日本では、古くは野の草を吹いて分けるところから、野分(のわき、のわけ)といい、『枕草子』などにその表現を見ることが出来る。その後、明治時代頃から颶風(ぐふう)と呼ばれるようになった。現在の台風という名は、1956年の同音の漢字による書きかえの制定にともなって、颱風と書かれていたのが台風と書かれるようになったものである。昔からあった自然現象の呼称が変ったということであるが、言葉の響きとしては同じものとは思えない感じがある。現在の台風(たいふう、颱風)は、太平洋や南シナ海(赤道以北、東経180度以西100度以東)で発生する熱帯低気圧で、最大風速(10分間平均)が34ノット (17.2m/s)以上のものを指す。歳時記には「野分」と「台風」は別項目で揚げられているが、現在の日常語では野分は使われないと言える。現実問題として、これは野分、これは台風、とは分けられないと思うが微妙に違う感じは残る。
泳ぐともあゆむとも山椒魚進む 松尾隆信(まつお・たかのぶ)
句集『松の花』より。著者は俳誌「松の花」主宰。
オオサンショウウオのことである。天然記念物として知られるが両生類の中で最も大きな生き物である。日本と中国、アメリカの一部にしか生息していないという。3000万年前から進化が止まっているので「生きた化石」とも言われる。この山椒魚、実は脚が4本ある。胴体が大きいので見えにくいが脚で移動することが多いようである。作者の目から見れば泳いでいるようでもあり歩いているようでもある。ウオと言うのだから泳いでほしいという気持がどこかにあるだろう。「あゆむとも泳ぐともなく」ではなく、語順が逆になっているのはそういう気持の表れだと思われる。山椒魚を見たときの実感がよく出ている。(勢力海平)
泳ぐともあゆむとも山椒魚進む 松尾隆信(まつお・たかのぶ)
句集『松の花』より。著者は俳誌「松の花」主宰。
オオサンショウウオのことである。天然記念物として知られるが両生類の中で最も大きな生き物である。日本と中国、アメリカの一部にしか生息していないという。3000万年前から進化が止まっているので「生きた化石」とも言われる。この山椒魚、実は脚が4本ある。胴体が大きいので見えにくいが脚で移動することが多いようである。作者の目から見れば泳いでいるようでもあり歩いているようでもある。ウオと言うのだから泳いでほしいという気持がどこかにあるだろう。「あゆむとも泳ぐともなく」ではなく、語順が逆になっているのはそういう気持の表れだと思われる。山椒魚を見たときの実感がよく出ている。(勢力海平)