浮遊脳内

思い付きを書いて見ます

チーム0・F・INF 助走3

2015-11-08 15:21:30 | ガンプラバトル系SS チーム0・F・IN

 「すげえ」
 他に言いようもない。バトルフィールドを、アリオスガンダムが飛ぶ。しかも、ホロコックピットで操縦しているように、だ。
 青空、高い日差し、眼下には森だ。アリオスの影が木々の上を走る。
「アイハブコントロールだ」
『・・・・・・』
 ホロモニタの一つに、玉田の顔が浮かび、くすくすわらっているのがわかる。いいでしょう、ガンプラバトル、と。
『相手の動きを良く見てください。その辺、普通のゲームと同じなんで』
「アイハブコントロール」
『エクシア、目標を駆逐する!』
 見降ろす森の情景の中から、何かが飛び出す。緑のGN粒子の輝きは、他のガンダムならバーニアからの炎になるんだろう。玉田のエクシアだ。劇中通りのままだ。俺は思わず、感動しながらエクシアの急上昇を見つめていた。
『相馬さん!回避、回避!』
 玉田の声に、俺は慌ててライトボールを操作する。操作感はマウスともトラックボールとも違う。圧力を掛けると反応する光る玉だ。自分でセットアップした制御アイコンを入れておける。今は、標準型だ。今の俺は、標準操作パターンでも手一杯だ。ロール、横転操作をして、エクシアの上昇軸線を外して、転げるように回避運動に入る。つーか、空中を転がっている。モニタがグルんグルん廻ってる。その端っこに、ちらちらと玉田のエクシアが映る。
 エクシアの主武装は、GNロングソードだ。その間合いに迂闊に入ったらぶった切られる。右往左往しながら逃げ打つ俺に、玉田のエクシアは、GNロングソードを振り向ける。とはいえブレードは折りたたんだままのガンモードだ。それが、光を放つ。
「かっこいい!」
 本当に緑の粒子を飛び散らせながら、ビームが飛んでくるんだぜ。GPバトルすげえ。しかもアリオスは速い。俺の手に余るほど速い。エクシアのビームをはるか背後に置き去りにして、アリオスはすっ飛んでいる。
『相馬さん、フィールドから出たら負けだよ』
「おお、いけねえ」
『まりぃ??』
 突込みの口調で玉田はからかう。俺には応じる暇もない。ライトボールをぐりぐり動かして、何とかバトルフィールドに留まろうと必死だ。アリオスは高速すぎるし、敏捷すぎる。ライトボールへの圧力が強すぎると、それを素直に操縦に取りこんで、くるんくるん廻る。
「えー、なんだ、なんだ。どうすりゃいい」
『変形した方が、速度の制御がやりやすいですよ』
 玉田じゃない声だ。すぐにわかった。有田君だ。
「変形?変形でいいの?」
 しかし、ライトボールを見ないと、どのアイコンをタップ、つまり叩くように入力すればいいのか、判らない。手元を見て、アイコンをダブルタップ。モードチェンジの表示が出る。今まで飛び去るように流れていた森の情景が、ぐうっと減速する。まるで本当にGを受けてるようだ。盛りに落ちる影、短剣のようなフォルムのアリオスが、切っ先を開いて、MSモードに変形する。俺は振り返り、森と、エクシアを見降ろす。
「よっしゃ来い!アイハブコントロール!」
 玉田は笑ってる。俺もコントロールしてるとは言えないな、と思ってる。構うものか。俺はライフルの狙いをつける。
「行けっ!」
 ライトボールのタッチセンサを連続してタップする。アリオスのライフルは連装で、マシンガンみたいに連射が効く。ぱっと緑の閃光がひらめき、つづいて筋を引いて飛び去ってゆく。感動だ。劇中のばびゅばびゅばびゅーん、って射撃音も、飛び散るGN粒子も、まんまだ。しかも、ライトボールをタップするだけ、いくらでも飛んでゆく。
 もっとも、その分だけプラフスキー粒子を消耗する。ホロコックピットの表示が青からだんだん黄ばんでくる。備蓄粒子がさらに減ってくると、ホロコックピットは赤系の表示へと色が変わるのだと聞いていた。だが俺のコックピットはまだまだ青系の色だ。撃ちまくれる。緑のビームが玉田のエクシアへと飛びゆく。
 が、命中しない。見事な回避だ。降ってくるビームを、種ガンよろしく、くるり、くるりと舞うように避ける。やべえ、かっこいい。敵なのにカッコイイ。しかも上手い。回避運動をしながら、玉田のエクシアは、ぐんぐん上昇してくる。
「やばいやばい」
『横滑り運動がいいです』
 また有田君の声だ。ホロコックピットの一角に、彼の顔が映る。後ろには店長もいる。セコンド回線らしい。
『そうそう、教えてやって』
 玉田の声も響く。有田君の声は続く。エクシアは変わらず上昇してくる。
『相手を正面に見たまま、弧を描くように。横滑りです』
「って言ったって」
『標準操作だと、両方のボールを同じ方向に圧す』
「うおりゃ!」
 ぐうっと、森と青空とが横滑りする。リアルすぎて、本当にGを感じそうだ。あわせて、エクシアの姿も正面モニターから横滑りして消えてしまう。これは、自分で捉えつづけないといけないらしい。っていうか、操作に対して、反応速度が速すぎて、小細工が効かない。
『旋回戦の基本の動きです』
「相手をモニターの中央に入れて、引き金を引くっ!」
 ライトボールのトリガーアイコンに圧をかける。握るみたいに。すると、俺のアリオスは照準マーカーへ向けて、ビームをぶっぱなす。トリガーを引けば引くだけ、ビームが走り、まるで一つながりのように伸びる。けれど、玉田のエクシアは螺旋を描くように、GN粒子を振りまきながら、ひらり、ひらりと躱しやがる。
「あたらねえ!」
『機体を振り回したら駄目です。照準シフトでマーカーだけ動かして』
「どれ!」
『武器手の親指』
 知らなかったのがアホみたいだ。親指を滑らすと、照準マーカーだけがするすると動く。しかも、エクシアに引っかかると、照準が自動で追いかける。
「よっしゃ」
 俺はトリガーを連打した。緑のビームが、GN粒子を散らしながら飛ぶ。回避運動のエクシアに、わずかに遅れて、その背後を飛びぬける。連打のビームはうねる光の鞭のようだ。
『追いすぎては駄目です。ちょっと先を狙って』
 有田君のアドバイスはわかる。だが、そんなことができるのはニュータイプだけだぞ。親指でマーカーを動かす。その先のエクシアも光る。緑のビームが飛びくる。俺は、さっき教えられたとおり、横滑りして回避する。エクシアがすっとぷ。
 いや、玉田が何かしたわけじゃない。俺の操作に、アリオスが大きく動きすぎて、エクシアが画面からすっ飛んで消えた。
「あれ?消えた!」
『ロックオン操作してないんですか』
「知らん!玉田さん!」
『やりながら教えようと思ったんだよう』
 通信画面の有田君が呆れたように額を抑える。それでも、彼は教えてくれた。マーカーが目標に合っているときに、タップすると、目標をロックして、追いかけ続けるようになる。そんな、基礎の基礎から、教わっていったんだ。
 ま、その間数えきれないほど撃墜されてるんだけどさ。
 


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