鬼橋ブログ

鬼界浩巳事務所の構成員、鬼界(きかい)と橋本が書く日誌です。ブックマークからHPにも行ってみてね。

イタリアぼんやり旅行 5

2006年08月31日 | 旅行
日直・橋本



 イタリア滞在中、私が宿泊した各ホテルの朝食は、
概ねビュッフェ・スタイルだったが、
全てのホテルで、コーヒーは、
コーヒーメーカーでではなく、
毎朝、好みのものをリクエストし、その都度、淹れてもらえた。
カフェラッテ、カフェマッキアート、カフェエスプレッソなど、
コーヒーの種類は多い。
最初に2週間滞在したローマのホテルで、
毎朝日替わりであれこれ試した結果、
どれも美味いが、特にカプチーノが美味く、
以降、帰国までの1ヵ月半、
どこのホテルでも、
カプチーノを2杯飲むのが朝の習慣になった。
 ことのほか美味いカプチーノを淹れてくれたボローニャのホテルでの或る朝。
1杯目のカプチーノと共に焼きたてクロワッサンを味わっていると、
「ブォンジョ~ルノ~!」
と言いながら巨体の男がレストランに入ってきた。
びっくりした。
異様に低く、異様にデカく、異様にイイ、その声。
オペラ歌手が「ブォンジョ~ルノ~!」と歌いながら登場したのかと思った。
待てよ。
ここはイタリアだ。
オペラの本場だ。
オペラ歌手だという可能性は大ありだ。
下半分が真っ黒いヒゲでおおわれたその顔は、
そういわれれば、三大テノールのひとりパヴァロッティに似ている。
朝っぱらからグレーのスーツを着込んだ、その百貫デブさ加減もソックリ。
オペラ歌手以外で、こんな風体のヤツが居るか?
入り口そばのテーブルに座っていた年配の夫婦が、
「ブォンジョルノ。」と挨拶を返すと、
再度「ブォンジョ~ルノ~!」と返す、歌うようなバリトン。
間違いない。
正真正銘、本場イタリアのオペラ歌手だ。
私の横を通り過ぎる時、私も「ブォンジョルノ。」と挨拶すると、
バカが、また
「ブォンジョ~ルノ~!」
と歌いやがった。
声がデケーんだよ!
各テーブルの人たちに、いちいち、
「ブォンジョ~ルノ~!」と言ってるここは、
おめぇのディナーショー会場か?
いいから早く席に着いて、食え。
と、一番奥のテーブルで一人静かにカフェを飲んでいた女性のもとへ。
連れのようだ。
だったら、なぜ、
一緒に部屋から出、一緒にレストランに来ないのか?
一晩ベッドを共にし、
デブのあまりの暑苦しさに耐えかね、女は一足先に来たのだろうか?
キスを交わす2人。
オペラ歌手は、ひとり、料理の並んだカウンターへ行き、
女と自分、2人ぶんの食物を物色。
パンやら何やらを持ってテーブルに戻るたびに、
女に何かを言われ、
カウンターとテーブルを行ったり来たり。
女にアゴで使われている。
ジャム。バター。ジュース。
ひとつ取っては戻り、また来てはひとつ取りしている。
このバカ。
一度に取れないのか?
デカイ図体に、小鳥の脳みそ。
恐竜と一緒だな。
声は素晴らしいが、
脳が足りないイタリアのオペラ歌手。

 10日ほど滞在したフィレンツェのホテルは、
メディチ家がかつて所有していた館だそうで、
確かに、
貴族の屋敷そのままの内装は、
ルネサンス期にタイムスリップしたような錯覚を起こさせる。
ホテルのメイドの制服も、
スカートの丈といい、エプロンのデザインといい、
かの時代風で、雰囲気作りもバッチリだ。
が、
元は人んち、しかも貴族んちだけあって、間取りが複雑。
階段の位置も各階同一ではなく、
私のような方向音痴にとっては、まるで迷路のようだ。
チェックインの際、
朝食をとる部屋の場所をフロントで訊くと、
「説明できないから、誰かに訊け」と言われた。
朝食の場所どころか、
渡されたカギの番号の部屋にさえもたどり着けず。
途方に暮れていると、
メイドが通りかかった。
ホテル従業員の中には、イタリア語しか話せない人も多い。
イタリア語で「部屋に行けない」と言うと、
「ついて来い」と言う。
途中、
食堂のような部屋を通ったので、
「ここで朝食を取るのか?」と、再度イタリア語で尋ねると、
「そうだ」と答え、
一拍おいて、
メイドは、私にこう訊いた。
「イタリアーナ(イタリア人か)?」
きさまは、めくらか?
私のどこをどう見たらイタリア人なんだよ!
自分とチガウだろ、顔が。顔の作りが。
バカなのでしょうか?イタリア人は。

 ローマで、
毎週日曜日に開かれるノミの市があるというので行ってみた。
ひとり3ユーロの入場料を払って、
露店が立ち並ぶ広場に入場する。
かつては大盛況だったらしいが、
今は、出店数も減ったようで、少々寂しい感じだった。
だが、せっかくなので、何か買ってみたい。
60年配の小柄なオバさんが開いてる露店で、
赤いバラのペンダントトップを見つけた。
家にある手持ちのチェーンに合わせたらどうだろう。
「5ユーロ」の手書きの値札が付いている。
ノミの市では値切るのが当たり前だと聞いたが、
生まれてこのかた「値切る」ということをしたことが無いので、
値切り方が判らない。
とりあえず、オバさんの了解を得てから品物を手に取り、
死ぬほど考え込んでみせた。
オバさんは、
「これの何が問題なんだ。」と訊いてきた。
しめた。
ここで、
到底ムリな、できっこないナンクセをつけてダダをこねれば、
「仕方ない。マケましょう。」となるんでしょ?
そこで、私は、
バラにくっ付いていた、
バラとチェーンをつなぐための部品である銀色のリングに着目。
「問題は、このリングだ。
バラの色と同じ、赤いリングがいい。」
と言った。
オバさんは、
「そんなのあるわきゃない。」
と突っぱねた。
私が、
「しかし、銀色だと目立つから、イヤだ。」
と、さらにゴネると、
「じゃ、こうすればいい。」
と、私の手から赤いバラを取り、リングを手でヒネリ取ってしまった。
「ほーら、どーだ。これで問題はなくなった。」
どーすんだよ。
リング無しで、どうやってチェーンにつなげるんだよ。
バカですね、イタリア人。
値切る気力も失せた私は、
満足げなオバさんに5ユーロを渡して、ぶっ壊われたペンダントトップを買った。

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