浮遊脳内

思い付きを書いて見ます

チーム0・F・INF 助走10

2015-11-15 20:10:14 | ガンプラバトル系SS チーム0・F・IN

 「ガンプラファイト!レディーゴー!」
 コールしたのは、理恵子さんだった。そして、俺たちは、バトルをしている。
 広がる星空、瞬く残骸、暗礁空域フィールドを、キュリオスは飛ぶ。眼下で玉ちゃんのセラヴィーが、激しくビームを放っている。
 相手からの応射も来る。Ex-Sガンダムのビームスマートガンだろう。けれど、セラヴィー自慢のGNフィールドが、それをはねつける。お返しに、セラヴィーはビームを放つ。
 途中に残骸があろうが、構わずビームの連射を続ける。玉ちゃんの役目は、壁役だ。敵の攻撃を引き寄せながら、敵を攻撃し続ける。敵は玉ちゃんのセラヴィーを決して無視できない。避けて通るか、それとも打ち崩すか、どちらかだ。
 相手は、撃ちあうことを選んだ。強力で、正確なビームが、セラヴィーへ飛びくる。まっすぐな光の筋だけでなく、一度あさっての方向に飛んだ光線が、かくん、と急角度で曲がって、横合いからも叩きつけてくる。だが玉ちゃんのセラヴィーは動じない。強化されたGNフィールドが、ビームをはねつけ、はじき飛ばす。プラフスキー粒子が尽きるか、あるいはGNフィールドを物理的に貫くかでなければ、セラヴィーを倒すことなどできない。
 しかしセラヴィーの放つビームも、敵に効果を見せているわけでもない。敵は、暗礁空域の残骸の中を、長い噴射炎をひらめかせながら、敏捷に飛び回る。セラヴィーのビームがそれを追って放たれ、上手く捉えたときにも、しかし、ダメージを与えられていない。Ex-Sにも簡易ビームバリアがある。直撃しなければ、大ダメージにはならない。
 それでもこちらには勝算がある。
 今、強力なビームが、緑のGN粒子を散らしながら飛びゆく。有田君のケルディムのビームだ。さすがのEx-Sもブースタ噴射炎を伸ばして、大きく退く。有田君と玉ちゃん、二機がかりでEx-Sを叩く。それが俺らの作戦だ。一機を落とせば、次の一機にも優勢な数で戦える。相手の最後の一機、デカイ腕を持つギガンティックアームは、まだ姿を見せていない。あれには火力があるが、機動力が無い。だから今がチャンスだ。
 そして俺の役割は、二人がそのチャンスに全力を出せるように、挟み撃ちに来たシナンジュを抑えることだ。機動性と、火力との両方を備えたシナンジュが、挟み撃ちをかけてくるだろう、それが有田君の予想だった。
 その通り、白のシナンジュは、俺たちの横合いを狙って、飛び来た。噴射のひらめきが、流星のように見える。残骸の向こうを鋭く切り返しながら飛ぶ。俺もキュリオスを飛ばす。残骸を避けながら、奴の針路をふさぐ位置へ。まだ遠い。俺のキュリオスのビームガンは、速射と連射には強いけれど、遠距離射撃には向いていない。遠距離射撃が得意なのは、むしろシナンジュのほうだ。
 装備マシマシ、バンシィの装備が全部くっついているらしい。背中にアームドアーマー、両腕それぞれにもアームドアーマーがある。右腕のそれは、ビームスマートガンってやつだ。こちらに振り向け、ぶっ放してくる。白く輝くビームの筋が、俺へ向けて伸びてくる。
 俺は、ライトボールを操って、回避運動に入る。あれの厄介なのは、ただ飛びぬけるだけじゃなくて、撃ちっぱなしで斬りつけるように薙いでくることだ。俺の回避のあとを追って、ビームは横なぎに虚空を切り裂く。途中で残骸を吹き飛ばす。俺は回避しつづけるしかない、ビームが途切れるまで。
 だが、途切れたなら、俺のターンだ。ライトボールを操り、俺はキュリオスの両腕を振り上げる。両腕にはシールドと、ビームガンと、ミサイルとを取り付けた、超マシマシ武装だ。そのビームガンをぶっ放す。トリガーアイコンを圧している限り、ビームが放たれ続ける。マシンガンと同じだ。火力じゃ負けてない。
