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井上ひさし

2004-06-21 07:49:57 | showtime
「『三人姉妹』(1910年)の本読み稽古を、作者は気に入らなかったらしい」 とは、

井上ひさしのチェーホフの評伝である新聞連載 「私のチェーホフ」 の最終回の書き出し。理由は説明できないが、この書き出しには魅了された。通常4回で終わりの連載が、今回5回目があったことの驚きと相まって、一気に読んでしまった。

若年層の活字離れが大きな問題になっている昨今だが、この流れに歯止めをかけるべく熱心に活動している作家は多い。間違いなく、井上ひさしはその代表者の1人である。古今の文学作品の中に表現されている現代との共通項を、わかりやすく解説してみせる。

『三人姉妹』 を読み終えた俳優たちが、これは悲劇だと解釈したのを見た作者のチェーホフは、席を立ってしまった。次に笑劇 (ボードビル) だと解釈して、テンポをあげて演じてみたがうまくいかなかった。試行錯誤の末、「チェーホフの主人公は、ただ生きたがっているだけなんだ」 という結論に達し、舞台は大成功する。と、井上ひさしは書いている。

チェーホフの話自体もすばらしいが、井上ひさしの文章も本当に読ませる。連載の最後には、自殺についてもさらっとふれている。さらっと。