浮遊脳内

思い付きを書いて見ます

チーム0・F・INF 助走12

2015-11-18 22:35:46 | ガンプラバトル系SS チーム0・F・IN

 ビームサーベルで、斬り結ぶ。
 光の衝撃波が広がり、粒子が散って打ち付ける。
 赤く輝く粒子を放ちながら飛ぶ俺のキュリオスと、同じく赤く、輝くサイコフレームを露わにして飛ぶシナンジュカスタムが、斬り結んでは離れ、しかし離れきることは互いに許さず、ふたたび宙を蹴るようにして、詰め寄り切り結ぶ。目の前の敵しか、もう見えない。俺は、こいつを、みんなのところへ行かせるわけにはゆかないんだ。
 俺のホロモニターは橙色を過ぎて、さらに赤みを増しつつある。機体のプラフスキー粒子が尽きつつある。尽き果てれば、機体は完全にコントロールできなくなる。今なら、そのまま撃破される。ライトボールを圧し、機体を踏み込ませ、ビームサーベルを振るわせる。奴のサーベルと打ち合い、粒子が飛び散る。
 奴が身を翻す。しまった、と思ったときには、蹴りとばされていた。
 思わず、俺までのけぞる。マジで蹴られたようだ。蹴られ突き放されたなら、すぐに次が来る。キュリオスの身をひねらせる。片脚を失って機体が安定しない。そこに射撃が叩きつけてくる。
 奴の、バルカン砲だ。俺の掲げたシールドに、次々と着弾する。一部は機体にもあたっている。それで撃破はされないが、奴自身がサーベルを振りかざしながら迫る。応じる俺は、わずかに遅れる。左腕一本で、シールドとサーベルを同じ腕に持っているからだ。それでも、受けた。
 粒子が飛び散る。さらに押し込まれる。受けながら、こんどは俺の側が身を翻す。蹴るためじゃない。蹴りをあらかじめ避けるためだ。体を入れ替えた拍子に、開いた間合いに、俺はサーベルを振るう。
「・・・・・・っ!」
 確かに奴の機体に斬り込んではいた。奴の肩をかすめて、左のバックパックだ。しかしやつは、斬りつけられながらも、身をかがめる。俺のサーベルが、奴の背をえぐる。そこに取り付けられた、アームドアーマーにも食い込む。
 奴の背が光る。爆発じゃない。
 その背につけたアームドアームが飛んだ。俺に向かって。噴射の尾を引いて、ぶつかってくる。キュリオスが大きく態勢を崩す。俺もリアルに衝撃を受けたようにのけぞる。
「!」
 俺は、わけのわからない声を上げて、そのアームドアームを斬り払った。それは二つに断ち切られて、くるくると舞い、そして爆発する。炎に煽られて、さらに機体を揺らがせるキュリオスへ向かって、奴が突っ込んでくる。ビームサーベルを振るう。
 咄嗟に掲げたシールドに、奴のビームサーベルが食い込み、断ち切る。俺は姿勢を立て直せない。奴は再び、ビームサーベルを振りかぶる。受け太刀の俺に叩きつける。そのまま、俺は押し込まれる。機体の踏ん張りが効かない。奴のパワーだって、今は弱っているはずなのに、受け太刀のまま押し込まれて、肩にまで、斬り込まれる。
 押し返す。まだGNドライブの推進力は負けていない。アームドアームを失った奴を押し返し、返す刀で奴へと斬りつける。奴も、サーベルを振るった。打ち合い、切り合い、粒子が飛び散る。機体が安定しない。片足を失い、先に肩まで切りつけられたキュリオスのダメージは大きい。右腕は動くが、先のマニュピレーターを失っている。武器にはならない。それは奴も同じだ。奴の右腕は、アームドアーマーごと、俺が斬っている。互いに残された腕一本での戦いだ。奴のサーベルが下段から振り上げてくる。
「しまった!」
 機体の制御が間に合わない。受け太刀のビームサーベルも、間に合わない。
 奴のサーベルが脇をえぐったところで、ようやく、受け止める。サーベルでなく、機の左腕で。斬り飛ばされて、宙を舞う。持っていた、最後の武器のビームサーベルとともに。
「このぉ!」
 ほとんど反射的に、蹴り上げていた。奴の腕を。そのサーベルを握った手を。キュリオスの残った脚、そのブレードフィンが蹴り上げる。手ごたえがあった。サーベルと、砕かれたマニュピレーターアームが飛んでゆく。
 けれど奴は俺を見た。ツインアイが輝く。そしてバルカン砲を放った。
 機体が撃たれ、悲鳴を上げる。俺には、キュリオスには、もう、武器は無い。半ば斬り飛ばされた左腕、マニュピレーターを失った右腕で、機体を庇うのがやっとだ。
 いや、ちがう。
 まだ負けていない。俺も、キュリオスも、負けちゃいない。まだ、最後の手がある。
「!」
 気合に上げた声は、もう自分でも何を言っているかわからない。ライトボールをタップ。高速モード。背にある機首がせり上がる。身を庇っていた両腕も、高速形態の為に、両側面へもどる。そこい、容赦なく、奴のバルカン砲が撃ちあたる。
 構うものか。俺に出来る最後の手段は、突っ込む事だけだ。
 奴にまっすぐに機首を向け、そしてフルスロットルで突っ込んだ。まっすぐに奴にぶちあたる。衝撃を感じるほどホロモニタが揺れる。すでに赤く染まり、ぷらふスキー粒子はわずかしか残っていない。体当たり位でシナンジュを破壊できるとも思っていない。俺はキュリオスの変形を半解除する。劇中で、落下しようとするコロニーを支えた時の形だ。そして、腕の残った部分で、奴を抱え込む。
 そのまま最大加速に固定する。機体が安定しない。振り回されて、シナンジュから引きはがされないのがやっとだ。奴は身をよじってあらがう。残された左腕の肘を打ち付けてくる。逆進噴射もかけようとする。でもむだだ。俺を苦しめた不安定性が、いまは奴を苦しめる。振り回すようなランダムな加速に、奴の姿勢が安定しない。いける!
 このまま、二機で、バトルフィールドから飛び出す。バトルフィールドから飛び出した機は、失格になる。
 俺の役割は、シナンジュを、池内さんを、抑え込むことだ。
 不意に、モニターが暗くなった。プラフスキー粒子が尽きたのか、と思った時、嫌な音が聞こえた。
 床にプラモを落として、ぶっ壊したような音、がっちゃーん、というプラの割れる、取り返しのつかない音だ。
 今、俺のモニタには、アウト・オブ・バトルフィールドの文字が点滅している。
 場外では、プラフスキー粒子の効果が無く、当たり前のことだが、プラモが飛んだり跳ねたりはできない。放り出されれば、床に落ちる。
 いやまてよ、 バトルマシンの周囲には、一応、棚のような安全スペースがあって、フィールドから押し出されたくらいでは、床まで落ちないようになっているはずだ。ちょっとフィールドから出たくらいなら。
「・・・・・・」
 ちょっとじゃなかったよな、俺の勢い。
 あの音、俺のキュリオスだけじゃないよな。池内さんのシナンジュを、フィールドから押し出そうとしたんだもんな。
 すっげー完成度だったよな。俺のはパチ組みにデカールとクリアコート程度だけど、池内さんのシナンジュ、マジで全部のパーツに手が入ってい・・・・・・
 あたままっしろになった。
 うん、徹夜明けだし。
 間違いなく、池内さんのシナンジュ、壊したはずだし。
 たぶん、俺はそのままぶったおれたはずだ。
 よくわからん。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。