浮遊脳内

思い付きを書いて見ます

チーム0・F・INF 助走8

2015-11-13 23:30:12 | ガンプラバトル系SS チーム0・F・IN

 それは、模型誌の作例かっつーくらい、綺麗に仕上げられた、ケルディムだった。
 ケルディムガンダムGNHW/R。劇中最終決戦に投入された、重武装カスタムだ。卑怯レベルで強い第二期ガンダムに、さらに卑怯なビットマシマシだ。しかもこのケルディム、オリジナル改修があちこちにある、玉ちゃんが作らないと言っていた、バトルスペシャルだ。
「その武装、どうかな」
 玉ちゃんは、そっと問う。
 有田君は、眼鏡の奥で瞬き、顔を上げて、玉ちゃんを見つめ返す。
「良いです。ありがとうございます」
 武装は、三つ又に分かれた、大型のものだった。俺ら00好きなら一発で判る。劇中、あれほど活躍した強敵、ガデッサのビームランチャーだ。三つ又の銃身兼増幅ブレードを持ち、その付け根中央にビーム発振部がある。ランチャー、というより、大砲だ。実際、そんな風に使われた。
「良かった」
 心底ほっとしたように、玉ちゃんは息をつく。ケルディムの武装って、どっちか言えば乱射タイプだろ、と。
「でも、違うんだよな。欲しいのは狙い撃つ武装なんだ。君に向いているのも、狙い撃つつ武器だと思った」
「はい」
「あとな、俺アイデアぶっこんであるんだよ」
 玉ちゃんは楽しげだ。ちょっといいかな、とケルディムを取ると、その機体背部を有田君へと向ける。尻の、尾羽のようにライフルビットがあるところだ。ケルディムガンダムには、その付け根に、動力炉の太陽炉がセットされている。
 玉ちゃんは、自慢げに、その太陽炉を動かした。
「自作関節入れてるのよ。それで、ね」
 じゃーん、と言いながら、彼はケルディムを俺たちに見せる。俺は何だかよくわからない。
「ほら、ここ」
 もどかしそうに、玉ちゃんは、ケルディムのケツと股間を指さす。
「・・・・・・何?」
「なんですか?」
「あー!もう!」
 言いながら玉ちゃんは、ケルディムをガニマタ開きにして、その股間パーツを開いて見せた。ここ、と指差す。
「アリオスの太陽炉パーツをここに仕込んでるの。股間」
「股間、股間ってでかい声で言うなよ」
「で、ケツのケルディムオリジナルの太陽炉が、こうやって・・・・・・」
 おお!と、俺と有田君は声を上げた。
「こんな仕掛けが!」
「クアンタムバーストモード!」
「どうよ?」
 クッソ自慢げに玉ちゃんは言う。二個の太陽炉の直結態勢だ。でも、これに気付けとか、ちょっと無理だろ。でも玉ちゃんは自慢げにつづけるんだ。
「ダブルオーって、どうみてもエクシアからの発展型だろ?クアンタもそうだし。でもさ、ケルディムダブルオーとか、アリオスダブルオーもあり得たと俺は思うんだよ」
「さっすが玉ちゃん」
「すごいです」
 二つの太陽炉を搭載して、暴力的なまでに主人公メカをアピールしたダブルオーは、そりゃかっこいいけど、キュリオス好きとしては、ちょっとさみしいところもあった。キュリオスダブルオーとか無理だもんね。それはたぶん、有田君も同じだ。
 だが、これは二個の太陽炉を搭載し、さらに直結して、クアンタムバーストモードになる。これでパワーマシマシだ。
「見とけよ、見とけよ~」
 玉ちゃんはノリノリだ。まだ仕掛けがあるらしい。またケルディムの股間をいじる。なんか股間ばっかだ。股間に太陽炉を入れるアリオスがアレなんだが。玉ちゃんは股間アーマー、っていうか俺らがフンドシと言ってるパーツを開く。さらに奥の太陽炉に指を伸ばし、それを引っ張り出す。
「どうよ!」
「・・・・・・」
 さすがに、俺も有田君も絶句した。声も無かった。これは、さすがに、どうなのよ?
「どうよ?」
 玉ちゃんの言葉がいぶかしげになる。なあ、どう?と不安げに。
「チ○コ?」
 俺はそっと聞いた。だって仕方ないだろ。股間の太陽炉から、その中枢パーツが伸びて前に突き出してるんだ。
「馬鹿言うなっ!」
「いや、判ってる、わかってる。クアンタムバーストモードだから、しょうがない」
 実際、劇中の刹那のクアンタも、胸の太陽炉がそうなっているんだから。でも、これは、股間だ。
「どうよ?」
 玉ちゃんは、自分の工作をほれぼれと見ている。
「いいとおもいます」
 若干不自然な響きで、有田君が言う。すごいです。さすが玉田さんです。この工作精度で、グラビカルアンテナまで開くなんて。
 そうだろ、そうだろ、と玉ちゃんは悦に入っている。もはや何も言うまい。俺は話を変えることにした。
「で、玉ちゃんの使う機体はよ?」
「忘れてたぜ」
 鞄からごそごそと、もう一つの箱を取り出す。こっちは旧作だからよ。でもまあ、いいだろ?と。それは、セラヴィーGNHW/Bだ。ケルディム同様、第二期最終決戦用に重装備したタイプだ。GNフィールド装置マシマシの上に、ビームガンもマシマシだ。背中のセラフィムは、もちろん分離可動できるようにしてある。そこは玉ちゃん、抜かりない。
 そうして、3機のガンダムが、テーブルに立つ。バトル用カスタムは、もろもろマシマシの派手派手になりがちだ。でも、俺は思うんだ。
「いいね。俺たちのガンダムだ」
「ああ、そうだな。俺たちのガンダムだ」
「不思議ですね」
 有田君が感慨深げに言う。
「僕ら、先月までは、こんな風にチームを組むとは思っていなかった」
「君、受験生だもんなあ」
「ごめんな。俺らの遊びにつきあわせて」
「いえ。だってホントに息抜きに来てるんですよ?もう忘却曲線に対抗するくらいしか、僕にはできないんで」
 この子は優秀だと思う。優秀すぎて、俺らにつき合わすのが申し訳ない。
「うん、息抜きだけには、なるように、俺らも努力するから」
「努力したら息抜きにならないですよ」
 わはは、と玉ちゃんが笑って答える。ファミレスでガンダムを並べて、へらへらしてる俺たちは、そうとう危ない集団だが、まあ、いいか。いいよな。
「いいよな」
 おう、と、はい、との返事が重なる。
 そのまま俺らは、ガンダムを眺めていた。俺たちのガンダムだ。
 そして、バトルでは、俺たちがガンダムだ。
 


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