 だが流れるようなその光の中を、白いシナンジュは小刻みに機体を揺さぶりながらすり抜けてくる。ホントに上手い操縦だ。だが、こちとらビームだけじゃないぜ。俺はライトボールのセレクタをタップする。武装切り替え。照準マーカーが大きなものに変わる。自分から命中に行くミサイルは、目標を支持してやればいい。それからトリガーをタップする。
 腕の、そして膝のフィンにつけたランチャーから、ミサイルを発射する。射出されたミサイルは、噴煙の尾を引き、それぞれに弧を描いて、絞り込むようにシナンジュへ向かってゆく。
 シナンジュは、退かない。むしろ、噴射を強めて、こちらへ、ミサイルへと突っ込んでくる。そして銃火を放つ。バルカン砲だ。信じられない。か細い尾を引くバルカン砲の銃弾が、ミサイルを貫く。迎撃している。シナンジュはさらに突っ込んでくる。貫かれて爆発したミサイルの火球を、自ら押抜いて、だ。
 そしてその右手を、俺へと向ける。ビームを放つ。俺は横滑りに回避する。それを追いかけて、宙を切り裂くようにビームは追ってくる。回避を続けるしかない。そして、俺が横滑りに退いたところへ、シナンジュは突っ込んでくる。
「させるかっ!」
 まっすぐに突っ込ませるもんか。シナンジュは大きく横滑りして俺から距離を取る。それでも突っ込む勢いは変えない。俺も転進して、奴と並ぶように飛ぶ。
 俺と奴との間を、残骸が流れゆく。俺は撃つ。ビームが続けざまに飛びゆく。跳ねるように奴は回避運動に入る。それを追いかけ、トリガーアイコンを圧したまま、照準マーカーで追いかける。連なるビームの軌跡は、わずかずつ奴に遅れて、届かない。
 奴も撃ち返してくる。ビームの癖に薙ぎ払い、回避する俺を追いかけてくる。けれど、奴が撃つときは、俺にとってもチャンスだ。奴の動きが一瞬、止まる。振り抜く奴のビームとすれ違いながら、俺は撃ち続ける。
 ぱっ!と奴から光が散った。手ごたえがある。でも、まだ弱い。ぶち抜いたわけじゃない。俺は、さらにミサイルを撃つ。奴も、跳ねるように飛んだ。俺へではなく、前へ。奴が、目指す有田君と玉ちゃんの方へ。ミサイルの群れが、航跡をうねらせて、奴を追いかける。奴は、そのミサイル群をちらり見て、着いてくるのを一瞬、確かめた。
 何故だ?俺が思った瞬間、奴はさらに大きく吹かす。奴の正面に浮かぶ、大きな残骸へ向かって。モビルスーツの何倍かはある、巨大な残骸だ。コロニーの外壁みたいに、緩やかな弧を描いている。
 奴は、左腕を振りかぶる。その腕に装着された太い外装が開く。牙のように。それを、残骸へと叩きつける。
 爆発は、起きない。ただ衝撃波が広がり、奴の打ったところに、ぽっかりと穴が開く。そこを、奴はすり抜ける。すげえ操縦だ。わずかに遅れて、俺の撃ったミサイルが、残骸へと突き刺さってゆく。爆発が連なって起きる。残骸の壁を消し飛ばし、代わりに爆炎の壁が宙に現れる。奴の姿は、見えない。
 やべえ、と思った。俺との間に、爆炎の壁を置いて、奴は有田君たちのところへ突っ込むつもりだ。焦って、ライトボールを押し込んだ。キュリオスを加速させる。爆炎の中に突っ込む。赤いガスを突きぬけて、ふたたび、暗い虚空が開ける。その先で、有田君たちの撃ちあう閃光が見える。けれどシナンジュの姿は見えない。
 もういちど、やべえ、と思った。罠だ。俺が焦って突っ込むのを、奴は待っていた。でも引っかかるしかなかった。突っ込まなければ、奴は俺が案じた通り有田君たちのところへ乱入したはずだ。
 ホロモニタの端に、光が滑るように動く。噴射を切り返し、白の機体が急接近してくる。奴だ。白のシナンジュカスタム。
 俺がビームガンを向ける間にも、奴の姿は大きく迫る。間に合わないか。構うものか。俺は後ろ飛びに機体を滑らせながら、ビームを放った。奴の機体が大きく横滑りする。俺のビームをすり抜ける。照準が追い付かない。その間に、奴は急接近してくる。その左腕を振りかぶる。牙のように開いたそれを、俺に叩きつける。
 急回避は、間に合わない。それでも、俺はライトボールを思い切り引き寄せる。
 ホロモニタの視野が、大きく揺れて、衝撃にすら感じる。


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