個別指導塾 ONE-S(ワンズ)のブログ

堺市上野芝にある個別指導塾です。進学から補習、不登校の子どもの学習サポートなど、さまざまな子どものニーズにこたえます

その経験を生かして、また次の道に進めばいいんだ

2017-11-02 10:46:40 | 不登校
こんにちは。堺市西区の上野芝にある個別指導の学習塾ONE-S(ワンズ)の塾長の松下です。

ある卒業生が高校を中退することになりました。

彼は中学3年生の5月頃から塾に来てくれました。学力は驚くほど低く、はっきりいって高校進学を目指せるような状態ではありませんでした。しかし、彼は公立の普通科にどうしても進学したいという強く希望していましたので、どうなるかわからないけれども、一緒に頑張っていこうということになりました。

彼の学力がなぜそれほどまでに低かったのかというと、小学生のときに発達障害と診断されていて支援学級に通っていたそうです。その間、勉強らしい勉強はほとんどしていなかったようで、その証拠に九九でさえスラスラと言えなかったですし、漢字もほとんど書けませんでした。

中学生になって通常学級に通うようになりましたが、そのような学力ですから授業についていけません。支援学級にも何度か足を運んでいたらしいのですが、同級生たちにあれこれ言われるのが嫌になって支援の方に行けなくなったのです。自然と学校が楽しい場所ではなく、しんどい場所になっていき、不登校になりました。

しかし、中学3年生になったとき、「高校に進学したい。学校生活を楽しみたい」という想いが強くなり、中学校に行き始めました。ですが、授業がわからなく、もう一度初めから勉強したいということでONE-Sに来てくれることになりました。

小学校の算数から勉強を開始しました。九九がきちんと覚えることができていないため、割り算もうまくできませんし、分数の計算になるとまったくできませんでした。それでも毎回教えたことはその時間内にできるようになり、できる問題が少しずつ増えてきました。ただ塾での勉強だけでは不十分ですので、塾で学習した復習を自宅での宿題として出すようにしましたが、これまでの約15年間、家で勉強したことがなく、その習慣もついていないため、宿題をほとんどすることができませんでした。

毎日塾にきてるわけではなく、家での復習もしていないため、塾に来るたびに前回学習した内容の一部は忘れてしまっていることが多く、予定通り進みませんでした。それでも彼なりに一生懸命勉強には取り組んでいましたが、やはりどうやっても高校受験のレベルにまで学力を上げるのは残された時間を考えると不可能でした。

11月頃になり進路を決めないといけない時期になり、この頃には本人と保護者との三者懇談をほぼ毎週するようになっていました。彼は3年生になるまで不登校でしたし、3年になってからも毎日学校に行けていたわけではなく、定期テストも受けたり受けなかったり、受けたとしても彼の学力ではほぼ1ケタの点数でしたので、内申点はオール1でした。公立高校の普通科を合格できるような内申点ではなかったので選択肢はかなり限られてきました。

中学校や保護者の方は支援学校に行くことを勧められていましたが、本人は普通科の高校にこだわっていました。私も、彼の学力からして、高校の授業についていけるとは考えにくく、彼の将来のためには普通科ではなく、支援学校や就労につながるような専修高等学校がよいと思っていました。

何度も話し合いを繰り返しましたが、彼の普通科の高校に進学したいという気持ちは強く、私も決意がここまで固いのであればと思い、彼の状況で進学できる高校を探し、その高校の1つ1つを彼と一緒にホームページやパンフレットで見て、気になる高校はすべて説明会に行ってもらうようにしました。

受験直前まで二転三転しましたが、なんとか受験校が決まり、そして合格することができました。

しかし、現実はやはり厳しく、ずいぶんと基礎から勉強してくれる高校だったのですが、それでも授業についていけず、そして毎日学校に通う習慣もついていなかったため、だんだんと学校に行く回数も減っていき、進級も難しくなってきたため辞めることになりました。

それまでも何度か本人や保護者の方から相談があり、お話させてもらっていましたのである程度は私も覚悟はしていました。

「だから、最初から普通科ではなく、別のところに進学させておけばよかったんだ」と思われる方もいるでしょうが、私はこれでよかったんだと思っています。何度も普通科に進学するリスクを説明しましたが、彼の決意は固く、あの時点で普通科以外の学校を無理やり受験させていたとしても、彼は1日もそこに通学はしなかったでしょう。いくらその子どもに適している学校があったとしても通ってくれなければ意味がありません。

そして、彼が高校に通っていたこの時間は決して無駄にはなっていません。実際にその場所に行くことで、いろいろなことに気付くことができたのです。自分に足りないものは何か、自分ができることとできないこと、なぜ学校に通い続けることができなかったのか、これからどの方向に進んでいくべきなのか、こういったことに気づき、そして考えることができているのです。この選択をしていなかったら決して気づけなかったことを彼はたくさん経験できたのです。

彼は今、次の道を一生懸命考えています。その中で、やっぱりもっと勉強ができるようになりたい、勉強を教えてほしいと頼まれました。午前中の時間は空いているから、その時間に塾に来て勉強することになりました。勉強をしながら次の進路の話もいっぱいしていこうと思っています。

大人がレールを敷いてあげることは必要かもしれません。ただ、それが必要のない時もあると思います。自分で経験しないとわからないことなんて山ほどあります。ちよっと遠回りに感じるかもしれませんが、長い長い人生において1年や2年なんで時間はほんのわずかなんです。遠回りしたことによって経験できたことは、必ず今後の人生に役立ちます。

高校を辞めたことは、失敗でもなんでもなく、よりよい道を選べるチャンスなんです。そして自分自身を見つめなおせる、とっても有意義な時間なんです。

「中退したからって、どうってことないよ。俺なんて就職して2週間でやめたんやで。その後引きこもりになったけど、そのおかげで今の仕事に出会えたんだよ」

順調に生きてきたのではなく、挫折も味わったからこそ私は彼にたくさんのことを伝えることができます。そして、その中から何か感じてもらい、何かのヒントになればと、彼といろいろな話をしていこうと思っています。

大丈夫、絶対に大丈夫。君の進むべき道はきっと君自身で見つけることができるから。

ONE-SのHP


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