松下啓一 自治・政策・まちづくり

【連絡先】seisakumatsu@gmail.com 又は seisaku_matsu@hotmail.com

☆公開政策討論会を視聴する(2)

2021-10-11 | 条例に基づく公開政策討論会
 今回のテーマは、産業政策だった。あらためて、この制度の意義である、「市民の知る権利に応え、市民により深く考える材料を提供する」という制度意義が確認できる討論会となった。

(1)政策の内容及び実現可能性に議論が及ぶ
 今回の方式は、1人がコーディネーターになって、他の候補者に質問する方式である。候補者が2名なので、合計2時間、うち20分が2回の40分、相手方の政策内容に質問ができる。
 
 ひとつの例が林業大学校である。新城は、市域の84%が森林である。林業は、まちの産業のひとつになる。ただ、ここでも後継者不足である。どう対応したらよいだろうかという課題がある。

 一人の候補者は、林業大学校を誘致したらよいというのが提案をしている。近隣県には、林業大学校があるが、愛知県にはないという。これをつくれば若者が集まるのではないか。その話を聞いて、なるほど、それはいいアイディアだと、私は思った。

 それに対して、もう一人の候補者は質問をする。愛知県には、確かに林業大学校はないが、森林・林業技術センターがある。ここで、森林・林業に関する試験研究、林業従事者の研修、林木育種をやっている。すでに、林業大学校と同様な機能を持つのに、新たに林業大学校の誘致が実現するのか、どのようにやろうと考えているのかという質問である。

 「え、そうなの」。確かに調べてみると、新城市には、森林・林業技術センターがある。HPをみると、実践的な林業研修をやっている。この反論がなかったら、私は、林業大学校の提案で思考が止まってしまったろう。つまり、これまでの選挙ならば、このケースのように、政策のタイトルだけに止まってしまって、その結果、耳目を引く、打ち上げ花火競争になってしまうということだろう。

 さて質問は、林業大学校をどのように実現するかであるが、すでに、同種の森林・林業技術センターがあれば、できないわけではないだろうが、実現は容易ではない。いまどき、屋上屋を架すような政策はできないし、そもそも新規政策そのものが難しい。
 看板を変えるという方法もあるが、それだけで費用が掛かる。看板を変えるには、これまでのセンターでは十分でなかったという説明が必要になる。これは、愛知県の当該担当者にとっては、きつい。これまでがダメだと説明しなければいけない。提案者が、愛知県知事ならば、力づくで看板を変えられるが、一市町村から、いくら言っても、県は簡単には動かないだろう。

 聞きながら、この政策は、簡単にできるものではないと、理解できた。同じように、この2時間の間に、それぞれの政策の内容、その意義や有効性、実現可能性が問われ、市民が考えるヒントになっている。それをテーマを分けて3回(生活安心政策、産業政策、人口政策)やるので、多くの政策が俎上にあがり、吟味する機会となる。

(2)政策が止揚されていく
 提案された政策は、効果が限定的であったり、その実現が容易ではないことが分かるが、では、こうした政策提案が無駄だったかというとそうでもない。
 たとえば、候補者が提起した林業の担い手不足に対応するため、林業大学校をつくるという問題提起が正しいとすると、これが新たな改善策につながるからである。
 現行の森林・林業技術センター制度を前提に、今日的なニーズに合わせた政策提案を付加する(改善する)という筋道が見えてくる。結局、まじめに議論をすれば、程よいところに落ち着くというのが私の経験であるが、今回の議論を聞いて、改めて、そう確信した次第である。

(3)候補者の政策実現能力が垣間見れる。
 2時間も話していると、その人の考え方ややり方が見えてくる。そこから、候補者の政策実現能力が、見えてくる。「ああ、この候補者をこうやって仕事を進めるのだな」となんとなく分かってくる。その評価は、聞く人それぞれで、自分の社会体験によって、評価は分かれるが、ともかく、ある程度の力が見えてくる。

 自治体の首長にとって、大事な政策実現能力のひとつが、合意形成力である。地方自治では、一人ひとりが、暮らしを背景とした正義を持っているので、あるべき論や一方的な正義では、何も実現しない。その正義を調整し、「まあそうか」と、納得させる力がないと、地方自治は進まない。政策実現をめぐる論議を通して、合意形成力も見えてくると思う。

 公開政策討論会は、ガラス細工のような制度で、多くの人の善意で成り立つ制度であるが、2回が終わった時点であるが、公開政策討論会は、ほぼ順調に動いているように思う。実行委員会、候補者、市役所の関係者の奮闘を多とするが、この制度は、行けそうである。
 市役所のHPに、ユーチューブの記録が残っているので、いつでも見ることができる。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ☆総合振興計画審議会(白岡市) | トップ | ☆『自治するまちのつくり方-... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

条例に基づく公開政策討論会」カテゴリの最新記事