息を吐きながら動くことをお忘れなく。(図3)
◎ さらに、無理なく体が捻れるところまで来たら、
  そのままの姿勢で2~3回呼吸を換えます。(図4)
◎ 最後に息を吐ききって脱力します。(図5)

続いて、左も同様に行います。左右の捻転で気持ちいい側があれば、その方向を多めにやりましょう。


<注意点>

● 捻るにつれて、足の外側に重心が逃げていかないよう、しっかり足裏の内側(親指側)に力点を置くようにします。力点が足の外側にあると、軸足の膝が重心線からはずれて、下半身のねじりが上半身にうまく伝わりません。(図6)
● 捻転する側の軸足と反対側に重心があるとスムーズな動きができません。見るからにぎこちなく、やっている本人も気持ちよくない動きになってしまいます。(図7)

上記の「無理なく捻れるところ」は人によって感覚が違います。捻りの度合いがやや強めの方がいいという方もいます。あくまで捻りきったときの姿勢が苦しくなく、「気持ちよい」と感じる範囲内であれば、大きく捻っても構いません。


<ポイント>

● 動きの途中で体のどこかに痛みや不快感があれば、その方向への捻りは止め、痛みのない反対側の捻り運動を行います。
● 無理に頑張ったり、左右同じ感覚にしようしたりする必要はありません。
● あくまで「快」の方向へ、「気持ちいい」動きを繰り返し行い、捻り具合が最も快適に感じるところで呼吸を2~3回換えて、最後の呼気を吐き終えてから脱力します。
● 気持ちの良い方の捻りを、しっかり重心に意識をおいて3~5回繰り返した後、先ほど違和感のあった側の捻転を再度試してみると、痛みや不快感が軽減し、無くなっていることがよくあります。こうなったらしめたもの! 体の歪みが是正方向に向かい始めたので、この運動を止めます。
● やりすぎは禁物。一度に集中してやらず、毎日、少しでも良いので左右の捻りチェックを行って、気持ちのよい方へ動いていけば、どんどん体のバランスが良くなっていきます。


<応 用>

手の動きを連動させることで、使う筋肉の可動範囲をより大きくしたり、是正効果をアップさせたり出来ます。基本動作ができるようになれば、捻るときに腕も捻ったり(図8)、両手を胸の前に上げて上半身を捻ったり(図9)、ちょっとした動きの変化で、この単純な動きにバリエーションが増えてきます。色々試して、自分にとって気持ちの良い体の捻りを発見してみてください。


<補足説明>

● 筋肉は反復運動により、その動きを記憶していきます。体が喜ぶ「気持ちのいい」動きを無意識のうちに体が覚え、普段の動きでも無駄の少ない、スムーズで見た目にも美しい動きがいつの間にか出来るようになっていきます。
● 最も快適に感じるところで呼吸を数回換えることが、体に良い筋肉の使い方を記憶させる有効、かつ必要なプロセスです。
● また、息を吐いた後に脱力することにも重要な意味があります。捻っていく運動をした後、脱力せず、またもとの姿勢に意識して戻してしまうと、筋肉は良い状態を記憶できず混乱してしまい、この運動の目的が達成されず、効果も充分に発揮されません。一見単純で物足りないこの捻転運動も、実は奥の深い、複雑な動きなのです。

実際に動いてみると、ひねる・ねじるという動作は一方の筋肉が縮んで、その裏側の筋肉が伸びていることが体感できると思います。上手に捻り動作を行うことで、一度に多くの筋肉を使い、アンバランスな筋肉の凝り・緊張を是正する効果も高くなります。

また、体を捻ると、骨格筋だけでなく、体内の各臓器もねじられます。食べ過ぎたり、飲み過ぎたりして胃腸がオーバーワークで疲れているとき、体をねじってあげると、胃腸の働きを助けてあげる効果もあります。このことをパーティや飲み会で言うと、その場にいた人が急に体を捻っては食べ、捻っては飲みとついつい食べ過ぎ、飲み過ぎになってしまったことが何度かあります。くれぐれも暴飲暴食にはご注意ください。

さらに、両腕を捻ると肩や肩胛骨の周りの筋肉も柔軟になり、肺を覆っている肋骨が開きやすくなるので、深い呼吸が容易にできるという効用も生まれてきます。良い呼吸と良い動き、そしてオーガニックの食べ物をよく噛んで食べ、感謝の気持ちを忘れずに生活していれば、益々「健康大楽」の日々が送れると思います。

捻り鉢巻きをしめると気合いが入ったり、濡れ雑巾を絞るイメージで、太ったお腹を捻ると余分な脂肪が取れるように思えたりします。気持ちの面の効用もさることながら、糸は捻ると強くて丈夫になり、同素材で同じ番手の糸でも撚り数が多いほど高価だったり、釘よりもネジの方が、補強度が強くて高価だったり、さらにはオヤジギャグを連発するより、ひねりのきいたひとつの洒落たギャグのほうが高得点につながったり、「捻り」は至る所で威力を発揮します。

余談になりますが、実は前回号で、原稿が間に合わず、石川まりこさんに、「今回は遅れてしまって締め切りに間に合いませーん。一回休ませてください。」と直球を投げると、「ハハハ、私も遅れているのでご心配なく。お待ちしています!」と赤子の手をひねるように打ち返されてしまいました。「やっぱり曽さんは、頭をひねるより、体をひねる方が得意なんでしょうねー。」というまりこさんの高笑いが聞こえてきそう。えーい、もうこうなったら、ひねくれるほど、捻ってやるぞー。トホホ、最後は捻りの効いていないギャグで締めるとは、ひねひね。

(曽 秀峰)


オーガニック・ライフ・サークル会報
2005年8・9・10月号(No.64)掲載

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